1 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/27(金) 14:01:30.18 ID:ZsNvgWUa
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。



(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part313
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1341653902/l50


まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/




     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!




     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。





.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
182 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 00:14:06.95 ID:iYrW09de
書きたいんなら書けばいいと思うけど
まず>>1を読んでsageる事からはじめて欲しいね
2 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/27(金) 17:30:03.56 ID:m2MjSebU
スレ立て乙
全国的に猛暑につき、暑苦しさつながりで月の御大将でも呼んだら少しは涼しくなるかな
3 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/27(金) 17:45:57.52 ID:TBdwG2oR
あの人、見かけは強そうだが
華奢なロランと互角に打ち合える程度の強さだっけ?
4 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/27(金) 17:56:23.46 ID:AlFsSiMO
>>3
そこはロランが強いことにしとけw
地球で肉体労働してたわけだし、筋力は普通にロランが上な気がするなぁ
6 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/27(金) 20:01:26.76 ID:4zYij9a3
>>4
御大将も鍛えるだろうけど数年間重力下で生活してたロランには分が悪いだろうなw
23 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/28(土) 21:44:32.81 ID:f3dJNqYJ
>>6
重力6倍はきついよなあ……界王星は10倍だっけ?
26 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/28(土) 22:36:11.40 ID:GNNUrafC
>>23
宇宙ステーションに長期滞在した古川医師によると
体力的な問題より、感覚の問題が大きいらしいぞ

トレーニングで筋肉や骨は打ち上げる前の水準を維持したが、感覚が無重力になれちゃうから地上にくると体の動かし方をわすれてて歩けなくなるとか
5 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/27(金) 18:15:36.92 ID:TBdwG2oR
いっそロラン召喚で、ワルドがローラに惚れてレコンキスタから寝返り
元婚約者ルイズとロランを奪い合う三角関係というカオスな展開でも可w
7 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/27(金) 23:47:36.69 ID:GwLnoDBN
えー前スレのアクマがこんにちわのひと乙であります。
誤字報告:前スレ>>658の三行目
>>ドットの中でも、訓練を起こったら者らしい=訓練を怠った者らしい
ではありませんか?
9 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/28(土) 12:11:59.18 ID:zlqwfshb
今まで暴発させた魔法の回数を数えちゃうのか
20 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/28(土) 19:38:12.38 ID:L/jevtSA
>>9
ルイズ「貴方は今までに食べた食パンの枚数を覚えているのかしら?」
29 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/28(土) 22:58:26.18 ID:XaOo2RRo
>>20
トレーズ様「今朝までの時点で99,812枚だ」
10 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/28(土) 14:51:37.55 ID:XaOo2RRo
トレーズ様召喚は旧シャア板に個別スレがあったんだが…
虚無った
11 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/28(土) 14:51:45.42 ID:obiWy1jQ
敗者の理想をルイズに説くと?
奴は勝者に成りたいから無理!
13 :玄人の使い魔2012/07/28(土) 16:52:48.87 ID:MF0tXSd4

召喚された異国の装束を着た男は、とにかく「玄人」を主張したがる男だった。
確かに洗濯や料理の腕等は、シエスタやマルトーが驚くほどの腕なのであるが・・・
肝心なところでどこか抜けている性格をしていた。

そんな彼、南倍闇が厨房での手伝いてがら食事を席に運んでいると、
シエスタが貴族の男に問答されている場所に出くわした。
「おいおい、兄ちゃん、痴話喧嘩はいかんよ」
「ち、痴話喧嘩だって!?」
倍満の言葉に、何故か周囲の取り巻きから笑い声が起こり、周囲からひやかしの声がかかる。
内容自体は大人気ないなどの論理的な事なのだが、衆目の前でそんな事を言われるのは、
少年、ギーシュにとっては耐えられない屈辱だった。
「……ルイズの使い魔か。よくも僕に恥をかかせてくれたね。
 いますぐここで土下座して誤解を解いてくれないか?それとも、決闘で勝負を決めるかい?」
「ほーう、お前が俺の相手をしてくれるのか?」
男の余裕綽々の表情に、キーシュはたじろいだ。
本気で決闘などしようと思ったわけではない、相手は平民でこっちはメイジだ。
脅すつもりで言ったのだが、自信満々そう返されると、もはや引くことができなくなった。

「ちょっと!やめなさい、倍満もキーシュも!」
そんな二人の間に、ルイズが割って入る。
「ギーシュ!相手は平民よ、言ってる意味が分かってるの?それに倍満、挑発するようなことはやめて!」
ルイズの必死な言葉に、かぶりをふるったかと思うと、倍満は声を上げて笑い始めた。
「ハッハッハッ、冗談、冗談だよ、こればかりは素人は玄人には勝てねぇからなぁ」
ただの謙遜であるのだが、冷静さを欠いたキーシュは、その素人の意味を勘違いしてしまった。
すなわち、貴族である自分が、素人扱いされている、頭に血が上った彼は、杖を倍満の目の前に差し出した。
「その減らず口叩けないようにしてやろう!さぁ決闘だ!使い魔君!ヴェストリ広場に来たまえ!」
「ちょ、ちょっとキーシュ、やめてってば!とにかく誰か止めて!」
ルイズが必死に抑えようとするも、こめかみに血を滲ませたキーシュは、気にも留めなかった。
ずかずかとギャラリーを押し分けて進んでいくキーシュ。それを相変わらずの飄々とした様で追いかけようとする倍満に、メイドの少女が追いすがる。
「やめてください、倍満さん!貴族にたてつこうなんて……」
「なぁに、売られた喧嘩はなんとやらってね。ま、見物していってくれや」
少女が必死に泣きついてくるも、倍満は気にも留めなかった。
側に暗い顔をしたルイズを連れて、倍満はヴェストリ広場に向かっていったのだった。
14 :玄人の使い魔2012/07/28(土) 16:53:57.67 ID:MF0tXSd4

「おっとそれだ、裏ドラがのって跳満だ」
「決闘って麻雀かよ!」
ヴェストリ広場。
周囲のギャラリーがざわめく中、4人の人物が、その中心で、卓を囲んでいた。
「突っ込むのが遅いわよ、ギーシュ。それ私もロン。満貫ね」
数合わせに入ったキュルケがそんな彼をあざ笑うように牌を倒す。

貴族と平民が決闘をするなど、コルベールが認めるはずも無かった。
騒ぎを聞きつけて駆けつけた彼は、すぐに決闘騒ぎを止めさせ、代替措置を取った。
それがこの麻雀での勝負である。
倍満が持ってきた。この駒を揃えて役を作る遊戯は爆発的に流行し、
今やトリスティン魔法学院でルールを知らぬものはいない。
「まったく、だから止めたのに。ま、私は稼げるからいいけど。トリプルありだったわね、倍満よ」
そしてその隣では、達観した表情で、ルイズが牌を倒す。
「ルイズ、なにがやめなさいだ!君もグルだっんじゃないか!」
「おっと、文句は払うもん払ってからな。おーい、シエスタ、かっぱ巻き頼むわ」
キーシュは黙って点棒を雀卓にぶちまけた。3人はそれに意気揚々として、点数の計算を始めていた。
「まぁまだ1回戦だからな、そう焦らないこった」
倍満の高い笑い声が響き渡る。
もう、このまま帰りたい。雀卓に頭を突っ伏して、キーシュは思った。
その日、キーシュの半月先までの小遣いが消えていった。
15 :玄人の使い魔2012/07/28(土) 16:54:48.47 ID:MF0tXSd4
以上。南倍満(玄人のひとりごと)より。
読者層が合わないのか青年誌系のネタは少ないね。
22 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/28(土) 20:29:18.79 ID:mhrXsZvB
玄人のひとりごとはビックコミック本紙かオリジナルに連載していた。
24 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/28(土) 22:07:47.27 ID:pxSFLOpf
その上、御大将は実戦経験がないから・・・そらロランに負けるわな
25 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/28(土) 22:35:17.90 ID:wHm0kJGC
玄人の使い魔
南『倍満』じゃなくて南『倍南(ばいあん)』だよ!
28 :るろうに使い魔2012/07/28(土) 22:52:15.24 ID:jwPbKurY
皆さんこんばんわです。遅くなりましたが、11時頃に新作を投稿したいと思います。
30 :るろうに使い魔2012/07/28(土) 23:00:35.41 ID:jwPbKurY
それでは始めます。


 風を切る音で唸らせながら、ゴーレムは腕を振り上げる。様子見のあの時とは違い、本気で殺す気でいるフーケは、
遠慮容赦一切なしにその拳を剣心達目掛け放った。
 タバサも少し気後れするぐらいの圧倒的な、柱のような腕による一撃は、容易にその地面を陥没させた。
 巻き上がる土砂に気を付けながら、タバサは無意識に剣心の方を向いて…彼の姿がないことに気付いた。



     第十七幕 『戦闘』



 フーケもそれを視認し、恐らく反応すらできずに吹き飛ばされたのだろう――と思い、高らかに笑った。
「あっはっは!! もう終わりかい、意外とあっけないものだねぇ―――」
「確かに、滑稽な人形劇はもう見飽きたでござるよ」
 あれぇ…とフーケから笑みが消える。代わりに顔が真っ青になり、冷や汗が溢れ出す。
 フーケは、恐る恐る後ろを振り向いた。先程の声は、聞き違いでなければ背後から聞こえてきたのだから。
 できれば、幻聴であって欲しい…そんなフーケの願いは、しかし届かない。
 そこには、吹き飛んだと思っていた…剣心が刀を向けてじっとこっちを睨んでいた。
「…い、いつの間に……」
「あんなに沢山攻撃を見てきたんだ。速さが変わろうと、見切るのは容易いさ」
 憮然とした態度で剣心が答える。そんなバカな! とフーケは心で叫んだ。
 今自分がいるのは、ゴーレムの肩の上だ。その後ろにいるということは、腕をつたって登ってきたと考えるのが妥当だろう…。
いや、その時点で既にどこかおかしいのだが…。
 だけど、自分にも気づかれずに平然と後ろを取られたのにだけは、納得がいかなかった。
 曲がりなりにも盗賊をやってたフーケは、背後から襲われる怖さもよく知っている。
そうならないよう、第六感の感覚だけは鋭敏に磨いてきたにも関わらず、この男には話しかけられるまで全然気付けなかったのだ。
31 :るろうに使い魔2012/07/28(土) 23:01:52.96 ID:jwPbKurY
 (……やはり、侮ってはいけない)
 そう思い、フーケはこの場をどう打破するかを急いで模索し始めた。
 一か八か、杖で応戦することも考えたが、コイツに速さ勝負は御法度だ。多分この距離なら握り締めただけで叩き落とされる自信がある。
しかも何されたかさっぱり分からないというオマケ付きで。
 なら、抵抗は無意味。ここは素直に―――。

「……じゃあねー!!」
 フーケは思い切り、その場から飛び降りた。
しかし下には、待ってましたとばかりにタバサが杖を振るう。瞬時に周囲が冷気で満たされ、氷の槍を形成した。
 だがそれに対してもフーケは動じない。元々下を降りれば魔法を喰らう位分かりきったことだ。
 これは賭けに等しかったが、フーケは氷の槍に当たる瞬間、杖を振ってゴーレムの腕を盾がわりに動かした。
 攻撃を防ぐと共に、落下の支えにもこれを利用したフーケは、どうにか無傷で地に降り立つことができた。
 後は肩に乗っている奴を振り下ろすだけ、そう考えさっきまでいた肩の上を見上げて、―――あの男がいない。

「へ……っ?」
 次に視界に飛び込んできたのは、煌めく白刃と赤い閃光の如き髪。
本能的な危機を感じたフーケは、慌てて躱そうとして、足につまずきよろけて転んだ。その上空を、剣が掠めた。
杖を叩き落とそうと狙った一撃は、奇跡的な結果により回避することができたが、今のがそうそう続くわけもない。
もう嫌だこの男…フーケは心の中で泣きそうになりながら、剣心を見上げた。
(何が悲しくて、こんな化物ともう一戦しなきゃなんないのよ……)
 そう思っているうち、今度はタバサがこちらに杖を向ける。チェックメイト…詰みだ。
どう考えを巡らしても、この状況を打破できる策が思い浮かばない。
 また監獄行きか…そう観念したように、フーケは顔を俯かせて、ふと剣心の逆刃刀に目が行った。
そして、頭に電球が灯った。もしかしたら、まだ逆転の芽はあるかもしれないと。
「ふふ、参った。降参よ」
 そう言って、フーケは両手を上げた。一瞬、剣心とタバサはキョトンとして、顔を見合わせた。
もっと抵抗するものかと思っていたからだ。
32 :るろうに使い魔2012/07/28(土) 23:03:38.08 ID:jwPbKurY
 その二人を見て、フーケは心の中で嗤う。どうやら自分の意図には気付いていないようだ。これなら上手くいく…と。
「それにしても凄いわね。この『土くれ』と恐れられたわたしが、二回も、それに同じ奴に捕まるなんてねぇ。是非名前を教えて下さる?」
 そう言って、剣心に近づいて…ここでフーケが何か企んでいる事に気付いたタバサが、ハッとした。
「緋村、剣心でござるが」
「そう…ケンシンっていうのね…覚えておくわ、その名前!!」
 ここで、フーケが勢い良く杖を向けて、唱えた。剣心も、フーケの殺気を感じて後ずさる。
すると杖から、光の様なものが飛び出した。
しかし、それが何を意味するのか分からない剣心は、刀を盾変わりに構えて―――。
「ダメ、避けて!!」
 珍しいタバサの焦りの声が、剣心の危機本能を動かし、咄嗟に刀を引っ込めた。
かなり辛い体勢だったが、何とか仰け反って光の魔法を回避することができた。
 そして飛んだ光は、そのまま大きな岩に衝突し―――ボロボロの土屑に変えた。

「ちっ…外したか」
 忌々しげにタバサを睨みつけながら、フーケは二人に距離を置く。タバサが反撃しようとするが、例によってゴーレムにそれを阻まれた。
 すかさず剣心が動くが、フーケは再び『錬金』の魔法を放つ。それを見て、剣心は泡を食ったように大げさに回避した。
 これでフーケは確信した。アイツの持つ刀は、何の変哲もない、本当にただの『刀』だ。
だったら、『土』系統の自分にとっては絶好のカモ。刀をボロ屑に変えてしまえば、奴の戦闘力は半減する。
 まだ自分にも勝機はある。その考えが、フーケの笑みを強くした。
「あんたのその剣、あたしが文字通り『土くれ』にしてやるわ!!!」



 その頃、ルイズ達はというと―――。
丁度桟橋へと到着し、今ワルドが船長と思しき男と交渉している最中だった。
「アルビオンへ、今すぐ出港してもらいたい」
「無茶言うでありませんよ!! 『風石』が足りませんて、途中墜落してしまいますよ!」
「ならその分は僕が補おう。僕は『風』のスクウェアだ」
 そんな風に会話しているワルドを背に、ルイズは玄関口の方を今か今かと待っていた。
それに気付いたキュルケが、可笑しそうに手に肩を置いた。
33 :るろうに使い魔2012/07/28(土) 23:05:36.50 ID:jwPbKurY
「大丈夫よ。ダーリン達の強さは今に知ったことじゃないでしょう?」
「………」
 ルイズは何も答えない。確かに、フーケ達相手に剣心の心配もあるにはある。
でもそれ以上に、タバサと一緒にいるというのが納得いかなかった。
 やっぱり自分も残れば良かった。そんな後悔が今ルイズを襲っているのだ。
だけど何で、剣心がいないだけで、こんなモヤモヤした気持ちになるんだろう……。
アイツとは主人と使い魔、それ以上でも以下でないというのに。
 剣心が来ないのは、実はタバサといちゃついているから……。そう考えると、怒りと悲しみが同時に込み上げてくるのは何でだろう。
「何で…こんな気持ちに…」
「あら、気付いてなかったの?」
 まるで心の内を読んでいたかの様な口ぶりで、キュルケが茶化した。
「それが『恋』ってものなんじゃないかしら」
「なっ……」
 ルイズは絶句した。恋? 私が、アイツに?
 しかし、その考えとは裏腹に、体の中は熱くなってくる。ルイズは気づいてはいないが、顔も真っ赤だった。
 それを見て、今度は呆れた様子でキュルケは口を開いた。
「そんな悩むんなら、子爵との結婚考えればいいのに。ホントあんたは優柔不断ね」
「あんたは、結婚なんて分かんないからそんな事言えるのよ!!」
 ルイズは怒鳴った。今の自分の立場なんて、このゲルマニアで宿敵であるツェルプストー家の女に分かって欲しくないと。
 ここで、キュルケから茶化すような笑みが消えた。そして真面目な表情で、ルイズをじっと見据えた。
「…そうね、少なくとも今のあたしは本気で婚約したことないから分からないけど、一つだけあんたに言えることがあるわ」
 そして、ずいっとルイズの顔を見てこう言った。


   「結婚は自分のためにするものよ。他の誰でもない、自分自身が決めることでしょう?」


 どこか諭すような口調で、キュルケはそう言うと、顔を離して再び茶化すような表情をした。
34 :るろうに使い魔2012/07/28(土) 23:07:35.51 ID:jwPbKurY
「これ以上迷っているようなら、本気でダーリンを取り上げるからね。精々気を付けなさい」
「なっ…そんなの絶対ダメよ!! 誰があんたなんかに!!」
「ふーん、じゃ好きって認めるのね?」
「っ…うぅ〜〜〜とにかくあんたにはケンシンは渡さないんだから!!!」
 顔を真っ赤にして反論するルイズを、面白そうにキュルケがからかう。そうしているうちに、ギーシュがワルドを連れてやって来た。
「直ぐに出港する。追っ手が来ないうちにな、彼等は間に合わなかったようだが…致し方あるまい」
 そう言って、大きな玄関口の方を見やる。しかし、相変わらず人が来る気配は感じられなかった。これ以上待っても意味がないだろう。
 それを聞いて、ルイズは心配そうに顔を俯かせた。それを見かねたキュルケが、ワルドにそっと言いつける。
「婚約者なのでしょう、慰めの一つでもかけてあげたら?」
 ワルドは、それもそうだな、といった様子でルイズを宥めかせる。それを遠目で見て、どこか不満げな表情をするキュルケに、ギーシュは気付いた。
「…どうかしたのかい?」
「いや……」
 何だろう、優しく言葉を掛けるワルドの眼は、ずっと冷めているようだった。まるで情熱を感じない。あれでは普通の女を口説くのも無理そうだ。
(まぁ…あたしには関係ないか)
 そう思いながら、キュルケは最後に後ろを振り向いた。だがやはり剣心達はやってこない。
 どこか諦めたように、キュルケは小さくため息をついた。
(大丈夫かしらね…ダーリン達)





 再び場面は、『女神の杵』前で戦う剣心達に戻る。
(ああ言ったけど……どうしよう…)
 先程の威勢もどこへやら、フーケは苦い顔で杖を振るっていた。
 対抗手段は分かったのだ。『錬金』を使えば剣心は踏み込んで来れない。
タバサも、ゴーレムを押し当てることでカバーできている。
35 :るろうに使い魔2012/07/28(土) 23:10:31.98 ID:jwPbKurY
 では、何故こんなにもフーケが焦っているのか。
 答えは単純明快だった。――当たらないのだ。『錬金』が。
 一度見た技を、二度食らうのは、三流のすること。まるでそう教え込むかのように。
 剣心に向けて杖を振るっても、それを見てからあっさり回避されてしまう。しかも三回四回と連続で唱える度に効果は薄くなっている。
 しまいには呪文の口上を覚えられたのか、唱えるだけで避ける動作を取られてしまう始末。
しかもそれを剣心本体にではなく、持っている刀に当てなければいけないのだから尚更事態は困難を極めた。
 そんなわけで今はもう、剣心を寄せ付けないためのただの壁としてしか、機能してなかったのだ。
なおのこと、先程の奇襲で当てられなかった事が悔やまれる。

(こうなったら…アイツを人質にとって…)
 そうも考えて、タバサの方を見たが、彼女も彼女で、かなり戦い慣れしている。
ゴーレムの巨腕を上手く潜り抜けて、的確にフーケを狙い氷の槍や風の槌を放ってくるのだ。
それを何とか防いではいるものの、その間に剣心が攻め込んでくる。
当たらない『錬金』で追い払うと、それを狙ったかのようにまた『風』の魔法が飛んでくる。
 気付けば、追い詰めているはずが逆に、追い詰められていた。このまま魔法を唱え続ければ、先に精神力が切れるのは自分だろう。
剣心は相変わらず体力知らずだし、タバサも小技で攻めているため疲弊は少ない。

(……結局最初と何にも変わってないじゃないか!!)
 と内心叫びながら、フーケは再び突っ込んでくる剣心を視野にいれた。
「しつっこいな!!」
 そう言って、『錬金』の呪文を飛ばす。しかし、回避するかと思われた剣心は、何とそのまま走ってきた。
 何だ? と呆気にとられるフーケをよそに、剣心は『錬金』の魔法を前にして、刀を上に構えて、そして思い切り地面に振り下ろした。

「飛天御剣流 ―土龍閃―!!!」

 抉られた地面から飛び出す土の塊が、『錬金』の魔法に当たって相殺した。
「しまった!」
 そう思ったときはもう遅い。神速の動きでフーケの間合いに入った剣心は、呪文を唱える隙すら作らずに、その手に持っている杖を叩いて飛ばした。
 慌てて杖の後を追うフーケだったが、その杖は重力の法則を無視して、タバサの手にそのまま収まった。
 今度こそ、本当の詰みだった。
37 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/28(土) 23:16:46.28 ID:PVrqKB8R
るろうに乙

今度こそデルフの出番かと思ったが、別にそんなことはなかったぜ!
剣心の信念的に逆刃刀意外の刀を使うことはありえないだろうけど
38 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/28(土) 23:45:09.72 ID:xS+E+jzt
投下乙です

フーケなんて別に刀なくても一瞬で懐に潜り込んで殴ればおしまいな気がするけど、
そういえば観柳倒すときもいちいち刀拾ってたなあ
デルフはなんなら抜かずに鞘に入れたまま振るって使うとか…
39 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/28(土) 23:47:30.83 ID:xS+E+jzt
本領発揮してピカピカになったデルフに対して、
不殺のためには錆びてた方が都合がいいからいらんことせんで元に戻れとかいう剣心
44 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 08:14:15.62 ID:8G5RaXnA
峰打ちって刀に良くないんだぞ。
刀は刃のほうから衝撃を受け止めるようにできてるから、峰打ちでガンガンやってるとあっさり折れたりする。
剣心の使ってる鉄製の鞘に収めたままで殴る方がいい。
45 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 09:44:37.14 ID:aR3ByC7Y
峰打ちって言っても刀自体が鋼鉄の棒には違いないから、スイカくらいは簡単に両断出来るらしいなw
バールのような物でぶん殴ってるようなもんだし
46 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 09:57:32.83 ID:H6aP7LSu
刀の製法からすると逆刃刀ってのも大概ファンタジーらしいね
つまりるろ剣はファンタジー
48 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 10:38:57.14 ID:jPn0wEDa
>>46
そもそも数々のファンタジーな殺人奇剣の最終到達地点に存在してる一振が逆刃刀だって事を忘れちゃいけない
53 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 11:44:30.78 ID:VK2mb/Hq
>>46
布都御魂(ふつのみたま)の形状が逆刃だったような
47 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 10:03:42.27 ID:UrwZNLva
いくら逆刃刀でも九頭龍閃したら相手串刺しだよね
49 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 10:42:57.45 ID:ATwhuuAD
>>47
剣心の九頭龍閃に突きは入ってないよ
8方向から叩いて、最後は柄尻で殴ってフィニッシュ
50 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 11:07:52.13 ID:boFPsfSK
人を斬りたくないというのなら、刃引き又は最初から研磨しない方が刀にも優しいね
52 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 11:37:15.51 ID:xwmr4k1E
>>50
研無刀とかな

コピペ貼りたいけど
長いからやめとく
63 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 17:16:58.18 ID:pOcXn4x6
>>50
無限刃か
54 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 12:18:40.09 ID:nMMwvNgF
刀に刃が付いてなかったら鉄の塊をぶった斬ってビビらせられ無いじゃないか
70 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 20:04:07.92 ID:ejvs1c1D
>>54
六三四の剣の東堂国彦なら、竹刀の突きが道場の柱に突き刺さったりするぞ(笑)
100 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/30(月) 08:33:35.84 ID:QKlhXLOu
>>70
老いてなおロープで吊された空き缶(一斗缶?)を竹刀の一突きで貫いた人が新撰組に居てなw
101 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/30(月) 15:20:18.42 ID:g3fjd4/z
>>100
「阿呆が…」の人は自分の死期を悟って、道場で正座して人生の最期を迎えたんだっけ
102 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/30(月) 15:32:55.59 ID:AMx8A0L6
>>101
>阿呆が…
それを効いて牙神幻十郎の方を思い出すのは多分俺だけw
107 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/30(月) 23:39:12.80 ID:g/shrqG5
>>101
自分ちの床の間の大黒柱の前じゃなかったか?
55 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 12:19:33.25 ID:PG1Lzoa5
刃ついてない刀で鉄の塊切ってくれるほうがビビる
57 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 12:40:47.61 ID:blUllkNv
>>55
明鏡止水に目覚めれば、錆びた刀でだって大木をぶった斬れるさ
59 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 13:12:46.28 ID:hDFFdGjo
>>57
シュバルツのやったあれかwwww
つかそもそもビルを生身で蹴りとばせる奴がぶったたいたら、普通に木が折れそうなもんなんだけど
64 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 17:35:08.37 ID:tFbgBA+R
>>59
こちらの得物が折れないように対象をぶった斬るッ!
これが業なんだよ
56 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 12:23:29.88 ID:FbIybFer
女泣川ものがたりの小弥太が持つ「べらぼう村正」は
竹光だけどよく切れるぞ

…って誰も知らんよな
60 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 16:40:01.12 ID:03nB9lke
キン肉マンに新幹線飛ばす競技あったけど、Gガンの連中もアレできるよね
65 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 17:40:30.70 ID:dsfeu6GA
>>60
Gガンの劇中で似たようなことやってたな
新宿の地下で地下鉄を連投してたよ
62 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 17:11:11.01 ID:NhYI/33P
鉄パイプで縄を切断した人もいたな
68 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 19:02:31.56 ID:ztGeYTOE
>>62
ゲンさん…

wiki見て気付いたけどサガシリーズからは結構召喚されているのね
69 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 19:18:43.00 ID:aR3ByC7Y
>>68
ルイズ「あんだ誰?」
(デッデッデデデデッ)
「ワガナハカーry
71 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 20:07:16.80 ID:PH7+rAcJ
>>68
サガフロ1とか結構やりやすそうだしな
72 :アクマがこんにちわ ◆wg35mxeotnaW 2012/07/29(日) 20:47:50.02 ID:2ADpS4cr
>>7
ありがとうございます、そして申し訳ありませんでした。ご私的の通りです。
あと読み返したらちらほらと…後で修正します。

>>68
ゲンさんカッコいいですよね。
86 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 23:52:09.60 ID:wU3Q0Mec
>>69
それって「カーネイジ」?ハルケギニアがリージョン破壊砲で壊されて N O F U T U R E されちゃうの?
だれかタイム探検隊の隊員呼んできてぇぇぇ!

オルロワージュ様召喚して学院が針の城2ndって想像したけど、
すでにある妖魔アセルス小ネタと変わんないって気付いた
66 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 18:45:17.49 ID:gvA0YWaB
地下鉄を連投って、日本語おかしいだろ…
105 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/30(月) 17:54:39.24 ID:vhQxmxZQ
>>66
アルゴが地下鉄車両を投げまくってたときのことな
あの世界の連中は東京タワーをジャンプで駆け上がるくらいは朝飯前、阿呆の人いわく強度がオモチャの仕込み杖で二階建てバスを真っ二つにするくらいは普通
73 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 21:50:59.30 ID:frrlpQ2q
さて、今夜は誰か来るかな。
るろうにの人は土日だったっけ?
76 :ゼロの使い魔BW 1/72012/07/29(日) 22:05:40.66 ID:qVgsa/YS
「君が軽率に香水の瓶なんかを拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
「も、申し訳ありません!」
 優しいシエスタが震えながら平伏して謝っている。
 頬に紅葉を貼り付け、頭からワインを被った金髪の少年――ギーシュが、それを睨みつけていた。
 なにがどうしてこうなった。目の前で繰り広げられる光景を見て、帽子の少年はそう思った。

 発端は、シエスタがギーシュのポケットから落ちた香水の瓶に気づいたことだった。
「ミスタ・グラモン。ポケットから瓶が落ちましたよ」
 最初、シエスタはギーシュにそう声をかけた。それを彼が無視したので、シエスタはそっと瓶を拾い上げると、近くのテーブルに置いた。
 瓶を見たギーシュの友人たちが、その製作者から彼の現在の恋人を推測してはやし立てた。
 すると、あれよあれよと言う間に二股が発覚して、ギーシュは二人の少女から三行半を叩きつけられることとなったのだ。
 そして今、彼はその責任をシエスタに求めている。つまるところは――。

「……ああ、なんだ。二股をかけてたのが原因か」
 余りにストレートで無粋な言葉に、ギーシュの視線がトレイを持った少年へと向いた。
 少年は何処吹く風で、「そうか、これが二股とその末路なんだな」などと一人納得している。
 ギーシュの友人たちがどっと笑った。
「その通りだギーシュ! お前が悪い!」
 ギーシュの頬に、さっと赤みがさした。怒りを込めた視線が、少年へ突き刺さる。
「なんだね、君は?」
 なんだね、と訊かれても困る。未だに彼がなんなのかははっきりしていないのだから。
 ああでも、今のところは、と答えようとしたところで、ギーシュの友人の一人がぽんと手を叩いた。
「ルイズの平民だよ、こいつ」
「ああ、成程。あのゼロのルイズが呼びだした平民か。落ちこぼれの彼女の使い魔なら、貴族の恋愛の機微など分からなくても仕方はないな」
 ギーシュは鼻を鳴らして、馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
 気障ったらしく笑う彼に、少年が真顔で首を傾げる。
「二股かけてそれがばれて、頬を張られた上でワインを被るのが貴族の恋愛の機微なの?」
 再び、爆笑の渦がギーシュの友人たちを飲みこんだ。太った少年などは、椅子から落ちそうになるほどに笑い転げている。
 ギーシュのこめかみに青筋が走った。
「どうやら、君は貴族に対する礼を知らないようだな」
「……ミスタ・グラモン! 彼は記憶を失くしているんです! どうかご容赦を!」
 平伏していたシエスタが、すがりつくようにしてギーシュに言う。
「なら、なおのことだ。二度とこんな口をきかないよう、僕が彼に礼儀というものを教えてやろう」
 ギーシュはシエスタの懇願を一蹴すると、高らかに叫んだ。
「決闘だ!」
77 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/29(日) 22:08:27.75 ID:qVgsa/YS
「決闘だ!」
 そんなギーシュの声が聞こえてきたとき、ルイズは「ギーシュが馬鹿やってる」程度にしか思わなかった。
 あのツェルプストー並みに色惚けな彼のことだ。また、女の子がらみで騒いでいるに違いない。
 だが、その相手が誰かを聞いた途端、思わず椅子を蹴って立ち上がってしまった。
 食堂をぐるりと見渡す。遠くで、少年が立ち去るギーシュをぼんやりと見送っていた。慌てて駆け寄って、その肩を掴んだ。
「あんた、なにやってんのよ!」
「わ、私の、せいなんです……」
 近くで震えていた黒髪のメイドが、そんなルイズを見て口を開く。
 彼女から顛末を聞けば、ギーシュが悪いのは明らかだった。馬鹿が馬鹿をやって馬鹿を見ただけである。
 だが、ルイズは使い魔の目をしかと覗き込むと、強く言った。
「謝っちゃいなさい」
「……なにを?」
「貴族に対して暴言を吐いたことをよ! 今なら許してもらえるかもしれないわ」
 聞き分けの良いこの使い魔のことだ。頷いてくれるとルイズは思った。
 だが、彼はその期待をあっさりと裏切った。
「それは、できない」
「なんでよ」
「彼は、善意から瓶を拾ってくれたシエスタに二股の責任をなすりつけた。
 それだけじゃなく、無関係なはずのゴシュジンサマまで馬鹿にした。そんな奴に謝る言葉を、俺は持ってない」
 その言葉で、ルイズは気づいた。
 この使い魔は、わたしやこのメイドに個人的な恩があるから、それを貶めたギーシュに対して怒っている。
 そこに、貴族や平民なんてものは関係していない。
 貴族などなんとも思っていない、ということではない。
 自分にない力を持つ相手は敬うし、糧を与えてくれる相手には感謝もする。
 ただそれが、相手の所業を全て受け入れることには繋がらない、というだけだ。
 だけど……いや、だからこそルイズは言った。
「聞いて? 平民は貴族には絶対に勝てないの。あんたは怪我をする。
 いや、怪我で済めば運が良いわ。下手をすれば、殺されちゃうかもしれない」
「……それでも」
「それでも、なによ」
「勝負を挑まれたからには、逃げられない、背を向けられない……なんとなく、そう思う」
 ルイズが、「なんとなく」で自分の言葉を蹴り飛ばされたことに衝撃を受けている間に、少年はギーシュの友人に問いかける。
「彼が言っていた、ヴェストリの広場って?」
「こっちだ。平民」
 ギーシュの友人について、少年は歩き始めた。
78 :ゼロの使い魔BW 3/72012/07/29(日) 22:10:51.64 ID:qVgsa/YS
 ヴェストリの広場は、魔法学院の敷地内、『風』と『火』の塔の間にある。
 西側にある広場なので、日中も陽がささずに薄暗い。決闘にはうってつけの場所である。
 だが普段は閑散としているそこは、噂を聞きつけた生徒たちにより溢れかえっていた。
「諸君! 決闘だ!」
 ギーシュが薔薇の造花を掲げると、集まった生徒たちから歓声が巻き起こった。
「ギーシュが決闘するぞ! 相手はルイズの平民だ!」
 取り巻きの生徒が、号外を叫ぶ新聞売りのように声を張り上げる。
 それに少年はなるほど、と頷いた。確かに、今のところはそれが唯一の彼の身分である。
 ギーシュは腕を振って、歓声に応えている。そして、今気づいたという風に少年を見やると、気障ったらしくポーズをつけながら言った。
「とりあえず、逃げなかったことについては誉めてやろうじゃないか」
「……一度勝負を挑まれたからには、『相手に背中を見せられない』んだ」
 広場の中央に立ったギーシュが、不思議そうな顔をして少年を見つめた。
「平民のくせに妙なことを言うね。……だがまぁ、その考えは嫌いではないよ。
 決闘のルールは、相手に『参った』と言わせるか、もしくは杖を落とせば勝ちだ。
 もっとも、君は平民だから杖はない。――死にたくなければ、さっさと降参したまえよ?」
 黙ったまま、彼はギーシュを見返す。
「さて、始めようか。ところで、僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」
 少年が頷くと、ギーシュは造花の薔薇を振った。
 花びらが一枚落ちる。それが地面に触れた途端に、青光りする金属の女戦士と化した。
「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。したがって、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
 淡い陽光に輝く青銅の肌を見て、少年の表情が引き締まる。

<<青銅のギーシュ が 勝負をしかけてきた!>>

 ギーシュが薔薇の造花を振り下ろすとともに、青銅の女戦士が弾丸のように飛び出した。
 金属で出来ているとは思えない速度でワルキューレは少年へと迫る。その手は空だが、作った拳は青銅だ。
 一拍遅れて反応した少年は、すんでのところでその拳を避けた。
 脇腹を掠めた拳は見た目通りの重さがあるようで、少年の背筋をひやりとさせる。
 続けざまにぐるんと反転しつつ振り抜かれた裏拳は、浅く肩に当たった。
 これもまた直撃は免れたが、青銅製の一撃だ。痛みに、帽子の下の顔がゆがんだ。
 更に三、四、五と連続して拳が繰り出されるが、彼は危うい動きながらもなんとか直撃を避けてゆく。
 ただ、避け切れてはいない。至るところに青痣を作り、荒い息をつきながら、少年はギーシュを睨みつけた。

「彼の動き、なんかヘンね」
 少年の動きを観察していたキュルケが、隣の小柄な少女に呟いた。
 青い髪の彼女――タバサは、本から目を上げて少年をちらりと見ると、短く言う。
「判断と動きが噛み合っていない」
「判断と動き?」
 詳しく聞きたげなキュルケに対し、タバサは本へ視線を落としたまま答えた。
「ゴーレムの動きは十分に見えている。それへの対処法も分かっている。
 攻撃するべき隙も見定めている。だけど、その判断に身体がついて行っていない」
「成程ね。……でも、それってどういうことなのかしら」
「自分で戦うことのない立場――戦闘指揮官のようなものだったのではないか、と予想する」
 タバサの冷静な声に、キュルケはふうんと納得すると、再び決闘に目を戻した。
 視線の先には、直撃は免れながらも、じわじわと体力を削られている少年の姿がある。
「でもあれじゃ、駄目ね。彼のダメージが蓄積する一方で、どうにもならないわ」
「その通り」
 そのうちダメージと疲労によって動きが止まり、とどめが刺されるだろう。
 ギーシュに傷一つ負わせることも出来ず、敗北する。平民対メイジとしては、当前の結果だ。
「なんか、つまらないわね」
「そう言った」
 タバサがキュルケをじっと見つめる。
 つまらないと言ったのに、無理やり引っ張ってきたのは貴女だ、とその瞳は語っていた。
「……あーもう悪かったわよ! 今度なにかおごるから、それで勘弁して頂戴!」
 こくんと頷いて、タバサは読書に戻った。
 本へと思考が沈んでいく中で、彼女はぽつりと思う。
 彼の動きは、なにか決定的なものが欠けているが故の不自然さのようにも見える。
 極端に高い観察力や判断力に対し、皆無に近い戦闘能力。
 もし、前者の高さに見合う戦闘能力があるとするなら、それは一体どれだけのものになるだろうか?
79 :ゼロの使い魔BW 4/72012/07/29(日) 22:13:05.46 ID:qVgsa/YS
 体中が悲鳴を上げている。
 青銅の拳が掠めるたびに、それを避けるたびに、動きが鈍くなっていくのが分かる。
 少年の理性は、「参った」と言ってしまえと、逃げてしまえと囁きかけてくる。
 だが、奥底に眠るなにかは「勝負の最中に、相手に背を向けるわけにはいかない!」と叫んでいた。
「ッ!」
 渾身の力で地面を蹴り、振り抜かれた拳を転げるようにして避ける。
 今の自分は間違っている。そんなことは、彼にだって分かっている。これは自分の戦い方ではない。
 腰元のボールが、怒りに耐えかねるように震えている。これはなんだったか。あと一歩が繋がらない。
「……驚いた。ただの平民が、『ワルキューレ』の攻撃をここまで避けるとはね」
 相対する金髪の少年が、感嘆したように声を上げる。
 そして、杖を振った。花びらが落ちるとともに、青銅のゴーレムがもう一体現れる。
「だが、それもこれまでだ」
 二体目のワルキューレが迫ってくる。咄嗟に、横に跳んで避けた。
 次の瞬間、湿った音と共に身体が浮いた。一体目の拳が腹にめり込んでいる。
 吹き飛ばされて、仰向けにぶっ倒れた。
 息が吸えない。吐き気がする。体中が、鈍痛と共に熱を持っている。
 疲労も激しい。無尽蔵の体力を持つ青銅の戦士に対して、少年の体力は有限だ。
 倒れている彼の頭を、ワルキューレが踏みつけた。額が切れて、視界が赤く染まる。
 次いで、左腕に蹴りが入った。鈍い音と共に激痛が走る。そのまま、5メイルほど吹っ飛んだ。
 そのタイミングで、人垣をかき分けてルイズが現れた。
「ギーシュ!」
「おおルイズ! 悪いな。君の使い魔をちょっとお借りしているよ!」
 地面に倒れ、血を流している少年を見やって、ルイズは青ざめつつも憤然とまくしたてる。
「いい加減にして! 大体ねえ、決闘は禁止じゃない!」
「禁止されているのは貴族同士の決闘だけだ。平民と貴族での決闘なんか、誰も禁止していない」
 ルイズは言葉に詰まった。
「そ、それは、そんなこと今までなかったから……」
「それと、やめて欲しければ彼に言いたまえ。『参った』と言って謝れば、矛を収める用意が僕にはある」
 もっとも――とそこで言葉を切って、ギーシュがルイズの背後を指さした。
「彼はまだ、続けるつもりのようだけどね」

 どうしてこの使い魔は諦めないのだろう。
 何処からどう見ても満身創痍だ。土埃にまみれ服は破れ、額は割れて血が溢れている。
 左腕はあらぬ方向に曲がっていて、折れていることが見て明らかだった。
 もうやめて、と言おうとして、声が出なかった。
 燃え上るような闘志を秘めながらも湖面のように静かな眼が、ルイズの喉を詰まらせた。
 力が入らないのであろう四肢を動かして、どうにかして立とうともがいている。
 勝ち目など全くないのに、この使い魔は一体なにを考えているのだろうか。
 痛そうで可哀そうで、泣けてくる。もうやめて欲しい。でも、それが口に出せない。
 誰よりも、使い魔がそれを拒んでいる。
 言葉で駄目なら――。ルイズはぎゅっと唇を噛むと、使い魔とゴーレムの間に立ちふさがった。
80 :ゼロの使い魔BW 5/72012/07/29(日) 22:15:22.30 ID:qVgsa/YS
「……それで、始祖ブリミルの使い魔『ヴィンダールヴ』に行きついた、というわけじゃね」
 コルベールの話を一通り聞いたオスマン氏は、彼の取ったスケッチを眺めながら確認した。
「そうです! あの少年の右手に刻まれたルーンは、伝説の使い魔『ヴィンダールヴ』に刻まれていたものと全く同じであります!」
「で、君の結論は?」
「彼は『ヴィンダールヴ』です! これが大事でなくて、なんなんですか! オールド・オスマン!」
 そう叫ぶコルベールを前に、立派な髭をしごきながらオスマン氏が頷く。
「ふむ、確かに、ルーンが同じじゃ。ルーンが同じということは、ただの平民だったその少年は、
 『ヴィンダールヴ』になったということになるんじゃろうな。しかし……」
 そこまで言ったところで、不意に扉がノックされた。
「誰じゃ?」
「私です、オールド・オスマン」
 ミス・ロングビルの声だ。
「なんじゃ?」
「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒が居るようです。大騒ぎになっています。
 止めに入った教師がいましたが、生徒たちに邪魔されて、止められないようです」
「まったく、暇を持て余した貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れとるんだね?」
「一人はギーシュ・ド・グラモン」
「あの、グラモンのところのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者だったが、息子も輪をかけて女好きじゃ。
 大方、女の子の取り合いじゃろう。相手は誰じゃ?」
「……それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の少年のようです」
 オスマン氏とコルベールの目が鋭く光った。
「教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用を求めています」
「馬鹿馬鹿しい。たかが子供の喧嘩を止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」
「わかりました」
 ミス・ロングビルの足音が遠ざかる。
「オールド・オスマン」
「うむ」
 緊張した面持ちで促したコルベールに重く頷くと、オスマン氏は壁にかかっている鏡に向けて杖を振った。
 ヴェストリの広場の光景が、そこに映し出された。
81 :ゼロの使い魔BW 6/72012/07/29(日) 22:17:24.66 ID:qVgsa/YS
 震えながらも彼の前に立った少女の背中が、過去に見た『誰か』の背中に重なった。
 髪の色も、顔の作りも、体型も、服装も、状況も、何もかも違う。いや、『足蹴にされて吹っ飛んだ』辺りは少し似ているか。
 だが何にせよ、弱者が虐げられているのに耐えきれず立ち上がった、というのは同じだ。
 それが誰かということに思い至ると同時に、これまでのことが走馬灯のように思い返される。
 心優しい少女に、生真面目な青年。同じ街の、二人の幼馴染。
 自分にポケモンと図鑑を預けてくれた博士。
 リーグへの道のりと、その道中で戦ってきたジムリーダーたち。
 ポケモン解放を謳った彼と、その理想を大義名分として、ポケモンの独占を企んだ悪の組織。
 ――ああ、なにをしていたんだろうか、自分は。
 わずかな自嘲の笑みを浮かべつつ、懐かしさをこめて腰元の『モンスターボール』を撫でると、それが今度は歓喜に震えた。

 少年が、ゆらりと立ち上がった。
 彼は、目の前で自分をかばうルイズの肩をそっと押しやると、ギーシュを見やる。
 視線を向けられて、ギーシュはたらりと冷や汗を流した。なにかがおかしい。
 今までは感じなかった妙な圧力を、目の前の平民から感じる。
「はじめまして」
「へ?」
 いきなりの挨拶に、ギーシュが間抜けな声を上げた。
「『ルイズの平民』にして、『ポケモントレーナー』のトウヤです。よろしく」
 ぶわりと圧力が膨れ上がった。
 名乗った平民――トウヤは、腰元のボールに手をかける。右手のルーンが光った。
 同時に悪寒がいや増して、思わずギーシュは叫んでいた。
「ワルキュゥゥゥレェェェェッ!」
 いつにない速度で、青銅のゴーレムが動き出す。
 だが、迫るゴーレムに焦ることなく、トウヤは冷静に『なにか』に向かって命令を下した。
「いけ、ドリュウズ。――『ドリルライナー』だ」
 カチリという音と共に、ボールから光が溢れる。そこから、銀と茶の旋風が巻き起こった。
 その高速で回転する『なにか』は、続けざまに二体のゴーレムの胴にぶち当たると、大穴を穿って、それらを完膚なきまでに破壊する。
 二体のゴーレムが一瞬で粉々になった光景に、トウヤを除く全ての人間が息を飲んだ。
 ばらばらになったゴーレムの欠片の上に、それは居た。
 見た目は、ギーシュもよく知る『ジャイアントモール』によく似ている。
 ただ、鋭い眼光と異常に発達した爪、そして銀色に光る鋭角の頭部が、それに言い知れぬ凄みを与えていた。
 ギーシュが呆然と問いかける。
「それは、君の使い魔かい?」
「……違うよ。こいつは俺の『ポケモン』だ」
 トウヤは恐ろしげな幻獣の頭を撫でて見せる。
「そうか。……いや、そうだね。メイジでもない君が、使い魔を持っているはずがない」
 ぶんぶんと頭を振って、ギーシュは薔薇の造花を構え直す。
 呪文を唱えつつ、それを振り下ろした。花びらが舞って、新たなゴーレムが五体現れる。
 全部で七体のゴーレムが、ギーシュの武器だ。平民相手など二体でも十分過ぎると思っていたが、こうなってはそうも言っていられない。
「どうやら、君は結構な牙を持っていたようだ。こちらも遠慮なく行かせてもらうよ!」
 薔薇の指揮に従って、ワルキューレがトウヤとドリュウズに殺到する。
 一、二体は倒せても、残りが彼らを揉み潰す――傍からはそう見えた。ギーシュもそう確信していた。
 だが、トウヤは全てのワルキューレを視界に収めつつ、その場で垂直に跳躍して短く命令する。
「ドリュウズ、『じしん』」
 腹の底に響く重たい音と共に、周囲の空気がびりびりと震えた。
 ワルキューレたちの動きが止まる。
 そして、その青銅の肌に微細なヒビが入った。
 何故と思う間もなく、脆くなったワルキューレたちは自重に耐えきれずに砕け、崩れ落ちる。
「なあっ……!?」
 余りの光景に腰が抜けて、ギーシュはペタンと地面に座り込んだ。
 砕け散ったワルキューレの残骸の上を、トウヤとドリュウズがゆっくりと歩いてくる。
「まだ続ける?」
 静かな声だった。ギーシュは首を振る。戦意などとうに失せている。杖を置き、諸手を上げた。
「参った。……僕の負けだ」
82 :ゼロの使い魔BW 7/72012/07/29(日) 22:19:54.77 ID:qVgsa/YS
 決闘を覗いていたコルベールが、汗をぬぐって口を開いた。
「……あの少年、勝ってしまいましたな」
「そうじゃの」
「あの幻獣は一体なんなのでしょう。
 ギーシュは一番レベルの低い『ドット』メイジですが、それでも、ああも容易くあしらわれるのは予想外です」
「さあのう。……ただ少なくとも、彼があれを使役したのは間違いない。
 もっと言えば、彼は同じような幻獣を少なくとも後五体は持っておるはずじゃ」
 立派なあごひげを整えながら、オールド・オスマンは言った。
「その理由は?」
「彼は腰元につけた玉からあの幻獣を呼び出しておったじゃろ?
 彼のベルトにはあれを含めて計六つの玉がくっついておった。なら、幻獣も六体おると考えるのが自然じゃろうよ」
 禿げあがった頭を、コルベールはつるりと撫で上げた。
「そんな幻獣たちを操る彼は、やはり『ヴィンダールヴ』なのでしょうか。なら、王室に報告して指示を仰がないことには……」
「その必要はあるまい」
 オスマン氏は重々しく首を振った。コルベールが目をむいて問いただす。
「何故ですか? これは世紀の発見ですよ! 現代によみがえった『ヴィンダールヴ』!」
「ミスタ・コルベール。『ヴィンダールヴ』はただの使い魔ではない」
「その通りです。始祖ブリミルの用いた『ヴィンダールヴ』。
 その姿形は記述がありませんが、あらゆる獣を自在に操り、主人をいかなる場所へも運んだと伝え聞きます」
 更に能書きを続けようとしたコルベールを、オスマン氏が制した。
「で、ミスタ・コルベール」
「はい」
「その少年は、本当にただの平民だったのかね?」
「はい。彼の所有物には不可思議なものが多数ありましたが、彼自身は正真正銘、ただの平民の少年でした。
 ミス・ヴァリエールが呼びだした際、念のために『ディテクト・マジック』で確かめましたが、反応は全くありませんでした」
「その少年を、現代の『ヴィンダールヴ』にしたのは誰なんじゃね?」
「ミス・ヴァリエールですが……」
「彼女は、優秀なメイジなのかね?」
「いえ、というか、むしろ無能というか……」
「さて、その二つが謎じゃ」
「ですね」
「無能なメイジに召喚された平民の少年が、何故『ヴィンダールヴ』になったのか。全く謎じゃ。理由が見えん」
 オスマン氏はしばし考え込んでいたが、ふと頭を振ると、嘆息しつつ続けた。
「なんにせよ、王宮のボンクラ共に『ヴィンダールヴ』とその主を渡すわけにはゆくまいて。
 そんなオモチャを与えてしまっては、またぞろ戦でも起こしかねん。宮廷で暇を持て余している連中はまったく、戦が好きじゃからな」
「ははあ。学院長の深謀には全く恐れ入ります」
「この件は私が預かる。他言は無用じゃ、ミスタ・コルベール」
「は、はい! かしこまりました!」
 杖を握って窓際に向かったオスマン氏は、過去に思いをはせた。
「伝説の使い魔『ヴィンダールヴ』か……。一体、どのような姿をしていたんじゃろうなぁ」
 コルベールが夢見るように呟いた。
「『ヴィンダールヴ』はあらゆる獣を使役し、主を助けたとありますから……」
「うむ」
「少なくとも、命令を下すための口はあったんでしょうなあ」
87 :るろうに使い魔2012/07/30(月) 00:52:53.47 ID:apDBSRFC
BWの人、お疲れ様です。
さて、遅くなりましたが、予約がないようでしたら一時丁度に今日の分を投稿しようと思います。
89 :るろうに使い魔2012/07/30(月) 01:02:52.76 ID:apDBSRFC
 剣心は、改めて気配を探った。しかしもう男も、それを操った術者の気配も感じることはなかった。
 周りに敵意がないことを確認した剣心は、改めてタバサに尋ねた。
「余計な時間を喰ってしまったけど、大丈夫でござるか?」
「大丈夫、問題無い」
 タバサは上空を指差す。そこには風竜と思しき影がこちらに向かってグングン大きくなっていった。
 やがて、シルフィードが優雅に着地すると、タバサは二言三言、何やら命令して背中に乗った。シルフィードも分かったように頷いて、未だ小さくも見える船の影を向いた。
 剣心も、背中に乗ろうとしたとき、ボゴボゴと地面から音がするのが聞こえた。何だと思って見やると、段々地面が盛り上がっていく。
 剣心達が警戒する中、地面から出てきたのは―――――。
「…これは?」
「確か、ギーシュの…使い魔?」
 それは前の日に見せてもらった、ギーシュのモグラ、ウェルダンデだった。恐らく主人の後を密かに追ってきたのだろう。
 ウェルダンデはキョロキョロと辺りを見回して、主人が居ないのを確認して少しうなだれた様子だったが、次いでシルフィードを見つけると、口先をもぐもぐさせて話すような仕草をしだした。
 しばらく使い魔同士話し合っていると、今度はタバサに伝え、意味が分かったタバサが剣心に伝える。
「この子も一緒に行くらしい、いい?」
「まあ、拙者は構わないでござるが…」
 大丈夫だろうか? と思いながら嬉しそうに手を上げるウェルダンデを見る。どことなく気障っぽく見える当たり、流石ギーシュの使い魔だ。
 シルフィードは、ウェルダンデを口にくわえ、(少し嫌そうだったが、我慢したようだ)剣心とタバサが乗ったことを確認すると、翼を広げて大空へと飛び出した。




 澄み渡る夜空の中、ふとタバサが気付いたように、後ろにいる剣心に手を差し出した。
「貸して」
 一言、そう言ってタバサは目線を逆刃刀へと向ける。
 何だろう、と思いながらも断る理由がないため、剣心は鞘ごと逆刃刀を取り出して手渡した。
90 :るろうに使い魔2012/07/30(月) 01:04:35.13 ID:apDBSRFC
 タバサは、鞘を抜いて逆刃刀の刀身を晒した。月の光の影響を受けて、普段より輝かしく写り出す。
「――業物」
 タバサも、思わずそう漏らしてしまう程、逆刃刀の美しさに魅了されていた。
この刀の前では、世に蔓延る名剣全てが、等しく鉄屑に見えてしまうだろう。それほど製作者の『魂』が、この刀には打ち込まれていた。
 惜しむらくは、この刀が人を斬るに不向きというぐらいか。
 それにしても良かった。そうタバサは思う。この名刀がただの『錬金』でボロ屑になってしまっては、余りにももったいない。
 隣ではデルフが「はいはいどうせ俺は錆びものですよ」と拗ねたような口を開いた。


「ちょっと待ってて」
 そう言うと、タバサはルーンを紡ぎ出した。慣れない系統を扱うためか、慎重に呪文を唱える。
 そうした後に、コツコツと逆刃刀の刀身を杖にあて、ついでに鞘の方にもあてる。そして刀身を鞘に戻して、再び剣心に返した。
「『固定化』の呪文をかけた」
 返ってきた逆刃刀を受取りながら、剣心はタバサの説明を聞いた。
簡単に言えば、『錬金』対策だ。
 これから先、メイジと戦うにあたって、フーケのような策に出る輩がいないとも限らない。その負担を減らすための借用処置とのことらしい。
 タバサは、実力的にいえば『トライアングル』クラスのメイジ。つまり、彼女以上の使い手でなければ『錬金』の呪文くらいは簡単に弾くだろう。
 だが油断は禁物である。タバサは本来『風』主流のメイジであり、『固定化』は本来『土』系統。
反応を見るに一応成功はしたようだが、『土』系統相手にどこまで通用するかは分からない為、あくまで借用措置に過ぎない。
 だがそれでも、ずっと裸身を晒している今の状態よりかは、遥かにマシになったため、剣心は素直にありがたかった。
「重ね重ね、かたじけない」
 剣心はお礼を述べながら思った。気付けば、彼女には結構借りを作っている。
何か返せるものは無いかな…と考えていると、それに感づいたのか、タバサがこっちを見つめた。
「別にいい、そのかわり…一つ」
 何物も映さないような無機質な瞳を、一瞬だけ期待で輝かせながら、上目遣いで剣心を見る。
92 :るろうに使い魔2012/07/30(月) 01:06:28.81 ID:apDBSRFC
「私にも、飛天御剣流を教えて欲しい」

「…何故?」
 ギーシュの時見たく、頭ごなしに拒否するのではなく、やんわりといった感じで剣心は聞いた。
 彼女の目には、ギーシュのとは違う…明確な意思と強さを秘めていたからだ。
「もっと、強くなりたい」
 この一言に、全てを集約させるようにタバサが言った。本気だった。
迷いなく、ただ強さを求めるような瞳。だけど同時に、どこか道を踏み外しそうな危うさを持っている、儚い眼でもあった。
「……誰かの仇討ちでござるか?」
「――――!?」
 剣心のその言葉を聞いて、タバサの眼が、ほんの一瞬だけ素に戻っていた。
 剣心だって、タバサのその、見た目の年齢に合わない実力を持っているのを見て、彼女がその身に合わぬ苦労をしていることが分かっていた。
 しかし…だからこそきっぱりと言わなくてはならない。
「飛天御剣流は、その理を守る剣であって、復讐のために使うことは出来ないでござるよ」
「……詭弁」
 あんなに強いのに…タバサは納得できなかった。
「そうだな…だが、拙者には命を賭けるに足る詭弁でござるよ―――だから」
 そう言って、剣心はニッコリと微笑んでタバサに向き直った。
「もし困ったことがあったら、拙者を頼って欲しい。御剣流は教えられないけれども、力にはなってあげられるでござるよ」
 それを聞いて、タバサは少し悲しそうな嬉しそうな、複雑な表情をしていたが、やがていつもの無表情に戻ると、「分かった」と小さく呟いた。
 そんな風に飛んでいると、急に突然、剣心の目に突然不可思議な映像が見え出した。


「…よ…な……で!…」
 そして耳にも、変なノイズが聞こえ始める。剣心は慌てて片目を手で覆ったが、それとは逆にどんどん映像が写し出されていく。
(これは…ルイズ殿の…視点…?)
 今、剣心の目の前には盗賊らしき者たちによって、囲まれていた。隣にはワルドやキュルケ、ギーシュらしき姿も見える。
93 :るろうに使い魔2012/07/30(月) 01:08:30.14 ID:apDBSRFC
「下がりな…さい…下郎!」
「驚いた…下郎と…来たもんだ…!」
 次第に声もはっきりと聞こえ始め、まるで自分もその場にいるような一体感を、剣心は感じ始めた。この様子を見たタバサが、不思議そうに尋ねる。
「どうしたの?」
「いや…何か…ルイズ殿の視界が見え――」
 とここで、剣心はハッとした。そう言えば、前にルイズが言っていたことを思い出したのだ。
『使い魔にはね…主人の目となり耳となる能力が与えられるのよ』
 そうか…ルイズ達がピンチに陥って今、この能力が発現したのか。剣心はルイズの視点を見てそう思った。
 だが、状況を見る限りどうやら捕まってしまったらしい。
杖を取り上げられ、どこかに閉じ込められたような所を確認したとき、剣心の視界は元に戻った。
「あれ」
 そんな時、ふとタバサが指を指した。剣心は、多分今までここで見てきた事以上に、それに驚いた。
 ―――陸が、浮いている。
 自分達や船が、蟻か何かと見違えるほどに巨大なその大陸は、『白の国』と呼ぶにふさわしい、下半分が雲のような霧によって覆われている、壮大さと華麗さとを併せ持っていた。
そしてそこには、先程まで追っていた船とは別の、もうひとまわり大きな軍船があった。
 しばらくの間、二つの船はくっつくように止まっていたが、やがておもむろに動き出し、軍艦の方はアルビオンの方へと進み出した。
だがしかし、これはチャンスでもあった。暫く停船してくれたおかげで、距離を縮めることができたのだから。
 タバサはシルフィードに命じて、全速力で飛ばすと、一気に軍艦まで近付いた。
 どうやら突撃した余韻で、まだ周囲に偵察員と思しき連中はいないようだ。シルフィードは上空へと一旦上がり、空の闇を利用してゆっくり近づいていった。
程よい距離まで到着すると、その背中から影が二つ、ひっそりと飛び降りた。
「ん……?」
「何だ―――」
 見張り達の言葉は、そこで途切れた。
94 :るろうに使い魔2012/07/30(月) 01:10:39.62 ID:apDBSRFC
「大使としての扱いを要求するわ!!」
 場所は変わり、軍船の船長室。
賊に囲まれ、絶体絶命の中でも、ルイズの毅然とした声が響いた。その目の前には、テーブルを挟んで船長と思しき男がいた。
 周りは皆反乱軍の一派らしかったが、それでも気丈に王党派と言い切ったため、嘲りの声の中でもルイズは頑張っていた。
「王党派と言ったな、一体何しに行くんだい? あいつらなんて明日にでも消えてしまうよ」
「どうしてそんな事言えるのよ!! まだ決まったわけじゃないじゃないの!!」
「ル、ルイズ…お願いだからもう少しだな…」
 ギーシュが冷や汗を流しながら、懇願するようにルイズに頼み込むが、それでもルイズは譲らない。
 でも、本音を言えば怖かった。なぜなら、いつも頼りにしていたあの使い魔が、今は居ない。
今になって、こんなにも彼に依存していたことにルイズは気付いた。
 体を強ばらせ、手を震わせながらも、それを敵に悟られないように必死で耐えているのだ。
「だから…っ! 私は…」
 しかし、声が段々か細くなっていく。心は不安で満たされていく。
こんな時に何やってんのよ、早く来なさいよ、主人が危ないのよ。
 そんな、助けを求めるかのように頭の中で、彼の事を思い浮かべていた、その時である。
「せ…船長!!」
 バタンと、賊の一人が慌ただしく扉を開けて入ってきた。船長の男は不思議そうに目を向けたが、特段動揺したりせずに聞いた。
「何だ、騒々しいなあ」
「し、しかし――――」
 声はそこで消えて、賊は後ろから吹っ飛ばされていった。代わりに扉に立っている人物を見て、ルイズは思わず喜色の表情を浮かべた。
「――ケンシン!!」
「な…何者だ貴様!!」
「見張りたちは何をしている!!」
「出会え、出会え!!」
 辺りが騒ぎ立てる中、剣心の声がシンと響いた。
「呼んでも来ぬよ、どうしても入れてくれぬのでな、失礼ながら眠ってもらった」
 そう伝える剣心の後ろから、ひょっこりとタバサも現れる。
キュルケやギーシュが安堵の笑を浮かべる中、船長の男だけは冷静に剣心を見据えた。
「ほう…中々やるな、君も王党派の一味かい?」
「拙者は流浪人――と言いたいところでござるが、今はルイズ殿の使い魔をやらせてもらっている。
今は急ぎの用なのでな、ルイズ殿達は返してもらおう」
95 :るろうに使い魔2012/07/30(月) 01:13:47.56 ID:apDBSRFC
 使い魔? と聞いた男はルイズを見やり、再び視線を剣心に戻すと、どこか可笑しそうにしながら立ち上がり、そして剣心と向かい合った。
「そう言われて、はい返します。と僕が言うとでも?」
「ならば力づくでも返してもらおう」
 剣心の瞳が鋭く光り、男を睨みつける。しかし、そんな状況にも関わらず男は不敵の笑みを浮かべていた。
 時間にして約数秒、しばらくそうして佇んでいると……。おもむろに一瞬、男が杖を抜いて――――。

「……ッ!!!」
 いつの間にか間合いを詰めた剣心の逆刃刀が首筋に、男の杖が数サント前に額に、それぞれ突きつけられていた。
 男も含めて、反応できなかった周囲が唖然として、二人を見守っていると、ふと急に男は笑いながら質問をぶつけた。
「何故振り切らなかったんだい、君の速さなら間に合った筈だろう?」
「ならばお主こそ。敵意がまるで感じられなかったでござるよ」
 それを聞いて、面白そうな笑みを崩さずに男は杖をしまうと、改めてルイズ達に向き直った。
「いやあ、試すようなことをして悪かった。何せこっちも必死だったもんでね」
 そう言って、男は懐から指輪のようなものを取り出し、それをルイズ達に見せるように向けた。
 それは、アルビオンの王家のみが着用を許される、『風のルビー』。
それをルイズがアンリエッタから貰った『水のルビー』に近付けると、共鳴するように光りあい、虹の橋をかけた。
 偽物の類では無い、見間違える事の無い本物に、ルイズ達は驚きで目を見張る。
「あ…貴方は一体…」
「失礼、貴族に名乗らせるなら、こちらから名乗らなくてはな」
 そう言うと、男は改めて姿勢を正して挨拶する。それは野蛮な空賊には決してできない、貴族を思わせるような凛とした振る舞いだった。
「アルビオン皇太子、ウェールズ・テューダーだ」


 本日はここまでです。ここまで見ていただきありがとうございました。
 また来週、この時間に投稿したいと思います。
97 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/30(月) 01:26:30.48 ID:LOzdvfh7
投下の方々乙です

偏在は強いけど、沢山出すほど一体一体の力や精神残量は弱まるって意見もありますね
原作でも一体だけ偏在出したときはライトニングクラウド使っていたけど、
四体出したときはエアニードルを一回使っただけで後は接近戦のみ、ルイズを倒すときも魔法じゃなく杖で殴ってる
99 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/30(月) 04:54:39.76 ID:u30DOUdt
>>97つまり四身の拳か
98 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/30(月) 01:33:03.05 ID:OG/yTaV/
お二人投下乙
ドリュウズがいるのか…ワルド大ピンチだな
104 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/30(月) 15:47:58.01 ID:g3fjd4/z
ギーシュ「やぁ!ゼロの使い魔の美形キャラギーシュだよ!」
ルイズ「わざわざ説明しなくてもわかると思うけどゼロの使い魔の美少女キャラ、
誇り高きヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・(以下略)よ!」

右京さん「……」
ルイズ「右京さんよ」
ギーシュ「ルイズに召喚されたサムライスピリッツの美形キャラ橘右京さんだね」
106 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/30(月) 21:15:30.17 ID:BzBlzFHL
BWの時代だと、シナリオポケモンは例外なくイッシュのポケモンになるな。
しかし、ヴィンダか・・・意のままに操るとか、限界まで幻獣の能力を引き出すってのが能力だったっけ?
連れ添ってきたシナリオポケモンに使う能力じゃない気もするけど…
擬似ハルモニアみたいな精神感応の能力もあったっけか、あのルーンって
Nに近い視点を持てるっていうのは主人公的に大きそうだ
109 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/31(火) 03:53:05.42 ID:Yn/Tntdu
剣心以上に小柄なタバサじゃ飛天御剣流は無理だよなあ
ハルケギニアでまともに習得可能なのはスカロンくらいじゃなかろうか、筋肉の鎧的には
112 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/31(火) 07:18:32.11 ID:GinhZRVd
アニエスは復讐者という立場的に和刀術ではなかろうかな
スカロンはカマ男?
115 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/31(火) 13:33:29.65 ID:1mJXhEUA
アニエス「くやしい・・・でも・・・感じちゃう!」

こうですかわかりません!
117 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/07/31(火) 18:32:38.27 ID:f4o4LTHa
クソ暑いな
そういえば冷凍怪獣バルゴン召喚の書いてた人はまだかな
118 :ルイズと無重力巫女さん2012/07/31(火) 20:40:10.11 ID:5N/BdaDM
どうも今晩は。無重力の人です。
もうすっかり夏が到来してますね。

さて、今回の五十七話は前後編に分けて投下します。
何もなければ、45分から投下を始めます。
119 :ルイズと無重力巫女さん2012/07/31(火) 20:45:02.64 ID:5N/BdaDM
 昼の喧騒で賑わうトリステイン王国の首都トリスタニア。
 商売も仕事もこれからという時間の中、ブルドンネ街のとある通りに建てられた一件のレストラン。
 平民から下級貴族までが主な客層であるこの店も、書き入れ時をとっくに過ぎて閑散とした雰囲気を漂わせている。
 しかし個々の諸事情で昼食の時間に食べそこなった人達が席につき、店が振る舞う料理やデザートの味をゆっくりと楽しんでいた。

 木製の小さなボールに入ったサラダを、ゆっくりと口に入れて咀嚼している若い貴族の女性。
 ハチミツを塗ってからオーブンでじっくり焼いた骨付き肉にかぶりつく、平民の中年男性。
 常連なのか、カウンターの向こうにいる店長と談笑しながらフルーツサンドイッチを味わっている魔法衛士隊の隊員。
 窓から見える野良猫同士の喧嘩を眺めるのに夢中になって、思わずレモンティーをこぼしてしまう平民の少女。

 食べている物や行動などはバラバラであるのだが、彼らには皆一つだけの共通点がある。
 それは、一日という忙しくも長い時間の合間に『自分だけの時間』を作って、ゆったりと過ごしているという事だ。
 
 大勢の人々が忙しそうに行き交う場所から閑散とした場所へ、その身を移して一息つく。
 そうすることで゛自分゛という存在を改めて自覚し、色んな事を考える時間ができるのだ。
 仕事の事や気になるあの人との関係から、これから何をしようかな。といった事まで人によって考えている事も全部違う。
 短くもなるし長くもなる『自分だけの時間』の間にその答えに辿り着く者もいれば、答えが出ずに悩み続けていく者もいる。
 中には最初から考える事をせず、ただ単に体を休ませている者もいるがそれは決して間違った事ではない。
 仕事や人間関係といった気難しい事を一時的に投げ捨ててわがままになる事も、また大切なのだ。

 そんな風にして各々の時間が緩やかな川の流れの様に進んでいく店の中で、ルイズたちは昼食を取っていた。
「それにしてもホント、今日はどういう風の吹き回しかしらねぇ」
「……?どういう意味よ、それは?」
 ふと耳に入ってきた霊夢の言葉に、ルイズはキョトンとした表情を浮かべて食事の手を止める。
 口の中に入る予定であったフライドミートボールと、それを刺しているフォークを皿に置いた彼女は一体何なのかと聞いてみる。
「事の張本人がそれを知らないワケないでしょうに」
 質問を質問で返したルイズの言葉に霊夢は肩を竦めると手に持っていたカップを口元に寄せ、中に入っている紅茶を一口だけ飲む。
 そこでようやく思い出したのか、何かを思い出したような表情を浮かべたルイズがその口を開く。
「あぁわかった。アンタの服の事でしょう?」
 ルイズの口から出たその言葉に、霊夢は正解だと言いたげに頷きながらもカップを口元から離す。
 安物のティーカップに入っていたそれはルイズの部屋にある物と比べて味は劣るものの、それでも美味い方だと彼女の舌が判断した。
 上品さと素朴さを併せ持つ一口分の紅茶を口の中でゆっくりと堪能した後に、喉を動かしてそれを飲み込む。
 口に入れた時よりも少しだけぬるくなった赤色の液体が喉を通っていく感触を感じた後、霊夢はホッと一息ついた。

「今更過ぎるけどお前ってさぁ、本当に緑茶でも紅茶でも美味しそうに飲むよな」
 その様子をルイズの隣で見つめていた魔理沙は、コップ入ったオレンジジュースをストローで軽くかき混ぜながらそんな事を呟く。
 まるで目玉焼きの目玉部分の如き真っ黄色な液体は、一口サイズの氷と一緒にコップの中でグルグルと回っている。
 しかし幾らかき混ぜても液体そのものが糖分の塊なので、氷が溶けない限り味が変わることは無いだろう。
 黒白の言う通り、本当に今更過ぎるその質問に霊夢は若干呆れながらも返事をした。
「アンタの頼んだジュースと違って、お茶なら熱しても冷やしても美味しいし、色んなものに合うから飲めるのよ」
「でも一日中お茶ばっかり飲んでるってのもどうかと思うわね。私は」
 霊夢がそんな事を言っている間にお冷を口の中に入れていたルイズはそれを飲み込みんでから、思わず横槍を入れてしまう。
 軽い突っ込み程度のそれは投げた本人が想定していた威力よりも強くなり、容赦なく紅白巫女の横っ腹に直撃した。
120 :ルイズと無重力巫女さん2012/07/31(火) 20:48:21.83 ID:5N/BdaDM
「私が何を飲んだって別に良いじゃないの。アンタには関係ないんだしさぁ」
 ルイズの突っ込みに顔を顰めてそう返しつつ、霊夢はもう一口紅茶を飲んだ。
 そして何を勘違いしたのか、魔理沙は意地悪そうな笑みを浮かべてルイズの肩を軽く叩く。

「やったなルイズ、今回の勝負は私たちの完全勝利で終わったぜ」
「アンタは何と戦ってたのよ?」
 自分には見えない不可視の敵と知らぬ間に戦っていたらしい魔理沙の言葉に、ルイズは怪訝な表情を浮かべた。
 その直後、話が逸れてしまった事を思い出した彼女はアッと小さな声を上げて再度霊夢に話しかける。

「それで、まぁ話は戻るけど……アンタの服の事だったわよね?」
「そうそうその事よ。まったく、魔理沙のせいで話が逸れる所だったわ」
 さっきのお返しか霊夢はそんな事を言いながら、ルイズの隣に座っている普通の魔法使いを睨みつける。
 しかし博麗の巫女に睨まれた魔法使いは微動だにせず、やれやれと言わんばかりに首を横に振ってこう言った。
「元を辿れば、お前が紅茶を飲んだ所で話が逸れ始めたと私は思ってるんだがなぁ〜」
「まぁこの件はどっちも悪い、という事にしておきましょう。これ以上話が逸れたら面倒だわ」
 これ以上進むとまた騒いでしまいそうな気がしたルイズはその言葉で無理やり締めくくり、コップに残っていたお冷をグイッと飲み干した。
 自分たちの論争が第三者の手によって終止符を打たれてしまった事に、二人は目を丸くしてルイズの方へと顔を向ける。
 突然自分に向けられた二人分の視線をまともに受けた彼女は少しだけ気まずそうに咳き込むと、今度こそ本題に移った。

「で、服の事についてなんだけど…」
 ルイズはその言葉を皮切りに何で霊夢の為に新しい服を購入してあげたのか、その理由を話し始めた。



 ハルケギニア大陸において小国ながらも古い歴史と伝統を誇るトリステイン王国の首都、トリスタニア。
 国の中心である王宮がすぐ目の前にあるという事もあって、その規模はかなりのものだ。
 平日でも大通りを利用する市民や貴族の数が変わることは無く、常に大勢の人々が行き交っている。
 ブルドンネ街やチクトンネ街などの繁華街には大規模な市場があり、今日の様な休日ともなれば火が付いたかのように街が活気に満ち溢れる。
 その他にもホテルやレストランなどの店も充実しており、特にこの時期は他国からやってきた観光客が狭い通りを物珍しそうに歩く姿を見れるものだ。
 ガリアのリュティスやロマリアの各主要都市に次いで人気のあるトリスタニアには、他にも色々な場所がある。
 かつての栄華をそのまま残して時代に取り残された郊外の旧市街地に、各国から賞賛されているトリステインの家具工場。
 芸の歴史にその名を残す数多の劇団を招き入れたタニア・リージュ・ロワイヤル座は、今も毎日が満員御礼だ。

 そんな首都から徒歩一時間ほど離れた所に、ハルケギニアの基準では中規模クラスに入る地下採石場がある。
 周りを十メイルほどもある木の柵に囲まれた敷地の真ん中には大きな穴があり、そこを入った先にある人工の洞窟が採石の場所となっていた。
 土地の大きさはトリステイン魔法学院の三分の一程度の広さで、主な仕事は地下から切り取ってきた岩を地上に上げる事である。
 地下から運び出された岩は馬車に乗せられ、首都の近郊に建てられた加工場で石像や墓石などにその姿を変える。
 ここで働いているのは街や地方からやってきた平民の出稼ぎ労働者や石工、警備の衛士に現場監督である貴族達も含めておよそ九十人程度。
 ガリアやゲルマニアとは国土の差がありすぎるトリステインでは、これだけの人数でも充分に多い方だ。
 一つの鉱山や採石場に二十人から四十人程度はまだマシな方で、地方では十人から数人程度で運営している様な場所もあるのだから。
121 :ルイズと無重力巫女さん2012/07/31(火) 20:51:03.59 ID:5N/BdaDM
 そこから場所は変わり、加工場と採石場を繋ぐ唯一の一本道。
 鬱蒼とした木々に左右を挟まれたようにできた横幅七メイル程度の道も、かつては広大な森林地帯の一部に過ぎなかった。
 今からもう四十年前の事だが当時は誰も見向きすることはなく、動植物たちが安寧に暮らせる場所であった。
 しかし…今は採石場となっている場所で良い鉱石が見つかった途端、人々は気が狂ったかのように木を倒し草を毟って森を壊していった。
 そして森に古くから住んでいた者たちを無理やり排除して、人は文明の一端であるこの道を作ったのである。

 そんな歴史を持っている道を、馬に乗った二人の男が軽く喋り合いながら歩いている。
 薄茶色の安い鎧をその身に着こんだ彼らは、採石場を運営している王宮が雇った衛士達だ。
 市中警邏の者たちや魔法学院に派遣されている者達とは違い、彼らは皆傭兵で構成されている。
 その為かあまりいい教育は受けておらず、常日頃の身なりや素行はそれなりの教育を受けた平民なら顔を顰めるだろう。
 しかし雇われる前に傭兵業を営んでいた彼らの腕利きは良く、文句を言いつつも仕事はしっかりとこなすので王宮側は仕方なく雇っているのが現状であった。


「全く、こんな休日だってのに採石場警備の増援だなんて最悪だよな?」
 二人の内先頭を行く細身のアルベルトは左手で手綱を握りつつ、後ろにいる同僚のフランツにボヤいている。
 アルベルトとは違い体の大きい彼はその言葉にため息をつく。アルベルトが日々の仕事に対し文句を言うのはいつものことであった。
「仕方ないだろ。他の連中は皆非番で、事務所にいたのは俺たちだけだったんだ」
「だからってわざわざ採石場まで行かせるかよ。あそこの警備担当はヨップが率いてる分隊だろうが」
 空いている右手を激しく振り回しながらそう喋る彼の言葉を、フランツは至極冷静な気持ちで返した。
「そのヨップの分隊にいたコンスタンとダニエルが今日でクビになったから、俺たちが臨時で行くんだ」
 同僚の口から出た予想していなかった言葉に、思わず彼は目を丸くした。

「どういう事だよ?あいつ等なんか下手な事でもしたのか?」
「正にその通り。…コンスタンはこの前、高等法院から視察に来たお偉いさんの足を踏んじまったろ?あれのツケが今になってきたのさ」
「うへぇ…マジかよ」
 コンスタンの酒飲みは悪いヤツではなかったし、何よりこの前負けたポーカーの借りをまだ返していなかった事を彼は思い出す。
 後ろにいるフランツの言葉を聞き、惜しい顔見知りを失ったとアルベルトは心の中で呟いた。
「あんなに面白い奴をクビにするなんて、酷い世の中だ。…で、ダニエルの方は?」
 アルベルトは職場から消えてしまった顔見知りの事を惜しみつつも二人目の事を聞くと、同僚は顔を顰めて言った。
「アイツの事なんだが…何でも教会のシスターに手ぇ出しちまったんだとよ」
「シスター!?それはまた…随分派手だなぁオイ」
 女遊びが激しかったアイツらしい最後だと彼が思った、その時である。


「全く、女に手を出すのは良いが幾らなんでも――ん?」
 ダニエルの事を良く知っていたフランツが彼に対しての文句を言おうとした直後、四メイル前方の茂みから何かが飛び出してきた。
 それはボロ布のようなフード付きのローブを、頭から羽織った身長160サント程度の人間?であった。


「な、何だ!…人?森の中から出てきたぞ…?」
 先頭にいたアルベルトは驚いたあまり手綱を引いて馬を止めると、目の前に現れた者へ警戒心を向けた。
122 :ルイズと無重力巫女さん2012/07/31(火) 20:54:08.99 ID:5N/BdaDM
 この一帯は道を外れると、急な斜面や深さ三メイル程もある自然の溝が至る所にある樹海へと入ってしまう。
 それに加えて九十年近くの樹齢がある木々が空を覆い隠しているので、並大抵の人間ならあっという間に迷い込む。
 更に視界を奪うほどに生い茂った雑草や少し歩いた先にある野犬の縄張りの事も考慮すれば、無用心に森へ入って生きて帰れる確率はそれほど高くはない。
 その事を知っていれば、どんな人間でもわざと道を外れて森に立ち入ろうとは思わないだろう。
 しかし、今二人の目の前に現れた者は間違いなく茂みの…その奥にある森から姿を現したのだ。
 雇い主である王宮側から森の事を教えられた者たちの一人であるアルベルトが警戒するのも、無理はないと言える。
 それはフランツも同じであったが、少なくとも彼ほどの警戒心は見せていなかった。

「まぁ落ち着けアルベルト。とりあえず話しかけてみようじゃないか」
 彼よりもこの仕事を大事にしているフランツはそう言うと馬を歩かせ、アルベルトの前へと出る。
 フードのせいで性別はわからないが、人間であるならば話は通じるだろうと彼は思っていた。
 無論もしもの時を考えて、左の腰に携えた剣の柄を右手て掴んみながらも目の前にいる相手へと声をかける。
「すまんがお前さんは誰だい?見た感じ旅人って風には見えるんだが…」
 まずは軽く優しく、なるべく相手が怖がらない様に話しかけてみる。
 このような場合下手に脅すように話しかけると、相手が逃げてしまう事をフランツは経験上知っていた。

 彼の声にローブを羽織った者はピクリと体を動かした後、ゆっくりとだがその足を動かして二人の方へ近づいてきた。
 てっきり喋り出すのかと思っていたフランツは予想外の行動に少しだけ目を丸くしつつも、すぐに左手のひらを前に突き出しその場で止まるよう指示を出す。
 彼の突き出した手が何を意味するのか知っていたのか、ローブを羽織った者は一メイル程歩いた所でその足をピタッと止めた。
 うまくいった。彼は動きを止めた相手を見て内心安堵しつつ、ここがどういう場所なのかを説明し始めようとする。
「悪いがここは王宮の直轄でね?関係者以外の立ち入りは――――」
 

 禁止されているんだ。彼はそう言おうとしたが、最後まで言い切ることができなかった。
 喉に何か詰まったわけでもなく、ましてや目の前にいる相手が投げつけたナイフで喉を切り裂かれた――という突飛な話でもない。
 
 彼の言葉を中断させたその゛原因゛は、先程ローブを羽織った者が出てきた茂みから現れた。

 ゛原因゛の正体は野犬でも狼でもなく、本来なら王都との距離が近いこのような場所には滅多に現れない存在であった。
 全長二メイルもある゛原因゛は太った体には似つかわぬ俊敏な動きで道の真ん中に飛び出してくると、目の前にいる一人の人間をその視界に入れる。
 そしてローブを羽織った者が後ろを振り返ると同時に゛原因゛は体を揺らしながら、聞きたくもない不快な咆哮を辺りに響かせた。
「ふぎぃっ!ぴぎっ!あぎぃ!んぐいぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!」
 もう逃げられないぞ!
 人間にはわからない言葉で゛原因゛はそう叫んでから威嚇のつもりか、右手に持った棍棒を振り回しはじめる。
 それと同時にローブを羽織った者の後ろにいるアルベルトが、今まで生きてきて何十回も見てきた゛原因゛の名前を口にした。

「お、オーク鬼だ!!」 

 彼がそう叫んだと同時にフランツが右手に掴んだ剣の柄を握り締め、それを勢いよく引き抜く。
 刃と鯉口が擦れる音ともに引き抜かれたソレの先端は一寸のブレもなく、獲物を振り回す亜人の方へと向けられた。
 彼の表情は厳ついものへと変貌しており、目の前に現れた亜人に対して容赦ない敵意を向けている。
123 :ルイズと無重力巫女さん2012/07/31(火) 20:57:05.06 ID:5N/BdaDM
「そこのお前、早くこっちへ来るんだ!」
 先程の優しい口調とは打って変わって、ローブを羽織った者へ向けてフランツは叫ぶ。
 しかしその声が聞こえていなかったのか、ローブを羽織った者は微動だにしない。
 それどころか、目の前にいるオーク鬼と対峙するかのように何も言わずに佇んでいるのだ。
 だが、身長二メイルもある亜人と身長160サント程度しかない人間のツーショットというのは、あまりにも絶望的であった。
 どう贔屓目に見たとしても、勝利するのは亜人の方だと十人中十人が思うであろう。
「アイツ、何を突っ立ってる…死にたいのか?」
 まるで街角のブティックに置いてあるマネキンの様に佇む姿を見たアルベルトが、思わずそう呟いた瞬間――

「ぎいぃぃぃぃッ!」
 もう我慢できないと言わんばかりに吠えたオーク鬼はその口をアングリ開けて、ローブを羽織った者に向かって一直線に走り出した。
 二本足で立つブタという姿を持つ彼らの口に生えている歯は見た目以上に強く、ある程度硬いモノでも容易に噛み砕くこともできる。
 その話はあまりにも有名で、とある本に火竜の分厚い鱗諸共その皮膚を食いちぎったという逸話まで書かれている程だ。
 それほどまでに凶悪な歯を光らせながら走り、目の前にいる獲物の喉へと突き立てんとしていた。
 二人の衛士たちはそれを見てアッと驚き目を見開くがその体だけは動かない。
 あと少しでオーク鬼に喉笛を噛み千切られるであろう者が目の前にいても、すぐに動くことができなかった。
 そんな彼らをあざ笑うかのように、オーク鬼は走りながらも鳴き声を上げる。

「ぷぎゃあっ!いぎぃ!」
 オーク鬼は知っていた。大抵の生き物は。喉を食いちぎればカンタンに殺せると。
 そこへたどり着くまでの過程は難しいものの、そこまでいけば相手はすぐに死ぬ事を知っている。
 だから森で見つけたこの人間も、喉を噛み千切ればすぐにでも食べられる。
 縄張り争いで群れから追い出され、腹を空かせたまま森の中を徘徊していた彼は自らの食欲を満たそうと躍起になっていた。
 三日間もの耐え難い空腹で理性を失い、すぐ近くに武器を持った人間が二人もいるというのにも関わらず襲いかかった。
 たったの一匹で人間の戦士五人分に匹敵するオーク鬼にとって、たかが二人の戦士など問題外である。
 それどころか、オーク鬼は二人の戦士と彼らの乗ってる馬ですら自分が食べる食糧として計算していた。
 目の前にいる人間を殺したら、次はあいつらを襲ってやる。
 食欲によって理性のタガが外れたオーク鬼はそう心に決めながら、最初の獲物として選んだ人間に飛びかかろうとした瞬間…


 目が合った。
 頭に被ったフードの合間から見える、赤色に光り輝くソイツの『目』と。
 
  まるで火が消えかけたカンテラの様に薄く光るその『目』の色は、どことなく血の色に似ている。
 物言わぬ骸の傷口から流れ出る赤い体液のような色の瞳から、何故か禍々しい雰囲気から感じられるのだ。
 そして、そんな『目』が襲いかかってくる自分の姿をジッと見つめている事に気が付いたオーク鬼は、直感する。
 
―――――こいつ、人間じゃない!

  心の中でそう叫んだ瞬間、オーク鬼の視界の右下で青白い『何か』が光った。
 その光の源が、目の前にいる゛人間ではない何か゛の『左手』だとわかった直後。

 オーク鬼の意識は、プッツリと途絶えた。 
124 :ルイズと無重力巫女さん2012/07/31(火) 20:59:08.54 ID:5N/BdaDM


――――…と、いうワケなのよ。判った?」

 無駄に長くなってしまった説明を終えたルイズは、一息ついてから話の合間に頼んでおいたデザートのアイスクリームを食べ始める。
 カップに入った白色の氷菓は丁度良い具合に柔らかくなっており、スプーンでも簡単にその表面を削ることができた。
 ルイズはその顔に微かな笑みを浮かべつつ、一匙分のアイスが乗ったスプーンをすぐさま口の中にパクリと入れる。

「まぁ大体話はわかったわね…アンタが何であんな事をしてくれたのか」
 一方、三十分以上もの長話を聞かされた霊夢はそう言って傍にあるティーカップを手に持つと中に入っている紅茶を一口飲む。
 話の合間に新しく注いでもらった熱い紅茶は喉を通って胃に到達し、そこを中心にしてゆっくりと彼女の体を温めていく。
 緑茶とは一味違う紅茶の上品な味と香り、そして体の芯から温まっていく感覚を体中で体感している霊夢は安堵の表情を浮かべている。
 そんな風にして一口分の幸せを堪能した彼女は再びカップをテーブルに置くと、ルイズの隣にいる黒白の魔法使いに話しかけた。
「ねぇ魔理沙、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「…ん、何だ?」
 霊夢に名前を呼ばれた彼女は、サンドイッチを口に運びかけたころでその手を止める。
 魔理沙がこちらに顔を向けた事を確認してから、霊夢はこんな質問を投げかけた。
「アタシが着てる巫女服って…ルイズが言うほど変わってるかしらね?」
「…う〜ん、どうだろうなぁ?私はそんなに変わってるとは思わなくなったが」
 その質問に、魔理沙は肩を竦めながら言った後に「だけど…」と言葉を続けていく。
「ハルケギニア人のルイズがそう思うのなら、この世界の基準では変わってるのかもしれないな」
 自分の質問にあっさりと即答した魔法使いの返答を聞き、霊夢は思わず目を細めてしまう。

 そんな二人のやりとりを自信満々な笑みを浮かべて見ていたルイズが、追い打ちをかけるかのように口を開く。
「まぁ私としてもアンタには色々と借りがあったしね。それを一緒に返したまでの事よ」
 彼女の口から出てきたそんな言葉を聞き、霊夢はふと彼女が話してくれた゛二つの理由゛を思い出し始める。


 ルイズが霊夢に新しい服を買ってあげた゛二つの理由゛の一つめ。
 それは近々行われるアンリエッタとゲルマニア皇帝の結婚式にある。

 かの神聖アルビオン共和国の前身であるレコン・キスタの出現とアルビオン王家の危機に伴い、帝政ゲルマニアとトリステイン王国は同盟を組む事となった。 
 アルビオン王家が滅ぼされれば、有能な貴族だけで国を支配してやると豪語する神聖アルビオン共和国が隣の小国であるトリステインへ攻め込んでくるのは明らかである。
 巨大な浮遊大陸からハルケギニアでは無敵と評される大規模な空軍と竜騎士隊が攻め込んで来れば、トリステインなどあっという間に焦土と化すだろう。
 そうならない為にもトリステインは隣国に同盟の話を持ち込み、ガリアに次ぐ大国の誕生を望まないゲルマニアはその話に乗った。 
 幾つかの協議を行った末にゲルマニア側は、もしトリステイン国内で大規模な戦争が起こった際に自国から援軍を出すことを約束した。
 それに対しトリステインの一部貴族はあまり良い反応をしなかったが、異論を唱えることは無かったのだという。
 精鋭揃いではあるが小国故に軍の規模が他国と比べて小さいのが悩みのタネであったトリステインにとって、倍の規模を持つゲルマニアの存在は心強い。
 一方のトリステインは、王宮の華であるアンリエッタをゲルマニア皇帝アルブレヒト三世のもとに嫁がせる事を約束した。

 その結婚式に関しては一つのアクシデントが起こり、ルイズと霊夢はそのアクシデントの所為でトリステインの国内事情に巻き込まれたのである。
 最もルイズは自ら望んで巻き込まれたのに対して、霊夢は偶然にも巻き込まれただけに過ぎないが。
 まぁ結果的にそのアクシデントは二人の力で無事解決し、晴れてトリステインとゲルマニアの同盟は締結される事となった。
125 :ルイズと無重力巫女さん2012/07/31(火) 21:02:47.48 ID:5N/BdaDM
 そして、丁度来月の今頃にゲルマニアで行われる手筈となった結婚式に、ルイズは詔を上げる巫女として招待される事となった。
 幼いころからアンリエッタの遊び相手として付き合ってきた彼女は、幼馴染でもある姫殿下から国宝である『始祖の祈祷書』を託されている。
 トリステイン王室の伝統で、結婚式の際には祈祷書を持つ者が巫女となって式の詔を詠みあげるという習わしがある。
 そんな国宝をアンリエッタの手で直々に渡された彼女はこれを受け取り、巫女としての仕事を承った。
 ルイズが行くのなら、形式上彼女の使い魔であり現役の巫女である霊夢もついて行くことになるのだが…そこで問題が発生する。
 霊夢がいつも着ている巫女服、つまりは袖と服が別々になっているソレに問題があった。

 ハルケギニアでは比較的珍しい髪の色や、他人とは付き合いにくい性格は多少問題はあるがそれでも大事にはならないだろうルイズは思っている。
 むしろ性格に関しては、付き合えば付き合うほど良いところを見つけることができると彼女は感じていた。
 表裏が無く、喜怒哀楽がハッキリと出て誰に対してもその態度を変えない霊夢とは確かに付き合いにくい。
 事実、召喚したばかりの頃はある意味刺々しい性格に四苦八苦していたのはルイズにとって苦々しい思い出の一つだ。
 
 しかし霊夢を召喚してから早二ヶ月、様々な事を彼女と共に体験したルイズはそれも悪くないと思い始めていた。
 部屋の掃除は今もしっかりとしているし部屋にいるときはいつもお茶を出すようにまでなっている。
 相変わらず刺々しいのは変わりないが、慣れてくるとそれがいつもの彼女だと知ったルイズは怒ったり嘆いたりする事は少なくなった。
 だが、それを引き合いに出しても彼女の服だけにはどうしても問題があるのだ。
 
 王家の結婚式において、礼装であってもなるべく派手な物は避けるという暗黙のルールが貴族たちの間にある。
 着ていく服やマントの色も黒や灰色に茶といった地味なもので装飾品の類は一切付けず、杖に何らかの飾りを付けているのならばそれも外す。
 ドレスであってもなるべく飾り気の少ない物を選び、決して花嫁より目立ってはいけないよう注意する。
 式を挙げる側もそれを知ってか花嫁花婿ともに華やかな衣装に身を包み、周りに自分たちの存在をこれでもかとアピールするのだ。
 もしも間違って派手な衣装で式に参加してしまえば、王家どころか周りにいる貴族達から大顰蹙を買うことになる。
 事実過去にタブーを犯した怖いもの知らず達が何人かおり、後に全員が悲惨な目に遭っていると歴史書には記されていた。
 
 そして不幸か否か、霊夢の服はそのような場において確実に目立つ出で立ちだ。
 服と別々になった袖や頭に着けたリボンは勿論の事、何よりも目立つのが服の色である。
 紅白のソレはある程度距離を取ろうが否が応にも目に入り、着ている人間がここにいると激しく主張している。
 街の中ならともかく、そんな服を着て結婚式に参加しようものならば顰蹙どころかその場で無礼だ無礼だと騒がれてドンパチ賑やかになってもおかしくはない。
 しかも持ってきた着替えも全て似たようなデザインの巫女服であった為、ルイズは今になって決めたのである。

 この際だから、霊夢に服でも買ってあげようと。


「幻想郷だとそれほど変わってるって言われる事は無かったのに…」
 ルイズの話した゛二つの理由゛の一つ目を思い出し終えた霊夢がポツリと呟いた愚痴に、ルイズはすかさず突っ込みを入れた。
「言っておくけどここはハルケギニア大陸よ。アンタのところの常識で物事測れるワケないでしょうに?」
 辛辣な雰囲気漂う彼女の突っ込みにムッときたのか、霊夢は苦虫を踏んでしまったかのように表情を浮かべる。
 そんな表情のまま紅茶を一口飲むと、薄い笑みを顔に浮かべてこんな事を言ってきた。
「だったら何も知らせずに服屋に連れていって、イキナリ別の服を着させるのがハルケギニア大陸の常識ってワケね」
「…何よその言い方は?」
 薄い嫌悪感漂う笑顔を浮かべる霊夢の口から出たその言葉に、ルイズは目を思わず細める。
126 :ルイズと無重力巫女さん2012/07/31(火) 21:05:31.56 ID:5N/BdaDM
 両者ともに嫌な気配が体から出ており、下手すれば静かな雰囲気漂うこの店で弾幕ごっこでも起きかねない状態だ。
 しかしそんな気配が見えていないというか場の空気を読めていない黒白の魔法使いが、霊夢の方へ顔を向けて口を開く。
「まぁ別に良いじゃないか。これを機にお前も袖が別途になってない服を着ればいいんだよ」
 魔理沙がそう言った直後。睨み合っていた二人の目が丸くなると、その顔を彼女の方へ向けた。
 二人同時にして同じ事を行ったために魔理沙は軽く驚いた様子で「え?何…私何か悪い事でも言ったか?」と呟き狼狽えてしまう。
 それに対し霊夢は軽いため息を口から吐くと、出来の悪い生徒に諭すかのような感じで魔理沙に話しかける。

「全く服に興味が無いわけでもないし、貰えるのなら貰うわよ。タダ程嬉しい物はないしね」
 彼女はそう言って一息ついた後、「でもまぁ…その理由がねぇ…」と話を続けていく。
「元の服じゃ自分が変だと思われるから別のを買ってやる…って理由で服を貰ってさぁ。喜ぶワケないじゃないの」
 隠す気が全くない嫌悪感をその目に滲ませた霊夢は、ルイズの顔を睨みつけた。

 以前王宮へ参内した際に同じような目つきで睨まれた事があったルイズは思わず怯みそうになるが、それを何とか堪える。
 霊夢を召喚してかれこれ二ヶ月近く一緒にいる彼女は、ゆっくりとではあるが彼女の性格に慣れ始めていた。
 一方ルイズの隣にいる魔理沙は滅多に見ないであろう知り合いの表情に軽く驚きつつも、それを諌める事は無い。
 霊夢と出会い知り合ってから数年ほどにもなる彼女は、別に怒ってるワケではないとすぐに感じていた。
 何せ喜怒哀楽がすぐに態度で出るような彼女だが、本気で怒るような事は滅多にないのだ。

 一見怒っているように見える今の状況も、魔理沙の目からして見れば今の霊夢は゛怒っている゛というより゛呆れている゛のだ。
 相変わらず素直ではなく、下手な言い回ししかできないルイズに対して。

(まぁ本気で怒ってるなら怒ってるで、もっとヒドイ事言うからなコイツは)
 魔理沙は心の中でそんな事を思いながら、尚もルイズの顔を睨みつけている霊夢の方へと顔を向けた。
 相変わらず嫌悪感漂う目つきではあるものの、ただ睨みつけているだけで何も言おうとはしない。
 やがてそれからちょうど一分くらい経とうとしたとき、黙っていた三人の中で先に口を開いたのは霊夢であった。 
「…でもさぁ。その後に教えてくれた゛二つの理由゛の二つ目を聞いたら、怒るに怒れないじゃない?」
 彼女はそんな事を言って軽いため息をついてから、もう一度その口を開く。
「アンタが二つ目の理由だけ話してくれたら、私だって発散できないこの嫌悪感を抱かなかったんだけどねぇ」
 霊夢は未だ素直になれないルイズへ向けてそんな言葉を送りつつ、゛二つの理由゛の二つ目を思い出し始めた。


 ルイズが霊夢に新しい服をプレゼントした二つ目の理由。それは俗にいう『お礼』と呼ばれるモノである。
 まだ付き合って二ヶ月ちょっとではあるが、ルイズは春の使い魔召喚の儀式で呼び出した彼女には色々と助けられた。
 盗賊フーケのゴーレムに踏まれそうになった時や、アルビオンで裏切り者のワルドに殺されそうになった時。
 自分の力ではどうしようもなくなった瞬間、彼女はルイズの傍にやってきてその身を守ってきた。
 それが偶然に偶然を重ねた結果であっても、彼女は自分を助けてくれた霊夢にある程度感謝の気持ちがあったのである。
 いつも何処か素っ気なく部屋で一人のんびりと過ごしているそんな彼女に、ルイズはこれまでのお礼がしたかったのだ。
 

(ホント、素直じゃないんだから…)
 二つ目の理由を思い出し終えた霊夢はもう一度ため息をつくと、困ったような表情を浮かべた。 
 先程彼女が呟いた言葉の通り、一つ目の理由だけで服を貰っても嬉しくは無くただただ嫌なだけだ。
 単に他人の見栄だけで貰った服を着てしまえば自分は着せ替え人形と同じだと、彼女は思っていた。
 しかし二つ目の理由を聞いてしまった以上、ルイズから貰ったあの服を無下にする事はできなくなってしまう。
127 :ルイズと無重力巫女さん2012/07/31(火) 21:08:23.77 ID:5N/BdaDM
 彼女、博麗霊夢は幻想郷を守る博麗の巫女であり何事にも縛られない存在ではあるが、元を辿れば人間の少女である。
 誰かにお礼を言われれば嬉しくもなるし、服にも全く興味が無いというわけでもない。
 正直ルイズから服を貰えた事に喜んではいたが、それと同時に素直でない彼女に呆れてもいた。
 その呆れているワケは今朝、朝食の後に街へ行こうと誘ってきた時の口論にあった。
 
今思えばいつもと違って妙に食い下がっていたし、自分を街に連れて行こうとした際の言い訳もおかしかった。
 きっとこの事をサプライズプレゼントか何かにしたかったのだろう。そう思ったところで霊夢はまたもため息をつく。
(最初から下手な言い訳なんかしなくたっていいのに)
 彼女は心の中で呟きつつ、こちらの様子を伺うかのようにジッと見つめているルイズの方へ顔を向けた。
 先程の言葉の所為か均整のとれた顔は心なしか強張っており、鳶色の瞳にも緊張の色が伺える。
 恐らく何も言わない自分が怒っているのだと思っているのだろうか。
(別に怒ってなんかないわよ。失礼なやつね…)
 霊夢はまたも心の中でそんなことをぼやきつつ、ようやくその口を開けて自分の意思を伝えようとする。
 別に言い訳なんかしなくても良い。今までのお礼として服を貰える事は自分にとっても嬉しい事だから、と。
 「大体。下手な言い訳なんかしなくたって最初から…―――…って…――――あれ?」 


 その直後であった。゛異常゛が起きたのは―――――――――

 喋り始めてからすぐに彼女は気が付いた。そう、突如自分の身に起きた゛異常゛に。
 

 彼女は喋るのを途中で止めて、目の前にいた二人がどうしたと聞いてくる前に席を立つ。
 最初は気のせいかと思ったがすぐにその考えが自分の甘えだと気づき、頭を動かして周りの様子を見回す。

 今自分たちがいる店内で食事を取っている客たちの声。魔法人形たちの奏でる音楽。
 カウンター越しに平民の店主と仲良く話し合っている貴族の男と、窓越しに見える通りを行き交う大勢の人々。
 そして、不思議そうな表情を浮かべて霊夢に何かを話しかけているルイズと魔理沙の姿。
「…………?…………………」 
「………!…………?」
 二人とも口を動かしているもののその声は一切聞こえてこず、まるでカラーの無声映画を見ている様な気分に霊夢は陥りそうになる。
 それを何とか堪えつつ、腰を上げたその場で見える光景を一通り見る事の出来た彼女は瞬時に理解した。
 

 つい゛先程まで゛自分の耳に入ってきた音という音が、今や゛聞こえなくなってしまった゛という事に。
 まるでこのハルケギニアから音だけを綺麗に抜き取ったかのように、何も聞こえなくなってしまったのである。
128 :ルイズと無重力巫女さん2012/07/31(火) 21:11:11.62 ID:5N/BdaDM
これで前半分の投下終了。
残りの後半は明日に投下予定です

それでは皆さん、また明日。
130 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/01(水) 12:57:03.21 ID:oVpTxyDC
巫女さんの人乙です。
着物は古くなったらバラバラにして仕立て直せるのが強みだから、普通に服をもらうと戸惑いそうな気もするかも。
次はルイズが脇の空いた改造制服を、、、おっとだれかきたようだ
131 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/01(水) 17:01:50.72 ID:QcEaxZYU
やたら暑いんで涼しくなる使い魔を考えてみた。北野くん召喚の続きまだかなー
132 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/01(水) 17:43:53.42 ID:raBfjmr4
>>131
X−MENからアイスマン召喚が鉄板かと
134 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/01(水) 18:31:27.69 ID:tdUlV4VW
>>131
つ氷結界の龍 トリシューラ
つヴェルズ・ウロボロス
133 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/01(水) 17:54:57.38 ID:EzSFJbkz
雪男や雪女系のキャラ召喚しろってことか
135 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/01(水) 18:51:06.99 ID:OL50044n
>>133
ならばエロゲの「瑠璃色の雪」から雪女の瑠璃……が封印された壺を召喚とか
136 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/01(水) 19:37:08.54 ID:K19oat2D
世界樹の迷宮シリーズから氷嵐の支配者。
氷竜さんはロリっ娘からオネーサンキャラまで幅広い嗜好を持つから
ラノベ世界ではうまくやってゆけるだろうな。
137 :ルイズと無重力巫女さん2012/08/01(水) 20:35:06.02 ID:QXi6jFo4
どうも、昨日ぶりな無重力の人です。
予定通り、後半部分の投下を40分に開始します。
138 :ルイズと無重力巫女さん2012/08/01(水) 20:40:07.50 ID:QXi6jFo4
「一体何が?……あっ」 
 突拍子もなく音が聞こえなくなった事に僅かながら動揺した声を口から漏らした時、彼女は気が付いた。
 周りの音や他人の声は聞こえないが、自分の声だけはやけにハッキリと聞こえる事に。
 それに気づいた彼女は落ち着こうとするかのように軽い深呼吸をした後、赤みがかった黒い両目を鋭くさせてこの事態について考え始める。

 幻想郷での妖怪退治や異変解決、そしてスペルカードを用いた戦いにおいてもまず冷静にならなければ全てはうまくいかない。
 気持ちを落ち着かせれば今まで見えなかった解決策も瞬時に出てくるが、逆に焦ってしまえば相手に翻弄されて敗北を喫してしまう。
 それは戦いという行為をするにあたって初歩中の初歩とも言える事だが、霊夢はその『何時いかなる状況でもすぐに落ち着ける』という事に長けていた。
 自分の声意外が聞こえなくなったという異常事態におかれても、彼女は自分のペースを乱すことなく僅かな時間で落ち着くことができた。
 それを良く言えば博麗の巫女として優秀な証であり、悪く言えば酷いくらいにマイペースな証であった。

(紫の仕業?…イヤ、アイツならもっとストレートにきそうだけど)
 自分に話しかけてくる二人を無視しつつも霊夢は考え、一瞬あのスキマ妖怪のせいかと思ったがすぐにそれを否定する。
 もしも、自分に用があるのだとしたらまずこんな回りくどい事はせずに直接顔を出してくるだろう。
 確たる証拠は無いが、博麗の巫女としてあの妖怪と付き合い数多のちょっかいを掛けられてきた彼女にはそう言い切れる自信があった。

(アイツなら普通にスキマから顔を出したり、客に扮してコッチに話しかけてきそうね……―――…ん?)
 いつもニヤニヤしていて掴みどころのない知り合いの顔を思い浮かべた瞬間…。ふと左手の甲に違和感の様なモノを感じた。
 まるでほんわりと暖かい手拭いをそっと置かれたように、妙に暖かくなってきたのである。
 一体次は何なのかとそちらの方へ目を向けた瞬間、霊夢はその両目を見開いてまたも驚く羽目となった。
 
 召喚の儀式でルイズにつけられ、此度の異変解決の為に彼女がこの世界に居ざるを得ない原因を作り出した使い魔のルーン。

 この世界の神と呼ばれる始祖ブリミルの使い魔であり、ありとあらゆる武器と兵器を扱う程度の力を持ったというガンダールヴの証。
 
 そして、今のところたった一回だけしか反応しなかった左手のそれが、突如として光り出したのである。
 

「なっ…!?…これって…!」
 これには流石の霊夢も動揺と驚きを隠せず、目の前にいる二人もそれに気づいてか驚いた表情を浮かべている。
「………、……………?」
「…………ッ!?……、………!!!」
 魔理沙は初めて見るルーンの光に興味津々な眼差しを向け、霊夢に使い魔の契約を施した張本人であるルイズは突然の事に吃驚している。
 一方の霊夢もその目を見開いたまま、久しぶりに見たルーンの光を時が止まったかのようにジッと凝視していた。
 左手の甲に刻まれたルーンの光はそれ程強くもなく、例えれば風前の灯火とも言えるくらいに弱弱しい光り方をしている。
 しかしそれでも光っている事に変わりはなく、特にルイズと霊夢の二人は魔理沙よりも使い魔のルーンが光ったことに驚いていた。
 何せアルビオンで一回見たっきり全く反応しなかったソレが思い出したかのように輝き始めたのである、驚くなという方が無理に近い。 

(一体どういう事なの?今になって使い魔のルーンが光るなんて…)
 未だ驚愕の渦中にいるであろうルイズたちより一足先に幾分か冷静になっていく霊夢の脳裏に、とある考えが過る。
 
 まさか…自分以外の声が聞こえないというこの異常事態と何か繋がりがあるのではないか?
139 :ルイズと無重力巫女さん2012/08/01(水) 20:43:13.33 ID:QXi6jFo4

 突拍子もない仮説と言って切り捨てる事ができるその考えを、しかし彼女はすぐに破棄する事ができない。
(もし違うというのなら今の段階では証明できないし、―――あぁ〜…かといって今の状況とルーンが繋がってる証拠も無し、か…)
 一通りの頭の中で考えた末に結論が出なかった事に対し、思わず首を傾てしまう。
 霊夢にとって今の状況は充分に゛異常゛と呼べる代物ではあるが、その゛異常゛を解決するための糸口となるモノがわからないままでいた。
 そして光り続けているルーンは単に光っているだけなのか、今のところは何の力も感じられない。
(参ったわねぇ〜…。このまま耳が聞こえなかったら色々と不便になるじゃないの)
 常人ならとっくの昔に慌てふためいている様な状況ではあるが、そこは博麗霊夢。
 まるで傘を忘れて雨宿りしているような雰囲気でそう呟きつつ、ため息をつこうとする。


――――…


「……ん?」
 そんな時、彼女の耳に小さな『声』が入ってきた。
 まるで地上から十メートル程掘られた井戸の底から聞こえてくるようかのように、その『声』はあまりにも小さく何を言っているのかもわからない。
 普通の人間であるのならば、恐らくは空耳か幻聴だと思い込んで聞き逃してしまうだろう。
 しかし、この数分間他人の声を聞くことが出来ないでいた霊夢の耳はその『声』をしっかりと捉えることができた。
 
彼女は何処からか聞こえてきた『声』に辺りを見回すが、それらしい人物や物は一切見当たらない。
 もしかしたらとルイズたちの方へ目を向けるが、先程と同じく二人の声は全く聞こえてこない。
(何よさっきの声?…一体どこから聞こえてきたっていうの) 
 霊夢は心中で呟きながらも、大きなため息をつく。
 こうも立て続けにおかしい事が自分の身に降りかかってくるという事に、彼女は辟易しそうであった。
 しかしそんな事は後回しにしろ言わんばかりに、またもや正体不明の『声』が霊夢の耳゛にだけ゛入ってくる。
 

―――――…ム


(まただ、また聞こえてきた)
 先程よりも少しだけ大きくなった謎の『声』に、霊夢は無意識に首をかしげてしまう。
 恐らくこの『声』は彼女の耳だけにしか届いていないのだろう。ルイズと魔理沙の二人はキョトンとした表情を彼女に向けている。
 もし聞こえているのなら何からのリアクションを取るだろうし、取っていなければ聞こえていないという証拠だ。

 そして、霊夢がそんな事を考えている最中にも今の彼女に取り残された二人は何か話をしている。

140 :ルイズと無重力巫女さん2012/08/01(水) 20:46:10.02 ID:QXi6jFo4
「……?…………?」
 声が聞こえないので何を言っているかはわからないが、魔理沙は腰を上げた霊夢を指差しつつルイズに何かを聞いている。
 しかしその内容があまり良くなかったのか、ルイズは少し怒ったような表情を浮かべて黒白の魔法使いに詰め寄った。
「…!…………!」
「……?……………」
 そんなルイズに魔理沙は両手を突き出して止めつつ、笑顔を浮かべて嗜めようとしている。
(一体何を話してるのかしら?こうも聞こえないと無性に気になってくるわねぇ)
 魔理沙に指差された霊夢がそんな事を思っていた時…。


―――――…イム

 またもあの『声』が、耳に入ってくる。
 時間にすれば一秒にも満たないがある程度聞き取れるようになったソレを聞いて、霊夢はある事に気が付く。

 そう、周りの音や声が聞こえなくなった彼女の耳に入ってくる『声』は、女性の声であった。
 しかし…女性といっても今この状況で聞こえてくるであろう少女たちの声ではないし、この世界で出会ってきた人々や幻想郷の顔見知り達の声とも違う。

 自分の『記憶』が正しければ、この『声』は全く聞き覚えの無いものだ。

 謎の『声』に耳を澄ませていた霊夢がそう思った時、彼女はある『違和感』を感じる。
(……でも、おかしい)
 その『違和感』は先程左手の甲に感じた時とは違い、自身の『記憶』から感じ取ったものであった。
 
 それはまるで、九百枚ほどのピースがあるジグソーパズルのように繊細でとても小さな違和感。
 しかも額に飾られたそれは固定されていなかったのか、嵌っていたピースが何十枚か床に落ちて穴ぼこだらけのひどい状態を晒している。
 彼女はピースが嵌っていた穴の中から掴みだすかのように、その『違和感』を探り当てたのだ。
 
 周りの音が聞こえなくなり、突如光り出したルーンに続いて自分だけにしか聞こえない謎の『声』。
 ついさっき思ったように、この『声』に聞き覚えは無い。

 そう、無いはずなのだ。しかし…
 
(…何でだろう?この声。何処かで聞いたことがあるような無いような…)
 彼女はこの『声』に全く聞き覚えがないと、完全に肯定することができないでいた。
 本当に聞き覚えが無いのか、それとも記憶にないだけで一度だけ聞いたことがあるのか?
 怪訝な表情を浮かべ始めた霊夢は、周りの雑音と声が聞こえなくなった店の中で考え始める。 
142 :ルイズと無重力巫女さん2012/08/01(水) 20:52:21.96 ID:QXi6jFo4

「え―――――…あれ?」
 新たな思考の渦に自ら身を投げようとした時。俺も仲間に入れてくれよと言わんばかりに、あの『声』が霊夢の耳に飛び込んできた。
 最初に聞いたときはあまりにも小さく、誰の声で何を言っているのかもハッキリとわからなかったあの『声』。
 しかしそれまでのとは違い通算四度目となるそれはハッキリと聞き取れ、何を言っているのかわかった。
 同時に、この『声』に何故聞き覚えが無いと絶対に言い切れなかった原因も。
 それに気づいた彼女は、思わずその目を丸くしてしまう。
 
 何故、聞き覚えが無いと思っていたのだろうか?
 何故、自分の周りから聞こえてくるのだろうか? 

 そんな事を思ってしまうほど、彼女にとってこの声は身近なモノであった。
 いや、もはや身近という言葉では言い表せないだろう。何故なら、彼女だけに聞こえているその声は――――


―――――…レイム

博麗霊夢。つまりは自分自身の声だったのだ。


「私の――――…声?」
 その事実に気づいて呟いた瞬間。彼女の視界の端を『黒い何か』が横切っていく。
 まるで風に吹かれて揺らぐ笹の葉のようなそれは、美しい艶を持った黒髪であった。
 霊夢がその髪を見て咄嗟に後ろを振り向いた時、目を見開いて驚愕する。

 振り返った先には、一人の女性がいた。

 歩いて一メイルほどもない所にある出入り口の前で背中を見せている女性は、ポツンとその場に佇んでいた。
 先程霊夢が見た黒髪は腰に届くほどまでに伸ばしており、窓から入る陽の光で綺麗な光沢を放っている。
 少しだけ開かれた店内の窓から入る初夏の風でサラサラと揺れ動くその髪は、一本一本が正確に見えた。
 霊夢自身も黒髪ではあるが、あれ程美しい艶や光沢を放ったことは無い。
 もしも今の様な状況に陥っていなければ、何と珍しい黒髪かと思っていただろう。
 
 だが…。彼女はその事に対して驚いたのではない。
 席を離れて十歩ほど足を動かせば、身体がぶつかってしまうであろう距離にいる女性の服を見て、驚いたのである。


 血やトマトの色というよりも、何処かおめでたい雰囲気を感じる真紅の服とロングスカート。
 霊夢と魔理沙が本来いるべき世界で起こったという古代の合戦から生まれたと言われる紅白の片割れである紅色は、否応なく目立っている。
 足に履いた革茶のロングブーツは、見た目や歩きやすさだけではなく攻撃性すら要求しているようにも見受けられる。
 もしもあのブーツで力の限り踏まれたり蹴り技をくらうものならば、単なる怪我で済まないのは一目瞭然だ。
143 :ルイズと無重力巫女さん2012/08/01(水) 20:56:00.50 ID:QXi6jFo4

 だが、霊夢が驚いた原因の根本はそのどれ等でもない。
 彼女が女性の服を見て驚いた最大の原因は、真紅の服と別離した―――『白い袖』にあった。
 
 彼女が付けているそれよりも若干簡素なデザインをしつつも、常識的には珍しい白い袖。
 不思議な事に、まるで真冬の朝に見る雪原のように静かでありながら何処か儚い雰囲気が漂っている。
 いつの間にかその袖を食い入る様に見つめていた霊夢はその両目を力強く見開き、口を小さくポカンと開けている。
 もしもルイズや魔理沙にも女性の姿が見えていれば、嘲笑よりも先に霊夢と同じように驚くのは間違いないだろう。
 
 多少の差異はあれど、目の前にいる女性の姿は霊夢と同じく――゛博麗の巫女゛そのものであったのだから。
 そう、幻想郷でもたった一人しかいない結界の巫女と同じ姿をした者がいる事に。


「アンタ…誰なの?」
 気づけば、霊夢は無意識にそんな言葉を口走っていた。
 その言葉を向けた先にいるのは、彼女に背中を見せている黒髪の女性。
 真紅の服と白い袖をその身に着ける、自身と似たような姿をした謎の女性。
 
「アンタは、何なの?」
 彼女の言葉に女性は何も言わず、体を動かすことも無い。
 ただ店の出入り口の前に立ち、自らの後ろ姿をこれでもかと見せつけている。
 書き入れ時を過ぎたとはいえ営業妨害とも思えるその行為に、店の人間は何も言ってこない。
 いや、言ってこないのではない。気づいてすらいなかったのである。
 初めからいないと思っているように、霊夢以外の皆が彼女の存在を無視していた。
 振り返った霊夢の近くにいたルイズと魔理沙も同じなのか、キョトンとした表情を浮かべて出入り口を見つめている。
 その二人に気づかぬほど冷静さを失い始めていく霊夢は、またも呟いた。
 自分にしか見えていないであろう女性へ向けて無意識に口から出た、疑問の言葉を。

「アンタは―――――――…私?」

 言い終えた瞬間、霊夢の耳に再び『声』が入ってきた。 
 寸分たがわぬ彼女自身の声でたった一言だけ……こう呟いた。


 ――――…霊夢

 
 直後、出入り口の前にいた女性の体がパッと消えた。
 まるで最初からいなかったかのように、その存在そのものが消失したのである。  
 その様子を最後まで見ていた霊夢の脳内で唐突に、ある仮説が生まれた。

 
 もしかすると、自分の身に起きた異常事態を起こしたのは…彼女ではないのか?

145 :ルイズと無重力巫女さん2012/08/01(水) 21:01:08.43 ID:QXi6jFo4
 まるで槍か剣のように突き出したその手で突いたのは、脂肪と筋肉に包まれた分厚い皮膚で守られた額。
 そのような皮膚を持っているのは、ハルケギニアに住まう者たちから恐れられる亜人の一種であるオーク鬼だけだ。

 そう、ローブを羽織った者の手が突いたのは…襲いかかってきたオーク鬼の額であった。
 あと少しでオーク鬼に噛み付かれそうになった瞬間。垂直に突き上げた右手がオーク鬼の額を破って脳を突き、見事その息の根を止めたのである。
 しかしローブを羽織った者の後ろにいた衛士たち二人は、その瞬間を見ることができなかった。
 瞬きをした瞬間には、既にオーク鬼は今の様な状態になっていたのである。

 頭をやられて絶命した亜人の両腕はだらしなく地面へと下がり、ついで右手に持っていた棍棒が手から滑り落ちる。
 今まで多くの人間や同族たちを屠ってきた血だらけのソレは鈍い音を立てて地面を転がり、ローブを羽織った者の足元で止まった。
 肥え太った体はピクリとも動かず、力を失った両腕がフックで吊り下げられた肉のように揺れ動く。
 標準的な人間の五倍ほどもある体重を支える足からも力が抜けていき、今や地面に突っ立ているだけの肉塊と化していた。
 やがて頭を貫いたその手でオーク鬼が死んだことを感じ取ったのか、ローブを羽織った者は突き出していたをスッと後ろへ引き始める。
 突くときは目にも止まらぬ早業で突いたのにも関わらず、引き抜くときにはとてもゆっくりとした動作でその右手を引き抜いていく。
 しかしその光景は、まるで抜身の剣を鞘に納める時のようにとても滑らかで一種の美しささえ併せ持っていた。
 だがそれを全てぶち壊すかのように、骸となったオーク鬼が死してなお自らの存在をアピールしている。
 
 五秒ほどの時間をかけて右手をオーク鬼の頭から引き抜いた瞬間、亜人の体がゆっくりと右側に傾いていく。
 二人の衛士たちが未だ唖然とした表情を浮かべている中、オーク鬼の骸は大きな音を立てて地面に倒れこんだ
 そしてそれを見計らったかのように貫かれた額から血が流れ始め、むき出しの土が見える地面を真っ赤に染めていく。
 オーク鬼を殺したローブを羽織った者はその様子をじっと見つめていたが、その後ろにいる二人は別の方へと視線が向いていた。
 彼らの視線の先にあるのは、ローブを羽織った者の『右手』であった。

 その右手はオーク鬼の赤い血の色や黄色い脂の色でもなく、青白い光に包まれていた。
 まるで夜明けの空と同じ色の光で包まれたその右手は、驚くほどに綺麗だ。
 あの右手でオーク鬼の頭を貫いて仕留めたのにも関わらず、体液の様なモノは一切付着していないのである。
 一体自分たちの目の前にいるのは何だ?人間ではないのか?
 オーク鬼が現れた時も全く騒がなかった馬の上で、フランツの脳裏に数々の疑問が過ってゆく。

 どうして素手で亜人を殺せたのか。あの右手を包む光は何なのか。そもそもアレは人間なのか。
 
 答えようのない疑問ばかりが脳内に殺到する中、彼の後ろにいたアルベルトがポツリと呟いた。
「ば…化け物…。化け物だ…」
 彼の声が聞こえたのか。こちらに背中を向けていたローブを羽織った゛何か゛が、素早い動作で振り向いた。
 まるで彼の言った「化け物」という言葉に反応したかのように、それは早かった。
 近くにいたフランツはいきなり振り向いてきた事に驚いて馬上で体を揺らした瞬間、見た。

 
 頭から被ったフードの合間から見える、赤く輝くその両目を―――――――

146 :ルイズと無重力巫女さん2012/08/01(水) 21:06:39.00 ID:QXi6jFo4
これで前半と後半の投下分合わせて、合計17レスとなる57話は終わりです。
今回の話を機に、ストーリーが大きく動くことになります。

では今月はここら辺にまでして、また来月にお会いしましょう。
149 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/01(水) 22:22:10.31 ID:WZERjgWy
>>146
乙でした。
150 :The Legendary Dark Zero2012/08/02(木) 00:56:29.40 ID:/xqGrgkz
夜分、遅くに失礼します。1:00より続きを投下させていただきたいと思います。
153 :The Legendary Dark Zero2012/08/02(木) 01:04:59.34 ID:/xqGrgkz
「そう言うな、アニエス。彼女のおかげでミス・ヴァリエールは救われた」
スパーダは片腕でぐったりとしているルイズの体を抱えたまま、ティファニアの頭をヴェールの上から撫でてやった。
優しく撫でられていたティファニアは横目でちらりとスパーダの顔を見上げてみる。
先ほどまで冷徹な悪魔のような顔、深刻な苦い顔を浮かべていたのが嘘のように、僅かながらも笑みを綻ばせていた。
(良かった。……スパーダさんの役に立てて)
ティファニアはスパーダにこうして彼に触れてもらうことで彼の持つ父性をその身ではっきりと感じていた。

アニエスは事情はよく分からないが、スパーダがこうまで彼女に謝意を示していることから大方、このティファニアもメイジか何かなのだろうということで納得をしていた。
「……そうか。しかし、ヴァリエール殿も無茶をしたものだな」
このヴァリエールという少女はいかにメイジといっても実戦経験がほとんどなかったのだろう。だからあんな無茶を起こしてしまったのだ。
おまけにあんな挑発にまで乗ってしまって。
だが魔法学院の生徒であり、まだ子供である以上、あのような無謀な行動を取ってしまうのも致し方なかったかもしれない。
それをフォローするのが、自分達のような戦いの経験者なのだ。
「だが、お前もずいぶんと手傷を負わされたな」
言いながらスパーダは懐からバイタルスターを取り出しアニエスに投げ渡す。
「悪いな」
アニエスは渡されたバイタルスターを自分の胸に当てると、体中に負っていた傷を治していく。
再びルイズの体を両手で抱えたスパーダはもはや長居は無用と言わんばかりに歩き出し、ボロボロになってしまった悪魔の店を後にした。


酒場の外からチクトンネ街の通りへ出るとそこに現れたのは街を警備している巡邏達であった。
「アニエス! 何があったのだ?」
市民の誰かが通報したことで派遣されたようだが、スパーダ達と一緒にいるアニエスの姿を見るなり何事かと問いただしてきたのである。
どうやらアニエスとは顔見知りらしいので、彼女は任せろと言わんばかりに頷いて現場で起きた出来事を告げた。
最近、密かに発生していた怪事件とその調査、そして犯人である悪魔をスパーダと共に撃退したことなどありとあらゆる内容をだ。
話を聞かされた巡邏達は呆気に取られた様子でスパーダを見つめていた。
ついこの間、汚職で捕まったチュレンヌを叩きのめしたという話の異国の貴族が悪魔をも打ち倒してしまうとは……。
「今回もすまんな、スパーダ。礼を言う」
「気にすることはない、後は任せるぞ。行こう」
そう短く言葉を交わし、盟友の化身を預けた戦士と別れたスパーダは気を失ったままのルイズを抱えたままティファニアと共に通りを進んでいった。
気を失っているルイズを抱えているためか、道行く人達はちらちらとスパーダに怪訝な視線を向けてきていたが、それを無視する。

「その指輪はマジックアイテムだな」
「はい。これは母の形見なんです」
未だ騒ぎの燻りが続く街中をティファニアと並んで歩き、話しかけると即座に肯定していた。
愛おしそうに指輪を撫で、じっと見つめるティファニア。
ティファニアの母はエルフ。つまり、エルフの宝というわけだ。
「母は言っていました。?困っている人を見つけたら、助けてあげなさい?って。本当に助けることになるなんて、思ってもみなかったけど……」
ティファニアは目を細め、心底安心したような表情を浮かべた。
154 :The Legendary Dark Zero2012/08/02(木) 01:09:13.93 ID:/xqGrgkz
「スパーダさん達のお役に立てたなんて……嘘みたいです。わたしなんか、邪魔になるんじゃないかって思っていたのに」
もちろん、戦闘能力を持たないティファニアが戦いの場にいれば足手纏いになっていたのは間違いないだろう。
だが、それは彼女が救ったルイズにも同じことが言えたことだ。結果として手痛い目に遭ったのだから。
「君には君で、自分にできる役目というものがある。それを充分に果たした。それだけのことだ」
スパーダはティファニアとその指輪を見やった。
「ミス・ヴァリエールを救ってくれたことには心から感謝する」
「い、いえ。わたし、当たり前のことをしただけです。ただ、母の言い付けに従っただけで……」
恭しいスパーダからの謝辞にティファニアは慌てて謙遜する。
スパーダは素直にティファニアのとった行動には感服していた。
スパーダも他者に救いの手を差し伸べるがほとんどは戦いによって敵から守ることがほとんどだ。
ティファニアのように傷つき果ては命の灯火が尽きた人間を救うというのはさすがのスパーダとて至難の業である。
窮地に立たされた者に救いの手を差し伸べるのは当たり前のこと。たとえそれが戦いによるものでなくとも、この少女はそれを当然のこととして認識している。
そして、その心がけを彼女の母は娘に教えたのだ。
「……良い母親だったのだな。名は何と言う?」
「シャジャルと言います」
「シャジャル……か」
思えば何故、エルフがアルビオンにいたのかが分からない。エルフは砂漠の民であり、人間達の領土であるハルケギニアにはよほどのことが無ければ干渉などしないはずである。
だが何にせよ、そのシャジャルというエルフは人間と異種族間を越えた愛を育み、この少女に己の宝と意志を授けたのだ。
……だからこそ惜しまれる。そのような者が既にこの世にいないとは。
「ティファニア。母親からの教えは大切にしておけ。君には君でできる救いの術がある。……無論、無理はするな」
「は、はいっ。……その、スパーダさんもルイズさんも無茶はしないでくださいね」
逆にティファニアからもそのようなに心配され、スパーダは苦笑した。
自分はまだしもルイズにはこれからそれを伝えてやらねばなるまい。
「ルイズさんはこれからどうするんです?」
「一晩は休ませる」
トリスタニアへは学院の馬で来ている。このまま帰ってもいいが、やはり宿でルイズを休ませておいた方が良いだろう。
宿屋はどこでも構わないがせっかくだからスカロンの店にでも厄介になるとしよう。
ネヴァンの作った店が潰れた以上、再びチクトンネ街は活気を取り戻すことになるだろう。
「だが、その前に君を送ってやろう。夜の街は危険だからな。……何かあったら、君の姉に申し訳が立たん」
「……そういえば、さっきのあの女の人の悪魔ですけど」
姉代わりであるマチルダがスパーダのことを思っているのはティファニアも知っている。スパーダ自身はまるで興味がなさそうだったが、ティファニアも息を呑む
美貌を備えていたあの悪魔がスパーダに串刺しにされつつも妙に馴れ馴れしくしていたので、複雑な気分であった。
「スパーダさんとどういう関係なんですか?」
「ただの腐れ縁だ」
つまらなさそうに、そして疲れたような溜め息が吐き出されていた。
155 :The Legendary Dark Zero2012/08/02(木) 01:14:14.21 ID:/xqGrgkz
(……あ、れ……?)
一体、ここはどこなのだろう。確か、自分はスパーダやアニエスと共にあの淫乱な悪魔と戦っていたはずである。
バースト(炸裂)の魔法を悪魔に叩き込んでやろうとした途端、そこから突如として意識が吹き飛んでしまったのだ。
それからどうなったのか、自分が今どこにいるのかすら分からない。
……しかし、確かめようにも体が動かない。
いや、全く動かないのではなく体に力が入らないせいで思うように動かせないのだ。
手も、足も、腰も、華奢な体の全てが完全に萎えてしまっている。
まるで何十日も飲まず食わずで歩きに歩き続けたせいで、疲労が溜まってしまったような脱力感が体全体を支配している。
瞼が重いせいで上手く目を開けられない。薄っすらと僅かに目を開けようにも、すぐに閉じられてしまう。
(……ベッ、ドの……う、え……?)
かろうじて、自分がベッドの上で寝かされていることはその身に受ける感触で理解することができた。毛布もちゃんとかけられているようである。
魔法学院の寮のベッドと比べれば寝心地は良くなかったが。
ということは、ここはどこかの宿だろうか?
だが、どうして自分がそんな場所にいるのか分からない。そもそも、スパーダはどこに?

コンコン、と扉か何かを叩く音が聞こえた。
ルイズは精一杯の力を振り絞って首を動かし、音のした方を向こうとする。せめて、片目だけででも確認をしようと瞼を必死に上げ、目を開けようとした。
「ごめんなさぁい。お休みの所、失礼するわよん」
震えながらも首を動かし、薄っすらと目を開けると覚えのある気持ち悪い男の声を耳にした。
(ス、パー、ダ……)
ルイズの視界に微かに飛び込んできたのは、自分の横で椅子に腰掛けながら眠りについていたスパーダの姿だった。
かけがえのないパートナーが傍にいてくれたことに安心し、手を伸ばそうにももはやルイズにはこれ以上、体を動かす力は残っていなかった。
「ぁ……ぅ……」
彼の名を呼ぼうにも虫の息のように弱々しく漏れるだけで、どうしてもはっきりとした声が喉の奥から出てこない。
「無理はするな」
腰を上げたスパーダはその消え入りそうな声が聞こえていたのか、労わりの声をかけてくれた。
「……ス、パ……ダ……ま、て……」
そのまま背を向け扉の方へ向かっていくスパーダに、ルイズは必死に呼びかけようとした。だが、その弱った体ではまともな言葉を発することはできない。
「大人しくしてな、娘っ子。今、下手に動いてもどうにもなんねえぜ?」
視界には入らないが、デルフの諌める声が聞こえてきた。

「ルイズちゃんの具合はいかがかしら? 軽ぅ〜くだけど、朝ご飯をお持ちしてあげようと思うんだけど。もちろん、スパーダ君の分もね」
「そうだな。頼む」
現れたスカロンの提言にスパーダは即座に同意した。
昨晩、ティファニアを修道院へ送った後、この魅惑の妖精亭へとやってきたスパーダは部屋を一つ借りて運んできたルイズを寝かせていた。
いくら蘇生したとはいえ、肉体そのものは衰弱した状態であるため、ゆっくりと休ませてやる必要があったのだ。
バイタルスターで体力を回復させようにも、衰弱した状態から一気に正常に戻してしまっては反動に耐えられない恐れがある。
よってまずは一晩眠らせてある程度、自然に回復させた上でバイタルスターを使って正常にしてやるつもりだった。
157 :The Legendary Dark Zero2012/08/02(木) 01:22:38.25 ID:/xqGrgkz
「とにかく無事でなによりだ。……む」
「何しやがるんでぃ!」
突然、ルイズがデルフの篭手を掴んでスパーダに投げつけてきたのだ。
スパーダは左手を動かし、それを掴みとるとルイズの方を振り向いた。
彼女は不満を露にしたように顔を顰め、スパーダを睨みつけていた。
「何であたしを守らなかったのよ! あなたはあたしのパートナーでしょ!?」
突然癇癪を上げるルイズを、スパーダは素っ気なさそうに見つめる。
「スパーダ! パートナーを守るのが、あなたの役目でしょう!? それなのにあんな役立たずの平民に任せるだなんて!」
全てを聞かされたルイズは思い出した。
スパーダは悪魔の討伐をルイズには任せず、あのアニエスとかいう平民の女剣士に倒させようとしたのだ。
それがどうにも許せなかったのだ。パートナーではなく、平民の方を信頼するだなんて。
「パートナー一人も守れないだなんて、何が伝説の魔剣士よ!」
「おいおい、娘っ子。俺は相棒の中から昨日の戦いを拝見させてもらったんだがよ……いくら何でもありゃないぜ?」
テーブルの上に置かれたデルフが呆れたように呟いていた。
「何がよ!」
「あのアニエスとかいう女はな、確かに魔法は使えねぇ。だが、悪魔どもとの戦いはかなり場数を踏んでいることは確かだ。
だからお前さんと違って、正面からガチで戦ってもまず大丈夫ってわけよ」
「あたしだって! あんな悪魔くらい、正面からやったって!」
「そうやって死にかけたのはどこの誰だっけか?」
ぐっ、とルイズは言葉を詰まらせる。そして、スパーダを睨みつけた。

「スパーダがあたしを守らないからよ! パートナーはお互いに助け合って行動すべきなのに!」
「……はっきり言うがな。足を引っ張ってたのはお前さんだよ、娘っ子」
「な……!」
冷淡な声で答えたデルフにルイズは目を見開く。
「相棒は相棒でちゃんと考えがあったのに、お前さんはそれを無視して前に出てきて無謀なことをしちまった。
いくら相棒でも、そんなことする奴のフォローなんて難しいもんだぜ? 平民だからって経験者であることにゃ変わりねえ。それを無碍にしたら命がいくつあっても足りねえ」
「あたしは……あたしは……!」
自分は役立たずなんかじゃない。そう言い返そうとした時だった。
「もう良い。デルフ」
ようやく喋りだしたスパーダは空になった皿にスプーンを置いた。
ちらりと、ルイズの方へ視線を向けてきた。いつもと変わらぬ冷徹な瞳だった。
「結果的に私がミス・ヴァリエールの身を守れなかったことに変わりない。それについては詫びよう」
「スパーダ」
「だが、ミス・ヴァリエール。これだけは言っておきたい」
体ごと正面に向けてきたスパーダは両脚と腕を組んでいた。
158 :The Legendary Dark Zero2012/08/02(木) 01:29:10.52 ID:/xqGrgkz
「今の君が立つべき場所は、決して修羅場の中などではない」
「どういうこと?」
「つまりだな。今の娘っ子はまだ悪魔どもと戦うには経験も何もかもが不足してるってことだ。だから戦いの最前線に出る必要なんてないのさ」
デルフからの言葉に、ルイズは顔を伏せた。
前線に出ないということは、自ら敵とは戦わないことになる。それでは自分は役立たずに……。
「君は決して役立たずなどではない」
目を伏せ、スパーダは静かに言葉を続けた。
「君には君で、己の立つべき場所がある。アニエスにも、私にも、そしてティファニアにも、それがあるのだ」
「立つべき……場所?」
「私やアニエスは見た通り、敵を前に剣を振るうことが役目だ。ティファニアは戦う力こそないが、人の命を救うという役目を果たした。
そして君の今の役目は……私達のサポートだ」
スパーダは立ち上がり、立て掛けてあった閻魔刀を手に取り部屋を後にしようとする。
「それだけは自覚してもらいたい。己が立つべき場所を決して見失うな。……次に見失ったら、私では尻拭いをしきれん」
言い残し、スパーダは部屋から去っていった。
一人残されたルイズはぼんやりとしたまま、扉を見つめていた。
(あたしの……役目……)
「お前さんのその爆発の魔法はな。一見派手だが、せいぜい相手を吹き飛ばして怯ませるのが限界なんだよ」
テーブルに置きっぱなしにされたデルフがルイズに語りかけてきた。
「せいぜい倒せるのは土メイジの雑魚ゴーレムとか、ガーゴイルとかその程度だぜ? ましてや、あんな悪魔なんかこけおどしにしかならねえ。
どちらかっていうと敵を倒すよりゃあ、相棒が言ったように前線で戦う相棒をサポートする方に向いてるのさ。
六千年生きてきた俺からも言わせてもらうぜ。お前さんの立ち位置は敵に突っ込むことじゃねえ。
それは相棒に任せれば良い。今のお前さんは相棒の戦いをサポートして、相棒はサポートをするお前さんを守る。そいつを忘れるなって、相棒は言いたかったわけよ」
まるでスパーダの思いを代弁するデルフからの言葉にルイズは己の手を見つめた。
「それが分かったなら、さっさとその飯食っておきな」
デルフに促され、ルイズはぼんやりとしたままスプーンを再び手にし、細々とシチューを口にしていた。


「……しっかし、ルーンも封印されていて運が良かったよなぁ」
ぽつりと、誰にも聞こえない声でデルフは囁いた。
スパーダの左手に刻まれた?ガンダールヴ?のルーン。あれは今、スパーダの力によって封印されていわば仮死状態となっている。
本来、主人か使い魔のどちらかの命の灯火が消えた時、契約は途切れルーンも使い魔から消え去るという。
だが、スパーダに刻まれていたルーンは仮死状態であったがためにそのことに気が付かなかった。
故に、未だ彼の左手には刻まれたままだった。


※今回はこれでおしまいです。
作品内で一週間ずつイベントをこなしたので、次回からタルブ戦&大イベントに向けていきましょうか……。
159 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/02(木) 01:43:07.65 ID:ABjYF7AM
パパーダお疲れ様です!

ルーンを仮死状態にするとは…流石伝説の人や
160 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/02(木) 02:22:22.52 ID:CfNoltMw
パパーダさん乙

さぁ〜てルイズ君
調子に乗りすぎた悪い子は

しまっちゃおうねぇ〜
162 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/02(木) 19:51:34.03 ID:09KHe2TI
北斗の拳から海のリハクを召喚
トリステイン軍の軍師として働いてもらったら自力でトリステインは勝てるかな
278 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/05(日) 04:28:06.66 ID:gLwIgXd2
>>162
銀英伝のフォーク准将とどっちがマシか
164 :ウルトラ5番目の使い魔 94話 (1/11)2012/08/02(木) 19:58:03.14 ID:BAaRZXdH
 第九十四話
 アディール最終決戦! 最強怪獣を倒せ!! (前編)
 
 友好巨鳥 リドリアス
 古代暴獣 ゴルメデ
 高原竜 ヒドラ
 古代怪獣 ゴモラ
 古代怪獣 EXゴモラ 登場!
 
 
 誰が、こうなることを予想しただろうか。
 
「ウワァァッ!」
 
 誰が、あれほどまでに輝いた希望の光が、また闇に塗りつぶされると思っただろうか。
 
「ヌワァァァーッ!」
 
 二人のウルトラマン、エースとコスモスは今、絶対絶命のピンチの中にいた。
 壊滅させたはずの超獣軍団。しかし、ヤプールは超獣軍団よりもはるかに強い、一匹の怪獣をこの世に誕生させた。
 圧倒的なパワーは二人がかりで挑んだエースとコスモスを上回り、軽く体をよじっただけで跳ね飛ばされてしまう。
 鎧のような体は攻撃を一切受け付けず、渾身の力を込めて放ったパンチやキックもかすり傷すらつけられない。
 
〔なんという強さだ。まるで歯が立たない!〕
〔これはもう、ゴモラのレベルを超えている。ヤプールめ、なんというものを生み出してしまったんだ!〕
 
 コスモスのコロナモード、そしてエースの全力をも軽くいなしてしまう眼前の強敵。それは、ヤプールが膨大な怨念のパワーを
使い、ゴモラの遺伝子を元にして生み出した超怪獣。
 ゴモラの面影を強く残しつつも、全身が凶器であるかのような刺々しい様相。はるかに攻撃的に伸びた牙と爪、なによりも
瞳のない白目から発せられる眼光は、あまねく生物に狼を前にした子牛のような本能的な恐怖を植えつける。まさしく、
戦うためにのみ存在し、それ以外のものはすべて切り捨てた完全な戦闘生命の姿。そこから放たれる威圧感は、この怪獣が
身長四十メートル強と、ゴモラと変わらぬ標準的なサイズの怪獣であるにも関わらずに、これまでエースが戦ってきた
いかなる超獣をもしのぐ圧倒的な巨大さを誇っていた。
 腕の一振りで、石造りの建物が豆腐のように崩れる。体を動かすのに、抵抗などというものが存在しないかのような
絶対的な存在感。破壊を生み出すのではなく、それそのものが破壊である天災にも似た暴虐の行進。食い止めようとした
エースとコスモスをたやすく弾き飛ばし、軽く蹴り飛ばしただけなのに数百メートルを吹っ飛ばされる。
 いったいこれをゴモラと呼べるだろうか。生み出したヤプールでさえ、その圧倒的な威力に興奮していた。
 
「ファハハハ! これはすごい。まさか、ゴモラの遺伝子からこんな化け物を作り出せるとはな。さあて、これまでの恨みを
たっぷりと晴らさせてもらおうか。やれ! 最強のゴモラよ」
 
 有頂天となったヤプールの命ずるままに、異形のゴモラはエースとコスモスを痛めつける。ウルトラマンたちに倒された
怪獣や超獣の怨念は、再び実体と復讐の機会を与えられて荒れ狂い、どす黒い思念は破壊と暴力と恐怖の渦を作り出していった。
166 :ウルトラ5番目の使い魔 94話 (3/11)2012/08/02(木) 19:59:08.35 ID:BAaRZXdH
 絶望感が、精も根も使い果たした少年たちを覆い始め、黒い感情の波が人々に急速に拡大していく。
 このままではまずい! このままでは、ヤプールの思う壺だ。それだけはなんとしても防がなければと、ふたりのウルトラマンは
渾身の力を振り絞った。
「デヤァァーッ!」
 一瞬に、力を爆発させてふたりは脱出に成功した。ゴモラの爪が食い込んでいた箇所がひどく痛み、脱出にエネルギーを
大きく消耗してしまったが、とにもかくにも窮地は脱した。しかし、とどめの一歩手前でまんまと逃げられてしまったというのに
ゴモラは特に動揺した様子はなく、平然と喉を鳴らしている。
〔余裕……いや、こちらを嬲り殺す気か〕
 エースは、まるでヤプールが化身したかのように恐怖を撒き散らしながらゆっくりと歩いてくるゴモラを睨んでつぶやいた。
 
 ウルトラマン二人を同時に相手にして、この圧倒感……声だけはオリジナルと変わらないが、その強さは完全に別物と
呼んでよかった。これは単なる強化ゴモラや、改造ゴモラなどと呼んでいいレベルではあるまい。超獣化ゴモラ、もしくは
暗黒化ゴモラ……いや、それも違う。こいつは、ヤプールがゴモラの遺伝子から再現したゴモラのフェイクであるが、
それゆえにゴモラの真の姿の一形態ともいえる。
 ヤプールは最強のゴモラと呼んでいたが、これがゴモラの中に眠っていた潜在的な戦闘能力が解放された姿なら、
それは『ゴモラにあってゴモラにあらず』。ゴモラを超えた特別なゴモラ、英単語では特別なものを意味することを
《extra(エクストラ)》と呼ぶが、ゴモラextra、extraゴモラ……略して、EXゴモラとでも言うべきか。
 
 EXゴモラ……自分でひらめいておきながら、才人はその名前に不思議な神秘性を感じた。英字がたったふたつ
加えられただけなのだが、どこかに魔力のような魅力がある。昔から、言葉には言霊といい、特別な言葉には人の
感情に訴えかける魔力が宿るとされているが、科学的に実証できなくともなるほどと思わされた。
〔最強の超怪獣、EXゴモラか。へー、なかなかかっこいいじゃねえか!〕
 才人の心の中に幼稚園の頃から根付いてきた少年の心が、本能的に始めて見る怪獣に喜びの声をあげていた。
またも、状況をわきまえずに不謹慎だといってしまえばそれまでなのだが、これは本能なのだからしょうがない。ましてや、
相手はフェイクといってもあのゴモラなのだ。才人といっしょにスケッチブックに落書きをしたり、ソフビ人形で遊んだ
幼稚園や小学生時代の友達は多くいた。矛盾するようだが、ヒーローと並んで怪獣という存在は子供たちの心をがっちりと
掴んでいるものだ。
 そして、目の前のゴモラはそんな中でも、元々のゴモラを書き写すだけでは飽き足らずに、「ゴモラがこんなふうだったら
最強じゃないか?」と、角を付け足したりトゲをつけたりして友達とわいわい言いながら落書きした、心の中の「スーパーゴモラ」
そのものではないか。このうれしさは、そんな子供の日の夢が形はともかく実現したからかもしれない。
 
 だが、そんな感慨とは別に、このEXゴモラの正体はヤプールがゴモラに似せて作った邪悪なフェイクなのだ。本来のゴモラは、
当人の意思はともかくとして、才人をはじめとする子供たちの胸にワクワクした思い出とともにある。その思い出を汚させない
ためにも、こいつはなんとしても倒さなければならない。
168 :ウルトラ5番目の使い魔 94話 (5/11)2012/08/02(木) 20:00:12.83 ID:BAaRZXdH
 しかし、悪の威力は強大で残酷だ。まだ揺るがない二人のウルトラマンの闘志に呼応したように、猛烈な勢いで突進してくる
EXゴモラ。それをエースとコスモスは二人がかりで受け止めた!
「ヌォォォォッ!」
「ファァァッ!」
 小惑星を受け止めるにも匹敵する衝撃が二人のウルトラマンを襲う。足元の石畳の道が紙ふぶきのようにはがれて舞い散り、
それでもEXゴモラは止まらない。今まで二人のウルトラマンが戦った、いかなる怪獣とも違うケタ違いのパワーは、やはり
どうあがいても止められないのか!?
 抵抗むなしく、EXゴモラの頭の一振りでエースとコスモスは軽く吹っ飛ばされてしまった。数件の建物を巻き添えにして
地面に叩きつけられて粉塵が舞う。やはり、とてつもなく強い……だが、遠く弾き飛ばされてしまったことは幸いとも言えた。
ゴモラには飛び道具はない! 今なら攻撃を受ける恐れはない。
 今だ! 真っ向からの肉弾戦ではかなわないなら、光線技で一気に勝負を決める。エネルギーの出し惜しみなどをしていて
どうこうなる相手ではない。エースとコスモスは、最大出力の必殺光線を同時に放った!
 
『メタリウム光線!』
『ネイバスター光線!』
 
 アントラーとアリブンタにとどめを刺した光の矢がEXゴモラに炸裂した。進化してもバリアーを張る能力などはなかったようで、
二人の光線はまともに直撃し、並の怪獣なら破片も残さず木っ端微塵にしてしまうほどのパワーが飲み込まれていく。
 だが、光の奔流は、そのエネルギーを求められた対象に届けることはできていなかった。加減などはまったくなしで、
全力で放たれたはずの光線は、まるで雨が傘ではじかれているかのようにゴモラの皮膚で拡散し、撃ち切ったときにも
傷ひとつない無事な姿を保っていたのだ。
〔俺たちの合体光線でも無傷だっていうのか! バケモノめっ!〕
 恐ろしいまでの耐久力にエースは舌を巻いた。まるで、以前戦った強化ドラコの生体反射外骨格のようだ。いや、あれも
すごかったが、EXゴモラのそれはドラコのそれを確実に上回っている。しかも、あのときは才人の捨て身の攻撃で装甲に
亀裂を作ってやったから突破口が見つかったが、EXゴモラには死角はない。
169 :ウルトラ5番目の使い魔 94話 (6/11)2012/08/02(木) 20:00:45.17 ID:BAaRZXdH
 大量のエネルギーを消費し、がくりとエースとコスモスはひざをついた。カラータイマーの点滅も始まり、体から力が抜けていく。
まずい、今の一撃に、勝負を賭けるつもりであっただけに、余剰エネルギーの大半を使い尽くしてしまった。もう、光線技は
撃てて数発が限界、それもウルトラギロチンのような大技は使えない。
 EXゴモラは完全に無傷で、痛くもかゆくもないといわんばかりに余裕で喉を鳴らしている。
 しかし、あきらめるわけにはいかない。何度失敗しても、どれだけ無様でも立って戦う。それが、ウルトラマンの義務なのだ。
 勝負は、まだこれからだ! 希望をつなごうと、エースとコスモスは気力を奮い立たせた。
 そういえば……この戦いが始まってから、もう何回倒されて立ち上がっただろうか。五回か六回か、もう正確に思い返せないほど
繰り返してきたが、あと何回でも起き上がってやろう! 俺たちは、ウルトラマンなのだから。
 だが、暴風雨が数年をかけてやっと高く伸びた若木を無情にへし折ってしまうように、力の差はさらに残酷に敗北への
一本道を指し示してきた。
 
「ウワァァーッ!?」
 
 突然、なんの前触れもなくエースが垂直に跳ね飛ばされた。一瞬にして百メートル近くを打ち上げられ、そのまま受け身を
とることもできずに地面に叩きつけられる。
 なんだ! 今のは? ゴモラの攻撃なのか!? しかし、攻撃の形跡なんかなかったぞ。
 事態を飲み込めずに立ち尽くすコスモスに、今度は明確な形で攻撃が襲い掛かった。コスモスの足元の地面が突如
はじけたかと思うと、地中から槍のようなものが飛び出してきてコスモスの胸を打ち、その身を大きく跳ね飛ばしたのだ。
〔なんだっ! 今のは〕
 地中からの突然の奇襲は、コスモスといえども避ける暇もなかった。エースと同じく地面に叩きつけられ、苦しそうな声が
漏れ聞こえる。だが今はそれよりも、あの攻撃がなんだったのかを突き止めることが先だ。EXゴモラとの距離は、たっぷりと
三百メートルはあり、光線でも使わなければとても攻撃が届く距離ではない。
〔まさか、もう一体怪獣が!?〕
 ルイズは、地底に別の怪獣がいて、そいつが不意打ちを仕掛けてきたのではと推測した。確かに客観的に見れば、
それが一番率直で確実性の高い答えだ。だが、正解は違っていた。目に見えない地中から、三回目の奇襲をかけて
こようとする謎の敵の存在を、わずかな振動で察知したコスモスは、狙われているのがエースだと知るととっさに突き飛ばした。
「フアッ!」
 間一髪、エースはコスモスの機転のおかげで串刺しにされるのを免れた。そして、空振りして空に向かって伸び、
すぐさま土中に引っ込んでいったそれの形を、確かに見た。
〔今のは、ゴモラの尻尾!?〕
 信じられないが間違いはなかった。慌てて振り返ってみると、EXゴモラはこちらを凝視しながらもその場から動かずにいた。
そして、さらによく観察してみると、EXゴモラの尻尾が土中に潜り込んでいた。本当に信じられないが、EXゴモラはこの距離から
土中から尻尾を伸ばして攻撃してきたらしい。尻尾を伸ばして!?
170 :ウルトラ5番目の使い魔 94話 (7/11)2012/08/02(木) 20:01:17.93 ID:BAaRZXdH
〔まずい、動くんだ!〕
 コスモスの声にエースもはっとして飛びのいた。エースのいた場所の土中から、槍のような尻尾が飛び出して襲ってくる。
コスモスも同様で、EXゴモラの尻尾は一瞬で出現と退避を繰り返して、神出鬼没に地中からの攻撃を続けてくる。これでは
まるでモグラ叩きの逆だ。
 いけない、このままでは一方的に攻撃を受け続けてしまう。EXゴモラ相手には距離をとって戦う作戦は通じないのか!
 危険なことに変わりはないが、一方的に叩かれ続けるよりはましだと判断したエースとコスモスは、距離を詰めようと
EXゴモラへ向けて走り出した。するとEXゴモラも土中からの攻撃をやめて、尻尾を引き上げると、今度はサソリが毒針で
威嚇体制をとるときのように持ち上げてきた。
 来るか! その瞬間、EXゴモラはゴモラから受け継いだ必殺武器をついに白昼にさらした。鋼鉄の槍のように太く
鋭い尾の先がウルトラマンAを狙ったかと思ったとき、尾全体がまるでゴムで出来ているかのように伸びて襲いかかってきた。
「ヘヤァ!」
 間一髪、かわしたエースのすぐ後ろで道路がえぐられて、地割れのような巨大な裂け目ができた。
 危なかった。ゴモラの尾が伸びるかもと事前にかんぐっていなかったら直撃を食らっていた。いや、この破壊力……
まともに食らっていたら、土中を進んできたときとは違う勢いに、一気に胴を貫かれてもずのはやにえのように
されていたかもしれないと思うと、血が凍りつくような思いさえした。
 だが、これで間違いない。EX化したゴモラは、最大の武器である尻尾を振り回すだけでなく、自在に長さを操って
伸縮自在の槍のように使うことができる。しかも、必殺の威力をもかねそなえた強力無比なテールスピアーとして!
 槍衾のように繰り出されてくるテールスピアーの連撃を、エースとコスモスは紙一重でかわしながらEXゴモラに接近し、
全力の一撃をそれぞれ放った。超獣ドラゴリーの胴体を貫いたエースパンチと、巨大ロボット兵器のボディすら揺るがす
コスモスのサンメラリーパンチが同時に放たれてEXゴモラのボディがぐらりと揺れた。
”効いたのか!?”
 が、淡い希望は一瞬で消え去った。EXゴモラの鎧のような皮膚は二人のウルトラマンの同時攻撃をものともせず、
白目がむかれたと同時に尻尾がなぎ払うように振られ、エースとコスモスはまとめて吹っ飛ばされてしまった。
「ウワァァッ!」
 だめか……打撃でも光線でも、戦いが始まってから一度もダメージらしいダメージを与えられていない。攻撃力、防御力ともに
ケタ違いでつけいる隙がどこにもない。どうすればいい……どうすれば。時間と共に打てる手は減っていき、エネルギーは
確実に減っていく。このまま打開策がなければ、確実に負けてしまう。
172 :ウルトラ5番目の使い魔 94話 (9/11)2012/08/02(木) 20:02:25.29 ID:BAaRZXdH
 まずい! 今あんなものを食らったら。しかし、避けようにも、背後にはまだ避難できていない大勢の市民がいる。
 避けられない! 来る!
 その瞬間、超極大化された超振動波、『EX超振動波』がエースとコスモスを目掛けて放たれた!
 
「くっ! コスモス!」
「ああ、我々の全エネルギーをこれに込めるんだ!」
 
 この一撃をまともに食らったら、たとえウルトラマンといえどもあとかたもなく消滅する。かといって、避けたら後ろにいる
数千のエルフたちが代わりに殺されてしまう。選択は、するまでもない! エースとコスモスは体に残った全エネルギーを
使って、渾身のバリアーを作って迎え撃った。
 
『サークルバリヤー!』
『サンライト・バリア!』
 
 光の鏡と金色の光の壁がEX超振動波を受け止めて、激しく火花を散らした。しかし、圧倒的勢いを誇るEX超振動波の
圧迫力は、ふたり同時に張ったバリアの防御力をも超えて押し切ろうと迫ってきた。
〔とんでもない威力だ! 抑え切れんっ! くそっ〕
 ダブルバリアの壁を超えて、超振動波のエネルギーが押してくる。バリアにもろくもひびが入り、漏れ出てきたエネルギーが
エースとコスモスの体を焼き始めた。だめだ、あと数秒も持たない! だがそのときルイズと才人が、己の生命エネルギーを
エースに託した。
〔サイト、いいわね!〕
〔ああ、おれたちの命、ここで使ってくれ!〕
 ふたりとも迷いはなかった。二人の精神体から一気に力が抜けていき、実体だったら立ち上がることさえできないほどの
疲労感と鈍痛が二人を包む。それは二人にとって、本当に命を失うかどうかというギリギリでの付与だった。エースが事前に
二人がやろうとしていることを知ったら、なにを置いても止めたであろうほど危険な賭けであったが、二人ともそれでもいいと
思っていた。
 エースが、みんなが命を賭けて戦っている。なのに、自分たちだけリスクを避けようとは思えない。
 二人ともバカだ。年相応のこともできない大バカ者だ。しかし、二人の命そのものといえる生命エネルギーを得たエースは、
寸前のところで力を盛り返した。
〔エース、あとは、頼んだ、ぜ〕
〔二人とも、この戦いが終わったら説教だぞ! くっ、うぉぉぉーっ!〕
 バリアに全身全霊のパワーを注ぎ込み、エースは持ち直した。コスモスのぶんも合わせ、EX超振動波がはじき返されていく。
 そして、カラータイマーの点滅も限界に達し、もうこれまでかと思った瞬間、ついにEXゴモラも力尽きて超振動波の波がやんだ。
173 :ウルトラ5番目の使い魔 94話 (10/11)2012/08/02(木) 20:02:59.24 ID:BAaRZXdH
「やった、か……」 
 バリアを解除し、エースとコスモスはひざをついた。恐ろしいパワーだった。もしエースかコスモスかどちらかひとり、さらに
才人とルイズの暴挙がなければ、この世に一辺の痕跡すら残さずに消し去られていたところだった。
 どこまでも恐ろしい怪獣、恐るべしはヤプールと暗黒の底力。EXゴモラはいまだかすり傷ひとつなく、白目に怒りを込めて
吼え猛っている。
 
 しかし、あきらめることだけはできない。あきらめたら、それですべてが終わる。
「コスモス、立てるか?」
「もちろんだ。さあ、勝負はこれからだ」
 励ましあい、エースとコスモスは再び立ち上がった。
 まだ、戦える。まだ、負けたわけではない。しかし、その意志を込めた勇姿に、勝ち誇るヤプールは冷笑を送った。
「フハハハ、これだけの実力差を見せ付けられて、まだ立ち向かおうというのか。より絶望が深くなるだけだというのに、
まったくお前たちのあきらめの悪さは見苦しいことこの上ない。何度立ち上がろうと無駄だ。このゴモラには、絶対に勝てん!」
 破壊と殺戮の喜びに狂奔するヤプールの声は、明らかに勝利を確信していた。それだけではない、その負の感情を
込めた声によって、人々の恐怖心をあおろうとしているのは明白であった。ヤプールらしい、陰湿で陰険なやり口は昔から
少しも変わるところはない。
 凶暴な雄たけびをあげる無傷のEXゴモラと、満身創痍のウルトラマン。誰がどう見ても、どちらが勝者かというのは
一目瞭然の光景であろう。奇跡を望むにしても、超獣軍団を倒し、いまやこの超怪獣を相手にほとんどのエネルギーを
使い切ってしまった今となっては、どんな奇跡が起こせるというのだろう。
 だが、勝ち誇るヤプールに対して、エースは毅然として言い放った。
「ヤプール、絶対に勝てないとは大した自信家ぶりだが、あまり調子に乗ったことばかり言っていると、後で後悔することになるぞ」
「フッハハハ! とうとう負け惜しみか。ウルトラマンAも堕ちたものだなぁ!」
「負け惜しみか、貴様にはそう聞こえるのだろうな。だが、戦いの決着とは終わってみないとわからないものだ。貴様は
まだ勝者ではない。知っているか? 地球人の童話では、油断したウサギが努力し続けたカメに負けるんだ」
「貴様ぁ! このわしを侮辱するか! 死にぞこないの分際で、あと一発殴られた程度で死ぬほど弱りきった貴様らに
いったいなにができるというのだ! おとなしく絶望しろ! そうすればせめて楽にあの世に送ってやる!」
 ヤプールの恫喝に、しかしエースはコスモスとともに首を振った。
「それは聞けないな。俺たちは、どんなことがあっても邪悪な暴力には屈しない。俺たちを信じて、力を託してくれた
仲間たちのためにも、決してあきらめはしない」
「そう、それに我々は負けはしない。お前のように、破壊にのみしか価値を見出せない者には、我々を支える大きな力の
意味はわからないだろう。それがある限り、我々に敗北はない」
 エースとコスモス、光の戦士の揺るがぬ意志の前にはヤプールの狂声などは無価値だった。
 激怒したヤプールは、もはや嬲り殺すのはかなぐり捨ててEXゴモラにとどめを命じた。
 
「やれぇ! もはやウルトラマンどもに抵抗するだけのエネルギーは残っていない。そいつらを叩き潰し、すべての愚か者どもに
絶望を思い知らせるのだぁぁーっ!」
 
 雄たけびをあげ、EXゴモラはエースとコスモスに向かった。
 もはや、二人のウルトラマンにはヤプールの言うとおり、一発の光線を撃つ力も、殴りあう体力も残されてはいない。
174 :ウルトラ5番目の使い魔 94話 (11/11)2012/08/02(木) 20:03:40.15 ID:BAaRZXdH
 ただ、立つだけで精一杯。抵抗する力などはほぼ皆無、殴られればカカシのように叩きつけられる運命しかない。
 逃れる力もなく、立って待ち構えるウルトラマン。もうだめなのか、希望は絶望に塗りつぶされてしまうのか。
 人間たち、エルフたちの眼前に、破滅の未来が刻々と迫る。
 
 だが、彼らはその光景を目にすることなく、奇跡をまぶたに焼き付けた。
 突進するEXゴモラの横合いから割り込んで激突し、猛烈なパワーで吹っ飛ばした土色の弾丸。
 吹っ飛ばされて、体勢を立て直そうともがいているEXゴモラを太い尻尾の一撃で再度跳ね飛ばす、荒々しい巨竜。
 そして、天空から舞い降りて、起き上がろうとするEXゴモラを蹴り飛ばす巨鳥。それに続いて、口から吐く光弾の雨で
EXゴモラを爆発の中に包み込む青い鳥。
 
「あっ、あれは!」
「怪獣たち……コスモスに救われた怪獣たちが!」
 
 人々は、口々に指差し歓声をあげた。
 ゴモラ、ゴルメデ、ヒドラ、リドリアスが蘇り、EXゴモラに立ち向かっていっていた。
 咆哮をあげ、突撃していくゴモラとゴルメデ。それを空から援護するヒドラとリドリアス。EXゴモラは思わぬ乱入者に
とっさに対応できず、ヤプールは目障りな奴らめと怒り狂う。
「なぜだ、なぜあと一歩のところで邪魔が入る! ええい、どけぇぇ! どかんかぁーっ!」
 ヤプールは、憎みても余りあるウルトラマンの最期を邪魔されたことで怒りの極致であった。それでも、邪悪な頭脳を
フル回転させて、誤算の原因を探ろうとする。なぜ、どうして完璧にエースを葬り去れるはずだった計画がこうも狂う? 
本来ならば、超獣軍団だけでエースは十分抹殺できるはずだったのに、なぜこうも想定外のことが連発するのだ?
 考えても考えても、ヤプールの思考は教科書の文字列を反復するだけの三流教師の思考のように、ゴールのない
環状路線を走り続けた。わからない……奇跡などというものはあるはずが、なにがウルトラマンどもに味方しているのだ。
 しかし、ヤプールには永遠にわからないことだとしても、エースたちにはわかっていた。
 
”ヤプールよ。お前にとってとるにたりない者でも、捨て駒として切り捨てた者たちにも、皆にこの星を守ろうとする
強い意志があるのだ。お前の眼中には我々しか映っていなくとも、お前が戦っているのは、この星の生命全てだ。
お前の思う通りには決してならない。怪獣たちも、この星を愛する仲間なのだから!”
 
 
 続く
175 :ウルトラ5番目の使い魔 あとがき2012/08/02(木) 20:04:28.24 ID:BAaRZXdH
今週は以上です。
第二部最終決戦、EXゴモラとのバトル、お楽しみいただけたでしょうか。
この話はメビウス直後で大怪獣バトル以前の時系列設定ですので、レイオニクスやEX怪獣は出せないものなのですが、
なんとか変則的にでも登場させられないものかと思ってやってみた次第です。なお、一応追記しておきますと、このEXゴモラは
あくまでゴモラの遺伝情報から複製されたフェイクで、レイのゴモラとは完全に無関係です。
 
では次回はいよいよクライマックスです。第二部の集大成、お待ちくださいませ!


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以上、代理終了
176 :名無しさん@お腹いっぱい2012/08/02(木) 23:18:02.39 ID:z9HXbdkr
「攻殻機動隊S.A.C 2ndGIG」終了後の少佐とタバサのクロスを
やろうかとも思ったが???だめだ、続く気がせん。
184 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 00:29:16.36 ID:ZFsubZXu
>>176 ワクテカしながら待ってていいですか 待ってます
178 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/02(木) 23:42:54.62 ID:z9HXbdkr
そう、そんな感じのやつ。
ssなんかちょっとしか書いたことない俺に出来るかどうか不安でね。
180 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/02(木) 23:56:18.39 ID:ABjYF7AM
ウルトラの人、代理の人お疲れ様です

ウルトラマン見たくなったわ。ちょっと借りてこよう
181 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 00:00:42.22 ID:z9HXbdkr
そんでルイズにはタチコマを当てて...
ルイズの命令ガン無視で「少佐〜援護に来ました〜♪」みたいな...いけるかな?
185 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 00:34:14.71 ID:t0pYjA1Z
?? 分かりました。どこまでやっていけるかかなり不安ですが
やってみようと思います。話を考えるで時間を下さい。
186 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 00:35:56.78 ID:reXlxq2q
書くにしてもまずはプロットなりを作って話の計画立てておかんと、すぐエタるよ。
188 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 12:34:38.41 ID:RvLIekjL
ロボットとかサイボーグみたいな近未来キャラ達を中世ゼロ魔とXさせるなんてむちゃくちゃハードル高いけどまぁ頑張れ


ワルド「な、なぜ遍在が分かった!?」
素子「本体は貴方だと。そう囁くのよ……私のゴーストが」
こんなイメージですかね?期待しとく
189 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 12:53:51.55 ID:BDTpyWGq
ギーシュ戦でワルキューレを素手で粉砕して
向こうの世界でもメスゴリラ呼ばわりされる素子さん
191 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 16:42:02.55 ID:4EWOCCho
>>189
世界観的にオーク鬼とかじゃね
198 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 20:41:30.91 ID:d1ZjRGoK
>>191
よせよ半生アイアンゴーレムとか変なニックネームつけたら金玉もがれるぞw
190 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 14:57:17.23 ID:6sD11VCE
EXゴモラはレイブラット星人が憑依したアーマードダークネスをさえフルボッコにしたバケモノ
まともにやりあえばウルトラ兄弟総がかりでさえ勝てるか怪しいこいつにはてさてどう挑むのかな
192 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 16:43:50.18 ID:ZFsubZXu
ゴリラ存在するんかな?
203 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 21:27:25.03 ID:0WXuReSI
>>192
いたとして赤道付近だから知名度はなさそう
193 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 18:01:54.19 ID:jU5tS0YJ
地球と同じ生態系に幻獣等のファンタジー系生物を加えた感じ?
194 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 18:17:18.42 ID:0zMliMNz
そんな生態系で人類が地球同様に繁栄してるのがすごい
文明ができる前に他の亜人種によく滅ぼされなかったもんだ
196 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 18:49:10.43 ID:lZ2Hxcgd
>>194
平民だけなら原作よりもずっと狭い地域でしか生きられなかったかもね
197 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 20:23:23.68 ID:9ebqVBcz
>>196
飼いならせる竜と幻獣以外は絶滅させてるかもしれない
199 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 20:49:59.37 ID:RvLIekjL
いくら少佐がゴリラでも金属の塊を素手で殴るような浅はかなまねしないだろ
メンテ受けられるわけじゃないんだし
201 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 21:04:10.90 ID:TMcT+jPs
>>199
少佐だったらギーシュ戦は華麗にさけつつも、痛い目にはあわせられるっしょ。
お姉さん口調で論破されて再起不能になるギーシュ。
225 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 02:07:56.53 ID:peCYb8vu
>>199
メンテ問題はやはり避けて通れない問題だな
ましてや攻殻はその辺結構タイトだし
228 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 07:19:56.87 ID:AUGyzog0
>>225サイボーグ系は避けて通れない道だよな
しかしそれさえクリア出来るんなら少佐の話スゲー面白くなりそう
256 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 18:53:15.94 ID:FHQ6Wsau
>>225
義体のメンテ問題については「固定化」と「硬化」で補おうと考えてます。
損傷を受けた場合は「錬金」でどうにかなるかと。
200 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 21:03:53.88 ID:GgJD3H7P
サモンナイトが復活したしサモナイクロスとか来ないかなぁ
サモナイクロスは全部序盤でエタってしまってるし……
202 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 21:18:23.68 ID:FfAmM3y1
そして作者も再起不能になるってオチか
204 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 21:31:13.28 ID:t0pYjA1Z
>>202
いま攻殻を観ながらアイデア考えてるが不吉なこと言わんでくれw
少佐の主人を誰にするかな
今のとこタバサ&ルイズの二択になってるんだが
205 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 21:40:50.99 ID:IW5UE+mh
そんな根本的な事から他人のアイデアを求めるようじゃマジで再起不能になるぞ
206 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 21:45:33.97 ID:t0pYjA1Z
>>205の言うとおりだな・・・ありがとう、お陰で目が覚めたわ
207 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/03(金) 22:55:31.22 ID:0zMliMNz
いきなり長編なんか書いても持たんと思うが
初めは小ネタくらいで自分の力量を計ったほうがいい
209 :使い魔は妖魔か或いは人間か2012/08/03(金) 23:21:19.26 ID:D7RmsMdv
第13話『擦れ違い』

人の心は一度壊れると元に戻すのは不可能だ。
その事をルイズは、同年代の誰よりも良く知っている。
夢の中で見たアセルスの姿は共感を覚えると同時に、心に突き刺さった……


針の城を抜け出したアセルスは片田舎にいた。
どこに向かうか尋ねる白薔薇に、アセルスはシップの発着場へ向かう。

ルイズにはシップやリージョンは分からない。
風石で飛ぶ船と似たようなものなのだろうと自分の想像を置き換えていた。

アセルス達が着いたのは、オウミと呼ばれた湖のある街。
河川に花びらが浮かんでいるのを見て、アセルスが足を止める。

「花びらが……」
ルイズも花びらに目を向けると、違和感に気付く。
波に揺られているようにも見えるが、花びらが時々波に逆らって動いているのだ。

「花文字ですわ……水妖が仲間を探しているようです」
尋ねるアセルスに、白薔薇が水妖について説明する。
水の中で暮らす下級妖魔で、人前には滅多に姿を現さない種族らしい。

「仲間が行方知れずか、かわいそうに」
この時、アセルスはまだ自分がその水妖に出会うとは思ってもいなかった。

アセルスが水妖と出会う切っ掛けとなったのは町で話されていた噂。
オウミの領主が傷ついた水妖を手当てしていると町の人から聞き、館に向かう。

領主の男に尋ねると、激昂してアセルス達を追い出そうとする。
だが二人が水妖に関して手がかりを持っていると分かると、力なく項垂れた。

「私はどうしたらいいんだ。
早く湖に戻したほうがいいのは分かっている。でも、私は……私は……」

話をする為に水妖がいる客室へと案内されるアセルスと白薔薇。
水妖は口を閉ざしたままで、領主とも一度も会話すらしていないと言う。

席を外すよう白薔薇が願うと、領主は渋々頷いた。
領主が出て行った後に、水妖がアセルスに問いかける。

「高貴な妖魔の匂いがする……人間なのになぜ?」
水妖の疑問にアセルスの表情が曇る。

「気に障ることを言ってしまいましたか?」
「いいや、君は本当のことを言っただけさ。
私は半分人間、半分妖魔という、この世でたった一人の中途半端な存在」
アセルスは水妖の気遣いを否定して、自嘲気味に告げる。

「御名前を御教えください、高貴な方」
「アセルス」
「アセルス様……気高い響き……」
アセルスが名乗ると、水妖の頬が上気する。

「アセルス様は、オルロワージュ様の血を頂いたのよ」
「妖魔の君オルロワージュ様!?御許しください、御無礼を御許しください!!」
名前を聞いた途端、惚けていた水妖はひれ伏しながら許しを請う。
ルイズやアセルスからしてみれば、何故これ程に怯えるのか理解できない。
210 :使い魔は妖魔か或いは人間か2012/08/03(金) 23:26:24.84 ID:D7RmsMdv
「なぜ怯えるの?」
「妖魔の君の怒りに触れましたら、下賎な身の私など消滅してしまいます」
妖魔にとって、身分の差と言うものは絶対らしい。
ハルケギニアにも貴族がいる以上、階級制度は馴染み深い。

だからルイズはアセルスの存在が浮くのを知っている。
上級妖魔の血を与えられた、人間でも妖魔でもないアセルス。
公爵家の三女なのに、貴族なら出来て当然の魔法が使えない自分。
孤立した者同士ならばこそ、夢を見る毎にルイズはアセルスの数奇な運命にのめり込んでいく。

「大丈夫だよ、私はあの人じゃないから。君のことを教えてよ、その為に来たんだ」
アセルスは穏やかに水妖に語りかける。

「私はメサルティム、オウミの湖に住んでいます」
水妖も緊張を解しながら、身の上を説明し始めた……



水妖達はシップの発着場が出来る前、オウミの湖付近を住処にしていた。
地元の漁師も水神を崇めている為に、住処には近づかずに漁を行うのが日課だった。

しかし発着場が出来た所為で、水妖も居場所を変えざるを得ない。
メサルティムも湖を移動していたところ、漁師の網に掛かって捕らわれてしまったという。

「ケガしているのを治療してくれたのではないですか?」
「大事にしてくれているのは分かるんです。
けれど、人間の臭いは嫌いです。息が詰まる……帰りたい……」
白薔薇の質問にも、メサルティムは俯くだけだった。

「行こう!居たくも無い所に居る必要はない」
彼女の様子を見かねたアセルスが腕を引く。
アセルスの台詞はルイズに聞き覚えがあった。
学院という孤独に束縛されていた、自分を連れ出した時と同じ言葉。

「あの領主は、この水妖をあ……い……」
「望んでもいない物を押し付けて縛り付ける。そんな権利は無い」
白薔薇の発言は最後まで紡がれなかった。
アセルスは自身の運命をメサルティムと重ねているのだろうとルイズは察する。

契約を結んでくれているのも、自分と似た境遇に対する感情移入だろうか。
あの頃の自分がアセルスにどう映っていたのだろうかがルイズには気になった。

脱出の方法を考えていたアセルスは、館に地下に向かう階段があった事を思い出す。
領主を騙し、近くを連れ歩くと言ってアセルス達はメサルティムを逃がすべく地下室へ向かった。

大イカに襲撃される危機はあったが一同は協力して館から逃げ出し、湖にたどり着く。

「ああ、湖の匂いがする!さようならアセルス様、ありがとうございます」
メサルティムは嬉しそうにお礼を言うと、湖へと還っていった。
211 :使い魔は妖魔か或いは人間か2012/08/03(金) 23:31:20.76 ID:D7RmsMdv
「さよなら、メサルティム……どうしたの、白薔薇?」
お別れの挨拶を笑顔で交わす。
白薔薇の表情はアセルスとは対照的に沈んでいる。

「あの若者の気持ちを考えると、素直に喜べないのです」
白薔薇の言い分も確かだ。
単に親切心から治療するだけならば、客室を与える必要は無い。

少なからず好意以上の感情を抱いていたのだろう。
アセルスの行為が正しいのか間違っているのか、ルイズには判断できない。
他人を思いやれるからこそ、白薔薇は領主への罪悪感から素直に喜べないと言う。

「人間と妖魔が幸せになれるわけない!」
人から妖魔になったアセルスの、まるで自分に言い聞かせるような叫びだった。

街の領主は水妖を愛していた。
だが、メサルティムは館にいたくなかった。
湖で暮らしたいメサルティム、地上でしか生きられない人間。

そもそもの根底が異なるのだ。
ルイズが長く抱き続けていた苦悩にも置き換えれる。
魔法が使えないという劣等感は、誰にも理解されなかった。

無理もない。
貴族は魔法が使えるのが当然なのだから。

偉大な魔法使いの母親。
生徒を教える立場の教師。
300年生きてきたとされるオールド・オスマンさえも、苦悩への答えを返してくれなかった。

異なりはルイズとアセルスにも当てはまる。
人間と妖魔──決して超えられぬ異種族の壁。

──人間と妖魔は幸福にはなれない。
アセルスの叫びは、ルイズの心中に木霊する。

『人間と妖魔は受け入れられない存在なんだ』
ワルドの警告がルイズの脳裏をよぎる。

そんなはずはない。
アセルスは人間なんだと言い聞かせるルイズに、夢は追い討ちをかける……
213 :使い魔は妖魔か或いは人間か2012/08/03(金) 23:41:32.52 ID:D7RmsMdv
「そんな。オルロワージュ様に逆らうだなんて、誤解です」
白薔薇だけが、何かに語りかけるように首を振る。

「言い訳は、御帰りになってからにしていただきましょう」
燃える炎のように赤い甲冑に白い翼が生えた妖魔が姿を現す。

「ダメだ、白薔薇!白薔薇に触れるな!」
アセルスは発狂したように喚く。
右手にはファシナトゥールで手に入れた幻魔を携える。

「邪魔する者は殺して良いと言われております」
慣れた手つきで剣を抜き、アセルスに刃を向けた。
アセルスもルイズも知らない事だが、この妖魔──炎の従騎士はセアトの放った刺客。
炎の従騎士は先陣を任されただけあり、中級妖魔に近い力を持つ。

ルイズは夢を見てきたから知っている。
アセルスは剣を持っているが、実戦では数える程度しか剣を使っていない。

「アセルス様!」
白薔薇の制止も構わず、アセルスは怯むことなく剣を構えて突進する。

力量の差は明確であった。
掠りもしないアセルスの剣に対し、炎の従騎士の刃は熱を伴ってアセルスの身体を刻んでいく。

「当たれ!当たれ!!」
如何なる力があれども、当たらねば意味がない。
手馴れた騎士と実戦経験の無いアセルス。
妖力で見るならアセルスが上だが、圧倒的に経験が不足していた。

「くっ……ぁ!」
炎の従騎士が翼を羽ばたかせ、アセルスに強襲する。
剣で正面から受け止めてしまい、衝撃に耐えられずに後ろに吹き飛ばされた。

オルロワージュが命じたのは二つ。
白薔薇を連れ戻す。
その際、邪魔する者は殺しても構わないと。

従騎士は忠実に二つの任務を遂行する。
すなわち、アセルスを殺そうと剣を構えた。

「アセルス!」
見かねたルイズが思わず叫ぶ。
だが彼女には何も出来ない、これはあくまで夢の中なのだから。

アセルスも姿勢を崩した事で気付いた。
炎の従騎士が羽で宙に浮いている妖魔であると。
足場が固定されていない以上、至近距離では剣を振っても深手を負わせにくい。

更に今アセルスは体勢を崩して、身体を伏せるような体勢になっている。

──止めを刺そうとするなら、剣を突いてくるはず。
突き下ろしてきた相手の剣に対して、アセルスは切り払う事を閃く。
例え経験の差があれど、予測通り動くなら一太刀くらいは浴びせれる。

アセルスと炎の従騎士が交錯する。
先に血を流したのはアセルスだった。
しかし刺されると同時に剣を切り払い、幻魔を相手の心臓に突き立てる。

剣で打ち合ったのは、ほんの2〜3分の間。
呼吸を荒げ、刺された箇所を擦ると血で咽返る。
214 :使い魔は妖魔か或いは人間か2012/08/03(金) 23:48:31.20 ID:D7RmsMdv
立っているのが精一杯な程に疲労困憊だった。
動く気配を見せない炎の従騎士に安堵して、剣を仕舞う。

「あぁ……あのお方に逆らうなんて……」
アセルスが従騎士を討ったのを喜ぶでもなく、白薔薇は怯えていた。

「白薔薇、どこにも行かないで……
私を本当に分かってくれるのは貴女しかいないんだから」
血で汚れた手を伸ばし、白薔薇の腕を掴む。
ドレスが汚れるのも気遣う暇もなく、捨てられた子供のように懇願するアセルス。

彼女を心優しき白薔薇が見捨てれるはずもない。

「アセルス様……」
妖魔の君であるオルロワージュとその血を継ぐアセルス。
二人の間で板挟みになる白薔薇は名を呟くしかできなかった……



──ルイズが夢から覚める。
宿は港町でも上等なもので、それ故一人で眠るには少々広すぎた。

「そういえば、一緒に寝るのが当たり前になってたわよね……」
アセルスもだが、ルイズも孤独な生活を送ってきた。
学院でルイズが心許せる相手といえば、シエスタくらいだ。
彼女相手にも貴族の見栄があった為、弱音を吐くことは出来なかった。

誰かと一緒に眠るだけで、安らげる。
長い間、一人でいたルイズにはアセルスと寄り添って眠る感覚は心地良いものだった。

だが何時までも眠ってはいられない。
任務の為に起きると、同室者だったワルドがいない。
ルイズが部屋を見回していると、外から大きな声が響いた。

「君に決闘を申し込む!」
215 :使い魔は妖魔か或いは人間か2012/08/03(金) 23:52:11.23 ID:D7RmsMdv

ルイズより少し前、アセルスも眠りから覚めていた。
この世界に来て馴染んだルイズの部屋ではなく、見慣れぬ天井。

「またか……」
アセルスが気だるそうに、独り愚痴る。
最近アセルスが見る、己の半生を振り返った夢。
妖魔の血を受け継いだ時から始まり、白薔薇を守る為に追っ手と戦っていた頃。

「白薔薇……何処に消えてしまったの」
憂鬱な感傷とやり場のない怒り。
感傷を振り払おうとアセルスは扉を開けて食堂へ降りる。

「おや、起きていたのかい」
アセルスの眉間にあった皺が深くなる。
夢に加えて会いたくない相手に朝から出会い、苛立ちを募らせた。

「何?」
ワルドを階段の上から見下ろす。
アセルスがルイズと同じ部屋にいないのは、この男が原因だ。
昨日大切な話があるとルイズに言い、拒否できなかった彼女と同室になってた。

「君と少し話したくてね」
「私に話す事はない」
会話を一方的に打ち切り、アセルスは階段を降りる。

「主人以外を信じない頑なさは、流石ガンダールヴと言ったところかな」
聞き覚えのない単語にアセルスは歩みを止めた。

「君の契約のルーン、かつて始祖が率いた伝説ガンダールヴ。
1000人の軍隊をも相手にしたという力が君の正体だ、違うかい?」
ワルドが自信ありげに説明するが、アセルスは自身のルーンを知らない。

彼女は他者に興味がないのだ。
あるのは呼び寄せたルイズへの関心のみ。
だからこそ、自らを必要としたルイズに付き添っている。

「……本当に知らないのか?」
ワルドが間の抜けた声で尋ねた。
自信満々に断言したことが外れていれば、彼でなくても滑稽である。

「話す事はないと言ったでしょう」
アセルスは再び会話を打ち切ると、立ち去ろうとする。

「待ちたまえ」
ワルドの制止も、アセルスは振り返ろうともしない。

「君に決闘を申し込む!」
アセルスが足を止めて、振り返る。
ただし、瞳には何の感情も宿ってはいない。

「何故?」
至極当然なアセルスの疑問。

「太古から貴族というのは、つまらない理由で決闘を行ったものさ」
ワルドは理由をはぐらかすのみで、答えなかった。
216 :使い魔は妖魔か或いは人間か2012/08/03(金) 23:57:47.84 ID:D7RmsMdv
「ちょっと!ワルド!?」
ルイズが部屋の扉を開け、慌てて制止する。
マントを羽織ってはいるが、下は寝間着姿のままだ。
決闘の申し出に着替える暇もなく、飛び出してきたのが分かる。

「何考えているのよ!仲間同士で決闘だなんて!!」
「仲間か……生憎、彼女は僕をそう思ってくれていないようだがね」
アセルスとワルドはお互いにらみ合ったままだ。

「悪いが僕もだ。君の使い魔とはいえ、人の命を粗末に扱う妖魔を信用できない」
「それは……」
アセルスが元は人間だと知っているのはルイズのみ。
ルイズでさえ、アセルスが変わってしまった理由は断片的にしか分からない。

「だからって決闘だなんて……!」
「すまないが、君の忠告でも聞けそうにない」
なおも縋るルイズに、ワルドは首を振って否定した。

「僕が勝った場合、この旅では僕の指示に従ってもらう。
例え盗賊や敵相手でも、むやみに命を奪うのは止めて貰おうか」
アセルスに向き直ったワルドが強い口調で宣告する。

「貴方が負けたら?」
「君の好きにするといい」
アセルスの問いにワルドは即答した。

「……いいわ、場所は?」
アセルスが引き受けた理由は実に分かりやすかった。
募らせた苛立ちを発散したかっただけの八つ当たりに近い。

彼女の返答の意図など露知らないワルドは、満足してついて来るよう促した。



ワルドが決闘に選んだのは、遺跡の広場。
かつて貴族達が多くの決闘を行った場所としても知られている。
立会人として呼ばれたルイズ以外にも、話を聞きつけたキュルケとタバサ。
アセルスの従者であるエルザも来ていた。

「何考えてるのよ、もう」
「婚約者の前でいい格好を見せたいんじゃない?」
やり場のない憤りを覚えるルイズに、キュルケが軽口を叩く。

「ふざけないで。
いくらワルドがスクウェア級のメイジでも勝てる訳ないわ……」
ルイズの意見にはタバサも同意だった。
妖魔というだけでも、厄介なのにアセルスは戦い慣れしている。
それでもタバサが見に来たのは、スクウェアどの程度通用するかの指標になると判断したから。

──様々な思惑を秘めた決闘が始まる。

「エア・カッター!」
呪文の詠唱と共に、ワルドが先手を仕掛ける。
対するアセルスは剣を突き出すように構えると突進した。

メイジとの戦闘の定石は距離を詰めること。
重々承知しているワルドも、レイピアを構えて迎え撃つ。

「グリフォン隊の隊長を甘く見てもらっては困る。
魔法だけではなく、剣の腕も一流でなくては勤まらないのだよ」
217 :使い魔は妖魔か或いは人間か2012/08/04(土) 00:02:01.21 ID:pqh1GTqm
アセルスの剣を受け止め、呪文詠唱の時間を稼ぐ。
一太刀目を受け止められたアセルスは、腰のデルフを左手で引き抜く。

「例え二刀流だろうと……」
ワルドはアセルスの二刀流がただの奇策だと判断した。

理由はアセルスが持つ幻魔もデルフリンガーも長剣である事。
ハルケギニアにも二刀流の概念はあるが、通常は長短二つの剣を用いる。

しかし、アセルスは2本の剣どちらも攻撃にに使う。
身を守るよりもアセルスが望んだのは、敵を討ち滅ぼす一点のみ。

端から見ていたルイズは今朝見た夢を思い出す。
アセルスの剣が素人目に見ても、格段に上達していた。

「うぉ……!?」
嵐のような猛攻。
しのぐワルドに余裕はない。

『相棒、すげえけど攻撃に偏りすぎだ!このままだと……』
デルフの忠告は、一手遅かった。
攻撃の隙をついたワルドがレイピアでカウンターで肩を突き刺す。

刺された以上、攻撃が緩む。
ワルドはその隙を呪文と剣で同時に攻撃するつもりだった。
怯むどころか、アセルスの剣に突き上げられてワルドは宙を舞う。

「ぐはっ……!?」
幻魔はただの剣ではない。
妖魔の職人はある特性をこの剣に与えた。

相手から攻撃を受けた時、自動的に反撃を行う。
例え、剣の持ち主が気絶していようと死のうと必ず発動する。
ワルドを上空に跳ね上げると、アセルスも追いかけるように大きく跳躍した。

まるで走馬燈のように、ワルドの視界が緩やかに過ぎる。

(フライで離れるか!?
いや、無理だ。間に合わん!ならば……)
早さこそが風の魔法の特性。
ワルドも多分に漏れず、詠唱の早さには自信がある。

「エア・ハンマー!」
訓練や実戦で幾度となく繰り返した詠唱を行う。
相手も跳躍した以上、防ぐ手段はないと判断して。

その刹那、ワルドには硝子が割れるような音が聞こえた。
エア・ハンマーはアセルスに当たり前に壁にぶつかったようにかき消されてしまう。

「何だと!?」
ワルドにはただ驚くしかできない。
詠唱を行っていたのはワルドだけではなく、アセルスもだった。
異なるのは魔法ではなく術、硝子の盾と呼ばれる術は攻撃から一度だけ身を守る。

アセルスは剣を大きく振り構える。
ワルドにもう打つ手は残されていない。

「アセルス、駄目!」
ルイズの制止にもアセルスは止まらなかった。
218 :使い魔は妖魔か或いは人間か2012/08/04(土) 00:07:35.81 ID:pqh1GTqm
否、止められないのだ。
幻魔という武器の性質上、最低でも一度の反撃が返される。

ワルドの体は袈裟掛けに斬り裂かれる。

「がっ……」
地面に突き落とされたワルドがせき込むように血を吐き出す。

「ワルド!」
ルイズがコロシアムの塀を越えて飛び出す。
ワルドの元に近寄るも、あふれ出す血を止める手段はルイズにはない。

「誰か……タバサ!」
タバサも呼ばれた理由を察して、すぐに向かう。
ルイズは治療をタバサに任せ、アセルスのほうを向く。

「やり過ぎよ、アセルス!」
いつもより強い口調でアセルスに詰め寄る。

「決闘を望んだのは彼よ」
「だからってここまでしなくてもいいじゃない!」

幻魔の特性について、ルイズは知らない。
アセルスも説明する気がなかった為、お互いにすれ違いを生んでしまう。
止めようにも無理なのだが、ルイズには自らの意志で傷つけたようにしか見えない。

「どうして平然としていられるのよ……まるで心が無いみたいじゃない!」
「……心なんて持っていても、苦しむだけだもの」
感情こそ出さないが、自嘲するようなアセルスの言葉。

ワルドとの決闘について、謝る気はないが言い分は分かる。
自分の知人が傷つく姿を見たい者など、よほどの変質者であろう。

だから向けられた叱責もアセルスは受け入れる気だった。
しかし、ルイズは今にも泣き叫びそうな表情を浮かべるのみ。

(おかしいな……悲しませたかった訳じゃないのに)
責めるでもなく、何か言うでもなく、ただ悲痛な顔でこちらを見るルイズに居た堪れなくなる。

「ゴメン」
ルイズにだけ聞こえるか細い声でそう伝えると、アセルスは逃げるように場を去った。

「アセルス!」
ルイズが呼びかけた時、既にアセルスの姿は消えていた……
219 :使い魔は妖魔か或いは人間か2012/08/04(土) 00:11:47.26 ID:pqh1GTqm
「ぐっ!?」
痛みにワルドが目を覚ますと、そこは見慣れぬ部屋だった。
まず視界に写ったのは、心配そうな表情を浮かべる桃色髪の少女の姿。

「よかった、目を覚ましたのね!」
「ここは?」
状況が飲み込めないワルドがルイズに説明を求める。

「宿の医務室よ。
あまりにも目を覚まさないようなら、病院に連れていこうかとも思ったけど」
「そうか……僕は負けたんだな」
ワルドも昼の決闘を思い出す。
外を見るとすっかり夜更けになっていた。

「どうしてあんな無謀な真似したのよ!」
困惑した表情を浮かべるルイズにワルドが口を開く。

「言っただろう、妖魔を信用しない方がいいと」
「……それだけで決闘を?」
ルイズの質問に短く首を振って否定する。

「昔の話さ。僕がグリフォン隊に入った頃、同期の親友がいた……」
ワルドは自らの過去を語って聞かせる。

「今時、珍しいくらい人の良い貴族でね。
グリフォン隊に入って、僕らはすぐに打ち解けた。
ある時、任務でオークの討伐を命じられて共に向かったんだ」
友人のことを懐かしむように、ワルドは窓から空を仰ぐ。

「オークが出ると言われる近くにたどり着いた時、洞窟を見つけた。
オークの巣じゃないかと、僕らは警戒して進むとそこには幼い兄妹がいた」
「どうしてそんなところに?」
ルイズの疑問に、ワルドの表情がわずかに歪む。

「彼らは両親を亡くし、残された家で過ごしていたらしい。
しかしオークが現れたせいで家も壊され、行く宛てもなく洞窟に逃げ込んだと」
哀れな兄妹の話にルイズの表情が陰る。

「話を聞いて、彼は『もう安心していい、僕らが君達兄妹を守る』と言った。
僕は正直反対した、まず彼らを安全な場所に連れていくべきではないかと考えたんだ」
ワルドが水差しを取ろうと手を伸ばす。

「はい……それでどうしたの?」
ルイズが水を注いで手渡すと、ワルドは一気に飲み干す。

「既に日が沈んでいたから、オーク退治は翌日に回した。
森から離れたくないと言う兄妹の意見を尊重して、彼らと共に洞窟で一晩過ごしたんだ」
ルイズはコップを持つワルドの手が振るえているのに気づく。

「僕はあの時気づくべきだったんだ!
あんな洞窟にいる幼い兄妹の不自然さに!!」
ワルドがコップごと、小さい机に拳を叩きつける。
220 :使い魔は妖魔か或いは人間か2012/08/04(土) 00:13:01.43 ID:pqh1GTqm
「ど、どうしたの?」
「兄妹は吸血鬼だったんだ!オークは彼らの屍人鬼だった!
夜の妖魔相手に僕らはなすすべなく、蹂躙された。僕は幸運にも一命を取り留めたが、彼は……!」
怒りに身を震わせるワルドにルイズは恐る恐る問いかける。

「死んだの……?」
「それも可能な限り残忍なやり方でだ!
皮膚は剥がされ、肉をえぐり、骨を砕き……僕は体を拘束されて、彼の拷問する様を見せられた!!」
ワルドはルイズと反比例するように声を荒げて叫ぶ。

「恥も外聞もなく、彼だけでも救ってほしいと懇願した。
だが、妖魔はそんな僕の姿を見てあざ笑いながら彼をなぶり続けたよ……」
うなだれるようにワルドの体から力が抜ける。

「喉が裂ける程に叫んで、僕は意識を失い気づけば病院にいた。
彼の家族が遺体を見たとき、凄惨な状態に嘆くより先に嘔吐した程だ……」
心の積もりを全て吐き出すように、ワルドの声が擦れていく。

「その後、吸血鬼はどうしたの?」
「討伐されたよ、彼は殉職で二階級特進した」
思わず安堵するルイズ。
彼女の様子を見て、ワルドは話を続ける。

「妖魔と言うのはそういう連中なんだ。
分かりあうなんて不可能でしかない、根底から人とは異なる連中なのだから」
「でもアセルスは……」
人間だと言おうとして、声が詰まる。
アセルスを人として扱う者は誰一人いない。

……だから彼女は心を失ったのだろうか。
頼る者もなく力や追っ手に狙われ続ければ、いつか心の平衡が崩れるだろう。

ルイズとて、気が狂いそうになる日々を過ごしてきた。
もし、アセルスが呼べなかったのなら……
退学となり周囲の嘲笑に晒され続けたなら……
想像するだけで、心臓を鷲掴みされたような感覚を思える。

「本当は旅が終わってから言うつもりだったが、今言おう。
ルイズ……僕と結婚してくれないか」
「えっ……」
ルイズの思考を遮るワルドのプロポーズ。
許嫁とはいえ、唐突なアプローチにルイズは困惑する。
ワルドは構わずに身を乗り出し、ルイズの手を握ると情熱的に語り続ける。

「今はっきりと分かったんだ、僕は君を失いたくない。
使い魔とはいえ、妖魔に入れ込む君を見ていると不安なんだ」
「い、いきなり言われても困るわ。私まだ学生の身分だもの……」
しどろもどろになりながらの返答。
ワルドは気落ちしたように、ルイズの手を離す。

「すまない、君の気持ちも考えず性急過ぎた。
だが、僕が本気だと言うのは覚えておいてほしい」
ルイズはどうしていいか、分からなかった。
外から聞こえる喧噪のように、感情が入り乱れるだけで答えが見いだせずにいた。
221 :使い魔は妖魔か或いは人間か2012/08/04(土) 00:19:42.31 ID:pqh1GTqm
ワルドが目覚めるより、少し前。
アセルスは一人で町外れの崖にいた。

『なあ相棒』
デルフの呼びかけにもアセルスは何ら反応を示さない。

『どうしてあんな嘘をついたんだい』
いつもなら引き下がるところだが、デルフは強引に質問を続けた。

「嘘?」
心当たりのない単語に、アセルスが尋ねる。

『心を無くしたなんて言ってたじゃないか』
「嘘じゃない。
人として生きられないなら、妖魔として生きる。
妖魔になるのに人の心なんて持っていても、苦しむだけだもの。」
アセルスが思い出すのは、かつてルイズにも告げた台詞。

『無くしちまったつもりだろうが、相棒には確かに心があるよ。
単に心の一部が欠けちまっただけさ』
「二度と元に戻らないなら同じよ」
言葉遊びにつきあうつもりはないと言わんばかりに、アセルスは切り捨てる。

『無くしたものは取り戻せないが、壊れただけならまた治せるんだぜ』
「言われなくても知っている」
デルフの一言は、アセルスの感情を逆撫でるものだった。
無くした者が二度と取り戻せないのを、誰よりも知っているつもりだ。

使い手の感情を察したデルフはこれ以上は追求せず、代わりに別の疑問をアセルスに尋ねた。

『だったら嬢ちゃんには、なんでつきあうんだい?』
「さあ?何故かな……」
はぐらかしたようにも聞こえるが、デルフは彼女の感情を正確に把握していた。

本当に分からないのだ。
自身にも不明なら、真意は誰にも掴めない。

大切な人を失った絶望。
かつての自分を重ねる境遇。
アセルスの過去には、思い出したくもない苦痛の記憶だけが渦巻く。

ふと、アセルスが背後を振り返る。
辺りは日が落ちているのに、明かりを感じたからだ。

『街が……!?』
デルフが驚いたような声をあげる。
明かりの正体は街の一部に火が燃え広がっていたからだ。

『あの方角って確か嬢ちゃん達の……』
デルフが言う通り、昨晩アセルス達が泊まった宿が燃えていた。

アセルスは駆け出していた。
何故、ルイズに連れ添うのか?
浮かんだ疑問が心に引っかかったまま……
222 :使い魔は妖魔か或いは人間か2012/08/04(土) 00:22:43.37 ID:pqh1GTqm
投下は以上です
佳境に入ってきたから、文章が長くなってきたなぁ・・・
224 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 01:46:26.11 ID:uDVlcyPC
アセルスさん乙です
ところで、ジョジョクロススレのホワイトスネイク召喚した話とこのアセルスさん召喚した話で
ルイズがオスマンへ魔法が使えない云々の負の感情をぶつけるシーンがそっくりですが
もしかして作者さん同じ?
226 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 02:08:14.17 ID:pqh1GTqm
>>224
別人ですが、思いっきり影響は受けてます
他人に理解されない悩みと考えた時にアセルスが浮かんだのが切っ掛けだったので
229 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 08:59:29.95 ID:BkIkzQCg
少佐らの義体って通常より高度なメンテが必要って言ってるけど
ぶっ壊れた時くらいしかろくにメンテしてなかったような……
それどころかぶっ壊れても平気で動くし
230 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 09:07:57.55 ID:ZGK7nbV7
長々とメンテシーンなんて描写されても困るわ
あとぶっ壊しても平気なのはバックアップがしっかりしてる裏返しだろ
元々戦闘能力高いんだから普通の人間が反応できない速度で関節とかぶっこわしゃええねん
231 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 11:15:50.57 ID:pZIXggiL
メンテなんて文章にしたら退屈極まりないだろうしな
いっそ魔術で呼び出されたサイボーグはメンテ不要になるとか設定つけたらどう
かなり強引だがビーファイターでジャグールに召喚されたビルゴルディみたいな感じで
232 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 11:27:37.31 ID:+0SWg9rZ
序盤は制限
タルブの村で簡単にメンテ
コルベールの助力でちょっと深いメンテ
ロマリアの助力(機材)を得て高水準のメンテ

能力がだんだんに解放されてくってのは物語的には美味しいんじゃね
233 :るろうに使い魔2012/08/04(土) 12:50:43.96 ID:v4kqR8v6
皆さんお久しぶりです。もし予約がなければ一時丁度に投稿しようと思います。
234 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 12:58:50.38 ID:pZIXggiL
久しぶりってほど空いてない気もするけど
まあ事前、解剖バラバラの支援
235 :るろうに使い魔2012/08/04(土) 13:01:11.42 ID:v4kqR8v6
それでは始めたいと思います。


 空賊の頭が、アルビオン皇子ウェールズだと知ると、ルイズ達も慌てて姿勢を正した。
ウェールズは和かな笑みを崩さずに、それを止めてくれるように言った。
「それにしても、君は随分強くて頼れる使い魔を持っているね。彼みたいな人間が一人でもいれば、このような惨めな今日を迎えることもなかったろうに」
 そう言って、逆刃刀を納める剣心を見ると、ウェールズは残念そうなため息をついた。
 それを聞いて、ルイズは少し顔を赤くすると、思い出したように懐から一通の手紙を差し出した。
「アンリエッタ姫殿下より、密書を言付かって参りました」
 ウェールズはそれを受け取り、手紙を広げて読み始めると…最後の一行を呼んで一瞬だけ悲しそうな顔をすると、再び微笑みを作った。
「了解した。しかしながら今、目的の手紙は手元には無いのだよ。済まないが、ニューカッスルまで足労願いたい」



     第十九幕 『前夜』



 ウェールズ率いる軍船『イーグル号』は、アルビオン大陸の真下を隠れるようにくぐり抜けて、しばし雲の中をさまよい始めた。
 やがて雲を抜けると、日の差さない真っ暗闇な世界が辺りを覆われていたが、魔法の灯火を頼りに進んでいると、大きな穴が姿を現した。
 イーグル号は、それに入り込み、上手く停船させると、剣心たちはその鍾乳洞のような地に降り立った。
「ああ僕の可愛いウェルダンデ!! わざわざ僕を追いかけてくれたんだね」
 そう叫んで愛おしそうにギーシュがモグラを抱きしめているのを尻目に、ウェールズ達は運び込まれている物質を指して言った。
「喜べパリー。硫黄だ!!」
「おお、硫黄ですと!!」
 パリーと呼ばれた、老将軍は嬉しさと感動で涙を流した。
「先の陛下よりお仕えして数十年…こんな嬉しい日はありませぬぞ。反乱が起こってからは苦渋を舐めっぱなしでありましたが、これだけの硫黄があれば……」
「ああ、王家の誇りと名誉を、叛徒共に示しつつ、敗北することができるだろう」
 ウェールズの言葉に、パリーと他の一味は歓声を上げた。
ルイズは唖然として、ウェールズの方へと詰め寄った。何で負けることを知って笑いあっているんだろう。
死ぬと分かってどうして喜び合っているのだろう……。それがわからなかった。
「あ、あの…殿下…」
「ん? ああ、手紙の事だね。しばし待ってもらいたい」
 それだけ言うと、ウェールズは何事か伝えたいルイズをそのままに、臣下の一人にルイズ達を案内するよう頼み込んだ。
 城内での居間にルイズ達は案内された。ここから先は機密事項と、別の国の出であるキュルケとタバサは別室へと招かれたが。
ウェールズはその机の中から一つの小箱を取り出して、それを開けた。その中には、古くなった手紙が一通。
 それを開いて、再度読み直すと、名残惜しそうに手紙をたたんでルイズに渡した。
「これで君達の任務は達成したわけだ。明日の朝『イーグル』号が非戦闘員を乗せて出港する。それでトリステインに帰りなさい」
 ルイズは確かにそれを恭しく受け取ったが、まだ何か言いたげにウェールズを見つめた。
「あの…殿下、敗北ということは…その…」
「そう、勇敢な死に様を、奴等に見せるだけだ。当然僕も、真っ先に死ぬつもりだよ」
 何の気にもせず、ウェールズはさらりと言った。
 自軍は五百近くなのに対し、敵は五万。目に見える戦力差を覆すことは、今のアルビオン王家には無かった。
236 :るろうに使い魔2012/08/04(土) 13:02:42.05 ID:v4kqR8v6
「殿下、恐れながら申し上げたいことがあります。この手紙の中身は…これは…」
「…そう、恋文さ」
 ウェールズは一瞬話そうか迷ったが、今更もう大丈夫だろうと思い、口を開いた。
 もしこの手紙がゲルマニア皇帝に知られたら、重婚の罪で同盟を取り消されることだろう。
となればトリステインは、誰の力も借りられず、一国だけで強大な反乱軍と戦わなくてはならない。
「殿下、亡命なさいませ! トリステインに亡命なさいませ!」
 ここでルイズが、懇願するかのように叫んだ。ワルドが何とか宥めようとが、それでもルイズは止まらない。
「殿下、姫さまは多分、手紙の一文に亡命することをお勧めになっているはずです! 
あの姫さまが、ご自分の愛した人を見捨てるはずがございませんわ。おっしゃってくださいな、殿下!!」
「…その様な事は、一文も書かれていない」
 ウェールズは、少し苦々しげにそう言った。その反応から見て、図星だとルイズ達は確信した。
 しかし、ウェールズは静かにルイズの肩に手を置いた。
「私は王族だ。私と…姫の名誉に誓って言うが、本当にそのような事は書かれてはいない。本当に…」
「でも……」
 なおも食い下がるルイズだったが、今のウェールズには、何を言っても聞き入れて貰えなさそうだった。
「そろそろパーティーの時間だ。せっかく来てもらったんだ。是非君たちも参加してもらいたい」
 話を切り上げるように、ウェールズは皆の方を振り返った。表面上は務めて、笑い顔を作ってはいるが、剣心にはこの上なく辛そうに見えた。



「諸君、よくぞ今の今までこの王に忠誠を尽くしてくれたこと、心より感謝する」
 大ホールから現アルビオン国王、ジェームズ一世の声が響いた。
おそらく彼らにとって、最後の晩餐になるであろうその会場は、異様とも言える熱気と歓声につつまれていた。
 皆明日には断つ命だろうに、そこには死への恐怖や悲観というものがなく、ただ誇りある名誉への殉職に狂喜し合っているのだった。
 そんな熱中の会場の中を、剣心はただブラブラと周りをうろついていた。しばらくすると、彼に声が掛かった。
「おや? 君は確かヴァリエール嬢の使い魔君だったね」
 声の主は、アルビオン現王子のウェールズだった。相変わらず、死の恐怖を感じていないのか、ニコニコした表情をしていた。
「さっきは済まないことをしたね……しかし、人を使い魔にするとは、トリステインも変わったところだね」
「まあ、あっちでも珍しいと言っていたでござるよ」
 そんな風に会話していると、おもむろにウェールズはテーブルからワイン瓶を取ると、平民であるはずの剣心にこう言った。
「折角だ。お詫びも兼ねて一杯付き合ってはくれないかい?」
「…別に構わないでござるよ」
「では、決まりだね」
 ウェールズは嬉しそうに笑うと、先程の王子の部屋へと、剣心を案内した。
237 :るろうに使い魔2012/08/04(土) 13:04:03.27 ID:v4kqR8v6
(何で……?)
 ルイズは、ひっそりとこのホールから抜け出した。死ぬと分かってあの熱気、愛する人や残される人を考えず、ただ名誉と誇りのために命すら厭わない。
それが当たり前のように振舞うあの空間が、堪らなく嫌だったのだ。
(姫さまが逃げてって言っているのに…どうして…? どうして殿下は死を選ぶの…?)
 ルイズはこの国がイヤになった。周りは皆自分のことばかり、
あの王子様でさえ、トリステインで待っている恋人の事を考えていない。何もかもが嫌いだった。
 気付けば頬に伝う涙を、ルイズは手で拭った。どこに行くかは考えていない。ただ宛もなく…否、彼の姿を無意識に探していたのだった。
「どこ行ったのよ…あのバカ…」
 アイツなら、何て言ってくれるのだろうか? そんな蜘蛛の糸のようなか細い期待を胸に秘めながら、ルイズは只、己の使い魔の後を追った。そんな時―――。
「ん……?」
 手紙を受け取りに行った、ウェールズの私室から、何やら声が聞こえてきた。
なんだろうと思い、近付いて覗いてみると、そこには…。
「……ケンシン…?」


 テーブルを挟んで、剣心とウェールズは向かい合うように座ると、グラスにワインを注ぎ込んだ。
「明日の名誉のために…」
 そう言って、グラスを持って傾けると、そのままグイッと煽った。
剣心は、飲もうとはせずにしばしウェールズの方を見ていたが、やがて意を決したように口を開いた。
「何故戦うでござる?」
「…何がだい?」
「お主にも待つ人がいるのに、誇りのために今ある命を捨てる気でござるか?」
 核心を突く剣心の言葉に、ウェールズはグラスを下げる。
「命を捨ててでも、守りたいものがあるからさ…」
 そしてウェールズは、真剣な眼差しで剣心を見た。
「奴等レコン・キスタは、『聖地』奪還という馬鹿げた理想のために、血を流す民や荒れる国土のことを考えぬ。そんな奴相手に、引くわけにはいかないのだよ」
「そのために、一人の少女を不幸にするでござるか?」
 一瞬、ウェールズは言葉が詰まった。
「…貴族というものは、そういうものなのだよ…彼女も分かってくれるさ」
 だが、その声には力が無かった。アンリエッタからの、亡命を勧めた手紙を読んでからというもの、彼女を連想する言葉が出るたび、ウェールズの表情が固まるのだ。
「お主は分からないでござろう、姫殿が、どれほどの思いで拙者達を送り出したのか…。
ルイズ殿に頼んだのも、彼女なら姫殿の意図を汲んで、お主を呼び戻せるのではないかと、一縷の希望に賭けたのでござるよ」
「………」
 しばらくの間、黙って話を聞いていたウェールズだったが、フッと小さく渇いた笑いを漏らした。

「僕たちは王さ…自分の民を見捨てて逃げ出すわけにもいくまいし、たとえ逃げるとしても、トリステインへと渡ったらそれこそ彼女にも迷惑が掛かってしまう…だからここで―――」
 そこまで言ったとき、ここで急にドアが開いた。
思わぬ来訪者に、ウェールズ達は一瞬驚いたが、同時に目を丸くした。
そこには、半泣きの表情をしていたルイズが、立っていたからだ。
239 :るろうに使い魔2012/08/04(土) 13:07:16.06 ID:v4kqR8v6
「殿下!! でしたら…」
「コラコラ、嫁入り前の女の子が、そんなに涙で顔をグショグショにするもんじゃないよ」
 ウェールズは、静かに振り返ってルイズの肩を叩く。その顔はいつも通りの優しい笑顔だった。
 しかし、ルイズはそのウェールズの言葉に、ほんの少しの間体が固まった。
「え……?」
「聞いたよ。明日子爵と結婚するそうだね。彼が僕に婚姻の媒酌を頼んできてね、何ともめでたいことじゃないか、是非引き受けることにしたんだよ」
 ルイズはハッ、とした表情をして、反射的に剣心を見た。剣心の方も、これまた驚いたような様子だった。
 ウェールズも、この二人の反応には少々首をかしげた。
「知らされてなかったのかい? まあ多少ごたついていたからね、無理もないか。だから明日に備えて、君も早くに寝たほうがいい」
「でも…えっと……」
「僕が掴むことができなかった幸せの分だけ、君達は生きて欲しい」
 ウェールズにそう言われると、ルイズは何も言えなくなってしまった。
剣心の説得に、ほんの少しだけ揺らいだかに思えたが、相変わらず彼の決心は堅いようだった。
 ルイズは、俯きながら考えた。明日結婚するなんて、いくらなんでも聞いていない。ワルドは何時でも待ってくれるっていっていたのに……。
 でも、もしかしたらこの滅びゆく王国に、ワルドも思うところがあったのかもしれない。
ここで勝手に断って、媒酌を引き受けてくれたウェールズの顔に泥を塗るのもどうかとも、思っているのだ。
(でも…それでいいの…私の気持ちは…?)
 すっかり混乱してしまったルイズに、ウェールズは優しく頭を撫でながら言った。
「僕も明日早いからね、今日はお開きにしよう―――最後に会話できたのが、君達で良かったと心から思うよ」
 最後に、ウェールズは剣心を見た。剣心は、ルイズと共に静かに退室する時、帰り間際にこう言った。
「もう一度、拙者の言ったこと…姫殿のことを思い返してほしいでござるよ」
 ウェールズは、微笑み返すだけで何も言わなかった。
240 :るろうに使い魔2012/08/04(土) 13:08:25.79 ID:v4kqR8v6
 ホールでのパーティーも終わったのか、辺りは準備に勤しむ兵隊たちの足音以外、何も聞こえなかった。
 ルイズは、剣心の姿を見失わないように歩いた。
「ねえ…ケンシン…」
「何でござる?」
「……何でもない」
 用もないのに呼び止めてしまった。でも、剣心は嫌な顔一つしなかった。
思えば、自分がウェールズを強く説得する筈だったのに、彼がそれを代弁してくれた。泣いてるだけで蹲るだけだったのに、彼はいち早く動いてくれた。
 思い返せば、この旅に出てからというもの、剣心にはとことん助けになりっぱなしだった。フーケの時も、船でのことも。
 使い魔だから当然。そのような感じに割り切れれば幾拍か楽にもなるだろうが、そう考えるには、あまりにも彼の力に頼りすぎた。
 本当なら、ここで感謝の言葉でも言わなければならないのだろうけど、その前に一つ、どうしても聞いたいことがあった。
 多分、ここでの機を逃せば、もう永遠に来ないと思ったから。
「…ケンシン」
「何でござる?」
 相変わらず、なんでもないような風に剣心が応える。ルイズは、彼の刻まれた十字傷を見つめながら、意を決して言った。
「私…ワルドと結婚する…らしいけど、ケンシンは…その…どう思う?」
 他人事の様な口調だったが、ルイズにとっては真剣そのものだった。これで、剣心が自分のことをどう思っているのか、知りたかった。
 ただの使い魔? それとも別の――。
「ルイズ殿、何も変わらないでござるよ」
「え…?」
 剣心の答えに、ルイズは目を丸くしたが、特に失望したような感覚では無かった。
「ルイズ殿が結婚しようと、拙者はルイズ殿が困ったときには、何時でも駆けつけるでござる」
 それは、ただの使い魔としてってこと? 
 その考えが頭をもたげた時、ルイズは悲しくなった。所詮、剣心もその程度でしか考えていないんだと――――。
 でも、ふと突然に剣心が、優しく頭を撫でてくれたとき、そんな考えは無くなった。
「誰かを守る、というのは簡単なようで難しい。特にその人を想う人間は、もしいなくなってしまったらその人は、悲しみを背負ったまま生きていかなくてはいけない。
そういう人達を見るのは、拙者はもう沢山でござるよ。だから―――」
「…だから?」
「その人が笑顔になれるまで、拙者は離れたりしないでござるよ―――約束でござる」
 その言葉の意味をとったルイズは、心から安堵する。
正直に言うと、怖かった。ワルドと結婚したせいで、剣心が急に自分の元から居なくなってしまうのではないかと。何ていうか、そんな気がしたからだ。
 でも、彼の優しい笑顔は、そんな不吉なことを吹き飛ばしてくれる。いつもそうだ。剣心の微笑みは、ルイズの心の中を底まで暖かくしてくれる。
どうして、彼の笑顔にはそれがあって、ワルドには感じないのだろう?
241 :るろうに使い魔2012/08/04(土) 13:09:41.84 ID:v4kqR8v6
「じゃあ、拙者はこれで」
「…うん」
ルイズの部屋の前まで来て、剣心は言った。アルビオンまで来て同室というわけにはいかない。
「また明日、でござる」
「うん」
 ルイズは、剣心と別れた後、ベットに潜り込んで考えた。ウェールズの事、ワルドの事、剣心の事……。
 一体自分は、誰のために結婚するんだろう? 本当に明日、結婚してもいいのだろうかと。

『結婚というのは、誰のためでもない。自分のためにするものでしょう?』

 キュルケの声が、頭の中で聞こえてきた。でもそれは、本当にそうだと思い始めた。
結婚は、生涯に一度しか出来ない。よく考えないと、周りにも迷惑しかかけないだろう。
 もう少しよく考えなきゃ…そう思いながら、ルイズは静かに寝息を立てた。


 以上にて投稿終了です。続きはまた明日、投稿しようと思います。
245 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 13:59:30.46 ID:KKwZCUKL
アセルスの人、るろうにの人投下お疲れ様です

このアセルスはロザリオインペールとか無月散水習得済みなのかな
ワルドがただの雑魚に見える
ルイズがいなかったら間違いなくワルド殺されてるんだろうな
260 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 21:13:09.34 ID:pqh1GTqm
>>245
アセルスの強さはオルロワ一人で倒せるくらいの能力のつもりです
本編クリア後だし
246 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 14:49:16.75 ID:7tonDckv
SSでは魔法が使えない相手か戦闘経験が少ない相手しか勝てないのがワルドの印象
248 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 15:44:40.30 ID:pLRIfqTQ
1号:ギーシュ、2号:フーケ、3号:ワルド、か
253 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 16:28:45.86 ID:0EDo//tC
>>248
生存確率の高い順でもあるなw
249 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 15:48:13.49 ID:7tonDckv
小手先の一号
力ずくの二号
そしてその両方を兼ね合わせたV3か
251 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 16:08:33.45 ID:pZIXggiL
ギーシュ=ショッカー戦闘員
フーケ=復活怪人
ワルド=ジョッカーの皆さん

こんな感じかな
258 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 18:59:51.23 ID:FHQ6Wsau
原作でのゼロ戦のときの話忘れてました...考え直さなければ
261 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 21:20:06.09 ID:U9GN+MXO
所詮ワルドは一般人+ガンダールヴ気力MAXで偏在ごとまとめて一蹴できるくらいのレベルだからねえ
素で強いキャラなら契約してないとかで何の補正も無くても勝てるだろうし
元が一般人でも原作で一般人が実際に勝ってるんだから大して問題になりようがないというか

元が一般人並みかそれ以下で、やたらテンション低いキャラとかでない限りは
275 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 23:49:02.51 ID:3lbf8ohJ
>>261
元が一般人並みかそれ以下で、やたらテンション低いキャラはラスボスだった人ぐらいか。
262 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 21:23:35.91 ID:e1nHQQfB
仲間なしでオルロワ倒すのはきちぃな
265 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 21:36:20.80 ID:Zz8OlWdi
>>262
ぶっちゃけオルロワは本人よか後ろの絵のほうが怖い
追い込めんで三体出し全体攻撃は時野君でキャンセルできるし、最悪来るターンわかるから防御も出来るし
防御不可能、即死効果、必ず三回くるカーネイジ&にシフト中に磁気嵐とか聖歌とか、塔まで撃ってくるジェノサイドハート超怖い
267 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 21:51:16.69 ID:pqh1GTqm
>>265
あの3人は一応オルロワが生み出してる幻影みたいな設定だった気が
幻影のほうが強いっていうのも、どうかと思うけど
269 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 22:07:26.99 ID:8cdRhb8F
>>267
スタンドやペルソナの方が本体より強くても不思議はあるまい
270 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 22:08:25.33 ID:KKwZCUKL
>>267
幻影といえばロマサガ3が浮かんでくるな
何故フォルネウスはあんなナマズもどきになりたかったのかわからん
272 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 23:07:28.85 ID:e9snOCMX
>>270
強そうで恐くてグロテスクな方が望ましいのだろう。魔族だし。
血と汗と涙を流す人が爺様なのは、燃え尽きたい願望とかじゃないっけか。
273 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 23:31:43.60 ID:BkIkzQCg
>>270
自分のショタな姿にコンプレックスがあったとかどうとか
274 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 23:41:24.99 ID:KKwZCUKL
>>272
まあ強そうてか実際強いんだが、別にアスラみたいな人型でもよかったんじゃないかと思う
他の3人からなんか言われなかったのかな?
276 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 23:53:57.82 ID:Eu0tVpwl
>>274
そらアンタの価値観でフォルの価値観ではないしな
280 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/05(日) 09:51:45.82 ID:1LkZ0VVI
>>272
血と汗と涙流す人はムキムキのあんちゃんだw
爺さんは体燃えてる若々しい鎌もったおっさんが幻影
281 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/05(日) 10:01:48.84 ID:GKEOEqcU
>>280
血と汗と涙を流す人の幻影ってこれだっけ?
ttp://para-site.net/up/data/39470.png
282 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/05(日) 10:08:03.43 ID:Ngxz6Knm
>>280
*おおっと!*
うろ覚え失礼。何せ遊んだのも錬技読んだのも随分前だからなぁ
284 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/05(日) 10:26:59.20 ID:2NjdttNZ
>>282
名前似てるからねアラケスとアウナス
白虎属性なのに「やき」ごてとか使ってくるからなあのマッチョは
余計覚えにくい
263 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 21:33:16.80 ID:e9snOCMX
本編後に妖魔の君としてヒャッハーしてたらオルロワ単独撃破可能なくらいにパラメータが上がったのだろう
264 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 21:35:00.36 ID:U9GN+MXO
時の君「人間上がりの身でオルロワ単独撃破とは、 感心しませんな。近頃の女性はやんちゃで困る」
268 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 22:01:03.43 ID:pZIXggiL
小説版では零姫への未練がましさが過ぎてその3人に愛想尽かされてたな
271 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/04(土) 22:56:20.24 ID:MsQx9WPW
るろうに乙!
やっぱ剣心からしたら死にに行くウェールズには待ったをかけるよね。
279 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/05(日) 09:49:46.97 ID:WCkciaPF
孔明を召喚
一度目、二度目は不在で三度目にようやく召喚に成功する
283 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/05(日) 10:17:01.10 ID:IZwA/DT2
「私の微熱も流石にアレには勝てないわ」と呆れるキュルケの視線の先に

「お〜い先生〜そこのレンチをとってくれ〜(ヒートスマイル)」
「これで良いかね?ランド君(ヒートスマイル感染済み)」

ザ・ヒートことランド・トラビスを召喚。
285 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/05(日) 11:37:54.67 ID:xH+sqvzP
戦闘妖精シャザーンさんを召喚。学院の歯科検診は完璧である
290 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/05(日) 21:41:59.58 ID:I+xq/Mk4

サイトは「ハシバミ草」を 食べてみた
・・・・・・・・・うおっ・・・・・・ 超まずいっ!
ちからが 2下がった
HPが 30下がった
お腹もクダし
満腹度が 10%になった
294 :るろうに使い魔2012/08/05(日) 23:53:04.37 ID:W2WZM1o0
皆さんこんばんわです。もし問題ないようでしたら、0時ちょうどから投稿しようと思います。
297 :るろうに使い魔2012/08/06(月) 00:05:24.48 ID:gm8eiATi
「上手い酒の味も知らんで成仏するのは不幸だからな。俺からの手向けだ」
「あ、ありがと…あの…」
「俺は比古清十郎、剣を少々やる」
 男―――比古はそう答えると、今度は厳しい眼で心太を見下ろした。
「坊主、お前はかけがえのないものを守れなかっただけではなく、その三人に命を託されたんだ。お前の小さき手は、その骸の重さを知っている。
だが、託された命の重さは、その比ではない。お前はそれを背負ってしまった。
自分を支え、人を守れる強さを身につけることだ。お前が生き抜くために…大切なものを守り抜くために」
「……守り抜くために…」
 思い返すように呟く心太に、比古は続けた。

「坊主、名は?」
「心太」
「優し過ぎて剣客にはそぐわないな、お前は今から『剣心』と名乗れ」
「…剣…心?」
 心太、改め剣心は、思わず比古を見上げた。あどけない、歳相応の子供のような瞳。だけど、その中には、はっきりとした『意思』が宿りつつあった。
 それを見抜いた比古は、どことなく嬉しそうに口元を緩ませた。
「お前には、俺の『飛天(とっ)御剣流(ておき)』を、くれてやる」
 これがすべての始まり。欠かせない彼の原点。紅の朝日が昇る中、その光が二人の影を大きく照らしていた。



第二十幕 『結婚』



 ルイズはここで目を開けた。そこは昨日就寝についた、目的地であるアルビオンの一室。先程夢で見た光景を思い返しながら、ルイズはゆっくり体を起こす。
繋がってゆく…剣心という名前、比古と呼ばれた男。そして、剣心のあの強さとその意味。
ルイズはそんな事を考え、ベットから降りると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「…ケンシンかしら?」
何だろうと思い扉を開けてみると、恐らく残ることに決めたのだろう、女性の仕官が何人か入ってきた。
「今日祝言を挙げられるヴァリエール嬢に、お粗末ながら衣装の準備をさせていただきます」
「えっ…ちょっと!」
 そう言って、まだ頭がついていけないルイズを他所に、仕官達はせっせと準備を始めた。

「なあ…相棒?」
「おろ?」
「ホントにそれでいいのか?」
 朝、ルイズと同じ時間に、剣心も目覚めた。
 いつもの様に普段着に着替えると、デルフが自分から鞘から抜き出てきたのだ。
「多分結婚なんかしたら、相棒はお払い箱にされてしまうと思うぜ? 貴族ってもんはそういうもんさ」
「まあ、その時はその時でござるよ」
 自分の言葉に嘘はつかせない。もしワルドと本当に結婚したら、ルイズの気持ちが落ち着くのを見届けてから、
ゆっくり元の世界に戻る手掛かりでも考えようと思っていた。
「相棒が言うなら、まあ俺もいいんだがね……それより何か引っかかるんだよなあ…」
「…何が気掛かりでも?」
「いやそっちじゃねえんだ。相棒に振るわれたときな、何か思い出しそうだったんだが…」
 そんな時、おもむろに扉が開いた。相手はワルドだった。
 ワルドは、剣心を見るなり早々出し抜けに言った。
「聞いているとは思うが、今日僕はルイズと結婚する」
「…おめでとうでござる」
「君も参加する気かい?」
「それは、是非出席したいものでござるな」
 ワルドは、少し顔を顰めると、誰も聞こえないのを確認して、ひそひそ声で言った。
「実はだな、栄えある貴族の祝言に、平民である君が参加するというのは、余り無いものなのだよ」
「…では、どうすれば?」
「安心したまえ、君はルイズの使い魔君だからね。必ず出席できるように取り計らうさ。
だからそれまで、別の部屋で待機してもらってもいいかな?」
 そう言うと、ワルドは後ろにいる二人の従者を指す。彼等が案内人のようだった。
「構わないでござるよ」
「そうかい、では早速」
298 :るろうに使い魔2012/08/06(月) 00:06:28.79 ID:gm8eiATi
 剣心は、そのまま従者達に案内され、その部屋へと移動した。彼の姿が見えなくなるのを見届けてから、フッとワルドは嗤った。
「どうぞ、死出の旅路を…『人斬り抜刀斎』」



「なあ、相棒」
「…何でござる?」
「とぼけんじゃねえ、俺が気付いてんのによ」
 茶化すようにデルフがカチカチと鍔を鳴らす。一室に案内されたが、どうにも空気がおかしい。どこか殺気を含んでいる。
 案内してくれた二人の従者も、そのまま帰ろうとはせず、じっと剣心を睨めつけるように佇んでいる。まるで監視しているみたいに…。
 そんな剣呑な雰囲気を知ってか知らずか、何でもないような風に剣心が呟く。
「ざっと二十…でござるな」
「二十二だろ? 後ろ後ろ」
 最早殺意を隠そうともせず、背後の従者が突然杖を引き抜いた。
 しかし、唱えるより先に、振り向いた剣心の鞘から、銀色の閃光が杖を吹き飛ばした。
 慌てた従者の一人が、笛のようなものを使って、潜んでいる仲間を呼んだ。
 一変、辺りはメイジや傭兵たちで一杯になった。その数ピッタリ二十人。
「相手はたかが平民だ、始末しろ!!」
 従者の叫びと共に、傭兵たちはこぞって剣心に襲いかかった。



 始祖ブリミルの礼拝堂にて、ウェールズは壇上に立ち、二人の到着を待っていた。
周りは、誰も彼もが戦の準備で出ており、閑散としたものだった。
 その中で、キュルケ、タバサ、ギーシュの三人は、同じように席についていた。
「しかし、子爵と結婚かあ…」
 どこか惚けた感じで、ギーシュは呟く。タバサはいつも通り本を読んでいて無表情だったが、キュルケもどことなく上の空だった。
「どうかしたのかい?」
「んー、いやねえ…」
 キュルケは今のルイズが結婚を受けるなんて、思ってなかった。どうにもこの式自体、何かきな臭い感じがしているのだ。
タバサも何か感じることがあるのか、視線を本から放してどことなく周りを見渡していた。
299 :るろうに使い魔2012/08/06(月) 00:09:13.22 ID:gm8eiATi
「そう言えば、ケンシンは?」
「あれ? 今日は見てないわね…タバサは?」
「…見てない」
 そんな風に会話をしていると、大きな扉が開けられ、二人の婚約者の来訪を告げた。


 気付けば、ルイズは式場の道を、ワルドと共に歩いていた。
 いつも通りの制服姿に、アルビオンの由緒ある冠を被り、一点の汚れのない白いマントで着飾っていた。
 ルイズの美貌も相まって、それはかなり完成度の高い美しさを誇っていたが、逆に表情は婚約者にあるまじき無表情だった。
 ワルドに、これから結婚すると告げられた時、最初の質問は「ケンシンはどこ?」だった。

「彼か? 君によろしくと言って一足先に帰ったよ、あの男も薄情だな」
 そう言われたとき、ルイズは頭の中が真っ白になった。嘘だったの? あの夜の言葉は…まやかしだったの…と。
 そんな考えが頭をもたげている内に、ワルドはとっととルイズを婚約者に仕立てる準備をしていた。
 そして、いつの間にか本当に結婚する一歩手前まで来ていた。
 相手はワルド子爵、幼い頃からの憧れの存在。
 優しく、強い。貴族の理想ともいえる男性。
 なのに、どうしてこんなにも気分が欝になっているのか。
(…ケンシン…)
 本当に、彼は帰ってしまったのだろうか? ルイズは考えた。
ふと思い出すのは、今朝見た夢の出来事。
『命を捨てても…守らなきゃ…って思ったんだ』
『……大切な…もの…?』
 心太は、誰かを守る力が欲しかった。失った事への辛さや悔しさを知っていたから。
 ワルドは、何のために力を欲しているのだろう…? 彼は、高みへと近づきたいというようなことを言っていた。
 そこに、剣心とワルドの決定的な違いがあるんじゃないか、とルイズは思った。

「では式を始める。新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。
汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻にすることを誓いますか?」
「誓います」
 そんなルイズを置いて、式はいつの間にか進行していた。ウェールズが詔を読み上げ、ワルドがそれに応える。
 ウェールズは次に、ルイズの方を見て同じように読み上げる。
「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」
 ルイズは、ぼんやりとウェールズの顔を見た。結局、私は何で結婚するんだろう…?
 こんなことをしている場合じゃない、早くウェールズを説得しなくちゃならないのに。
(そうよ…こんな事に時間を割いている場合じゃないのに…)
 ルイズは、ずっと考えていた。誰かのために、結婚はするものなのかと。
ずっとそう思っていた。でも、それは違うんじゃないかと思い始めてきた。
 自分が、心から許せる人じゃないと、そこに幸せはないんじゃないかと。それがワルドとは言わないが、少なくとも今は、まだ早い。
(まさかあんたに感謝する時が来るなんてね…)
 チラっと、横目でキュルケを見ながら、ルイズはゆっくりと、しかしはっきりした口調でウェールズ達に告げた。

「私は、この結婚を望みません」

 この言葉に、ウェールズとワルドは唖然とした。
 ギーシュも、これには負けず劣らず驚いている。キュルケとタバサは、何となく予測できていたのか余り驚きは無かった。
「新婦は、この結婚を望まぬと?」
「はい、お二方には、大変迷惑を致すことになりますが…」
 ルイズの心からのお詫びに、本気と受け取ったウェールズは、少し寂しい顔をしたが、ここはルイズの意思を尊重してくれた。
「子爵、誠に気の毒だが、花嫁の望まぬ式をこれ以上続ける訳にはいかぬ」
 ここで、ウェールズは放心しているワルドを見て、気付いた。
 ショック、というのもあるのだろうが、その感じにどこか嫌な予感を抱いた。
「緊張しているんだ、そうだろルイズ。君が!! 僕の結婚を!! 断るはずがない!!」
 肩を掴んで揺さぶってくるワルドに対し、ルイズはきっぱりと言い切った。
「ワルド、御免なさい。憧れだったのは確かよ。でも…それは恋じゃない。だから―――」
 しかし、ワルドはルイズの言葉に耳を貸さず、掴む手をさらに強くする。
300 :るろうに使い魔2012/08/06(月) 00:11:02.18 ID:gm8eiATi
「世界だ!! ルイズ、僕は『あの方』と共に世界を盗るんだ!!」
「…誰よ…『あの方』って…姫さまはそんな事望まないわよ…私も…」
「そんなことは関係ない!! 僕には君の力が必要なんだ。君のその実力が!!」
 ワルドが目を見開いて叫んだ。ルイズは恐ろしくなった。そして悟った…これが…彼の本性なのだと。
 ようやく分かった。ワルドと剣心の姿が、被らない理由が。
 ワルドは、自分の事しか考えていない。彼が求めているのは、有りもしない魔法の力であって、ルイズ自身ではない。だから、心の底から拒絶してしまう。
 被るわけないのだ…人のために自分を顧みない剣心と、自分のために他人を顧みないワルドが…被るはずないのだ。

「子爵、君はフラれたんだ。潔く―――」
「黙っておれ!!」
 仲介に入ろうとしたウェールズだったが、激高したワルドに突き飛ばされた。ワルドは、なおも食い下がらない。
「ルイズ、これだけ言っても分からないのか!?」
「嫌よ!! 誰が貴方なんかと!!」
 ルイズはもう、嫌悪感を隠さずに叫んだ。そしてワルドの手から逃れようともがいた。
異様な空気を感じたウェールズが、再度ルイズからワルドを引き離そうとしたが、今度も思い切り突き放された。
 ウェールズも、これには遂に激怒し、懐から杖を引き抜いた。

「何たる無礼! 何たる侮辱! 子爵、今すぐにラ・ヴァリエール嬢から手を離したまえ!
さもなくば我が魔法の刃が君を切り裂くぞ!!」
 ウェールズだけじゃない、キュルケとタバサも、憮然とした顔で杖をワルドに向けた。
ギーシュは、未だにこの事態についていけないのか、躊躇った感じで見守っていた。
 ワルドは、一旦辺りを見渡して、小さくため息をついた。
「ならば仕方ない…取り敢えず目的の一つは諦めるとしよう」
「目的…?」
 その言葉に、疑問符を浮かべるルイズ達を置いてニヤリとワルドは笑った。
「この旅には目的が三つあったんだ…一つはルイズ、君なのだがこの様子だと無理なようだな」
「当たり前じゃない!!」
 怒って叫ぶルイズに対して、ワルドは特に気にせず続ける。
「二つ目は、君の持つ手紙…アンリエッタの手紙だ。しかしこれはもう、手に入ったも当然。最後は―――」
 そう言って、ワルドはゆっくりと片手を上げた。
言葉の意味を、誰よりも早く理解したウェールズは、いち早く呪文を唱えようとして、ワルドに杖を向けた。しかし……。
301 :るろうに使い魔2012/08/06(月) 00:12:06.74 ID:gm8eiATi
「…がっ…!」
それより先に背後から風の刃が、ウェールズの肩を切り裂いた。
「ウェールズ、貴様の命だ」
 呆気にとられるルイズ達の周りに、突如何人かの人影が舞い降りた。そいつらは、素早くキュルケ達を押さえつけ、取り囲むように周囲に立ちはだかった。

「き…貴様ら…『レコン・キスタ』か…いつの間に…」
 心底憎たらしそうに、呟くウェールズは、そのまま血を流して倒れ込んでしまった。
 気付けば、敵方の兵士たちによって、ルイズ達は包囲されていたのだ。
ここでワルドは、ルイズが今まで見たこともない、邪悪な笑みを浮かべた。

「昨日はあれほどの大きなパーティーだったからね。秘密裏に何人か忍び込ませることぐらい簡単なことさ。王を打倒するには中から崩すに限る」
「宣戦を無視して…裏から攻めいるとは…貴様らには、貴族としての誇りをも失ってしまったのか!!?」
「フン、今更負け惜しみにしか聞こえんな。どんなことをしても勝てばいいのだよ!!」
 怒りで顔を歪ませるウェールズに、ワルドは見下すように嘲笑う。
 ルイズは、ただ呆然とした顔をするしかなかった。
「ワルド…どうして…何が貴方を変えたの…?」
「『あの方』に巡り合えたおかげさ。おかげで僕は更なる高みというのを知った。…だが、今はそれを語ってなんになるんだい?
さて、それでは改めて聞こう、ルイズ」
 ワルドは、取り押さえているキュルケ、タバサ、ギーシュの三人を指して言った。
「黙って僕に付いてきて欲しい、断れば…分かるな?」
 押さえつけてるメイジ数人が、杖をキュルケ達に向ける。
 ルイズは、驚きと恐怖で体を震わせた。今、まさに自分の言葉が三人の命を左右することになっているのだ。
重責とプレッシャーに、心が押しつぶされそうになる。
「そんな…私…」
「今決めるんだ、僕に従くか、それとも見捨てるか」
 これ以上ない程の、冷たい声でワルドが告げる。怖い…ただ、怖い。
 本心から言えば、絶対にワルドなんかに付いて行きたくない。でも、そのせいで皆を見殺しになんて、出来る訳がない。
「騙されるな…ヴァリエール嬢…奴は…そんな約束を守るような男じゃない…」
「貴様は黙っていろ!!!」
303 :るろうに使い魔2012/08/06(月) 00:17:46.11 ID:gm8eiATi
今回はこれにて終了です。いよいよ次から本格的な戦いが始まる! と思います。
それではまた来週この時間に。どうもありがとうございました。
304 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 01:04:56.04 ID:Vf064BBv
乙乙
あの方てのはやはりあの人か?
ジョセフかクロムウェル辺りが火点いてたりするのかね?
いや楽しみです
306 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 12:54:29.88 ID:VrL5z1yh
るろうに読んで懐かしくなって単行本一気読みしたけど、全28巻なのな。
一時は沈みかけたジャンプを支えた作品だというのに。
それを考えると今のジャンプの連載の長さがいかに狂ってるかよくわかる。
そんな中、きっちり終わらせたがもうひろしはえらいな。
307 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 14:21:19.79 ID:f5J9QV9K
ドラゴンボールの末期は毎週「早く終われよ」と念力を送っていた
310 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 16:51:17.92 ID:2U7Dyqwx
ワンピースとかは俺が生きてる間には終わらないんだろうな・・・
312 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 17:02:07.13 ID:yvtazUm/
こち亀は例外中の例外だろって
今のジャンプ編集部にバクマンのジャンプ編集部の半分の実力でもあればな
314 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 19:02:04.79 ID:82oGJem1
かといって取って代われるような書き手も作品もないんだろうな
315 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 19:06:47.47 ID:QBcYpm1G
ジャンプの行く末を憂うなら立ち読みしねぇで買ってアンケ送ったれよ
316 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 19:12:02.22 ID:bRQm0451
ハイキューと暗殺教室好きだけどな
特に松井さんはネウロでも暗殺教室でも終わり方までちゃんと考えてるから期待
って、スレチっぽいな、すまん
317 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 20:35:28.14 ID:XpXiA0cP
やっぱりほとんど完璧にストーリーを作り上げて完結させたダイの大冒険はすごいものだ
ロン・ベルクにデルフを見せたらどう言われるだろう?
319 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 21:27:25.45 ID:bJCtuJF6
>>317
武具には意思があるって言ってたから
「インテリジェンスソードだとォ!?」
とまでは驚かないだろうけど、喋る剣は初めてだろうから興味くらいは持つかも
でも、本人は星皇十字剣に耐えれる強い武器が作りたいから、インテリジェンスソードを作ろうとは思わんだろうな
まあ、ロンは腕の再生に数十年かかるから、その間ノヴァがどこまで成長したかは見てみたいな
318 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 21:26:36.24 ID:TbHqkpDt
ジャンプ……集英社……スーパーダッシュゴー…

もうジャンプを廃刊にして隔月から隔週に変更…ってスレチ。
じゃあ、カンピオーネさんを召喚しようぜ。
320 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 21:32:25.61 ID:I3/8mYEX
原作終了後は鍛冶仕事の道に進んだから…
剣や魔法の腕前より武器防具製作のスキルが育ってるかもな
人格面の成長もあるだろうが

喋る剣は、剣の形した禁呪法生命体とかで充分可能そうだから驚かないかも
322 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 21:39:30.07 ID:XpXiA0cP
デルフを鎧の魔剣にパワーアップさせるくらいはしてくれるかな
340 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/07(火) 16:20:47.68 ID:28KqBL9J
>>322

才人「アムドぉっ!」ガシャガチャーン
デルフ「ようし、いこうぜ相棒!」
才人「ぐあぁっ、重いぃっ!」ドシーン
 
ワルドかアニエスくらいじゃないと無理じゃね
323 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 21:40:47.07 ID:OuwQpaHx
アクマがこんにちは、エタったのかと思ってたらまさかの更新! ヒャッホウ!!!
ついでにWikiでいくつか誤字訂正してみた。

こういうの勝手に出来るのがWikiの良い所ではあるが、荒らしが出る可能性考えると怖いよなぁ。
324 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 21:41:47.09 ID:U/FGR1jm
ダイの剣の鞘とデルフを組み合わせると、受けた魔法を増幅して打ち返せる素敵アイテムに
325 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 22:00:37.01 ID:XpXiA0cP
>>324
それザボエラのマホプラウスだろ
326 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 22:07:20.48 ID:bJCtuJF6
そのダイが行方不明なんだよね

ヴェルザーの動向、聖母竜のいう「ある邪悪な存在」、
あとバーンも死んだじゃなく倒れたとしか言ってないし、
まだまだ先がありそうで終わっちゃったよね
328 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 22:23:41.10 ID:kBLYc3wY
>>326
最終助っ人加入(というかアバン復活)はいろいろ問題もあったんで
余韻を残す、ちょうどいい所で終わったという見方も
329 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 22:43:19.79 ID:bJCtuJF6
>>328
まあ、アバンが死亡したからこその旅立ちだったわけだしな
ラーハルト、ヒム、アバンのおかげでクロコダインはスタメンから雑魚専キャラに
好きなんだけどなクロコダイン・・・
330 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 22:50:39.67 ID:XpXiA0cP
俺はアバン復活で大感動したけど、そのへんは人それぞれの好みか
332 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 23:19:24.87 ID:kipAuasc
アバン復活は展開もあってうまいとおもた
ラーハルトとヒムに関しては必要性を感じなかったけど
333 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 23:31:39.07 ID:JT43PFcI
ダイの大冒険って確か、作者は魔界編も構想があったそうだな。

ポップ達が魔界に行くと、そこには新たな竜騎衆を従えて魔界の第三勢力と戦うダイの姿があったとか言ってたな。
バーン達の地上支配の賭け云々ってヴェルザー以外にも、もう一人参加していて、そいつが地上に行かない様にダイは魔界で戦っていたそうだ。
竜騎衆は陸戦騎に引き続きラーハルト、海戦騎にはクロコダインで空戦騎は新キャラクターだそうだ。
334 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/06(月) 23:54:24.21 ID:bJCtuJF6
個人的に魔界よりも天界がキナ臭い感じがする
魔界は地上のはるか下に広がる暗黒の世界だの溶岩だらけだの魔族の故郷だの
色々言われてるけど、天界に関しては何にもわかってないんだよな
ダイ達の戦いを利用して魔界潰した後、魔界と地上を支配するとか考えてそうだ
用無し兼脅威となるダイを抹殺して、天界の勝利
めでたしめでたし♪って妄想してみた
338 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/07(火) 08:56:08.13 ID:x4anU5BL
そこは一部のやつが制止振りきって強引に立てたスレだから他と違って別に必ずそっちでって物ではないよ
341 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/07(火) 18:07:29.06 ID:vhtgc7i2
まぁ剣の一部ではあっても鎧部分はあくまで防具で武器じゃないしガンダでは無理だろな。
342 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/07(火) 18:09:42.41 ID:I0JrNEm8
もう昔みたいに荒れることはなさそうだけどね
誰召喚しても
344 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/07(火) 21:27:25.14 ID:/6C3NuiV
メガンテか
フーケを吹き飛ばした後粉々になった使い魔を見てルイズが泣き崩れちゃうな
348 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 00:06:44.71 ID:w8HpogiI
>>344
ルーンが刻まれる刺激に反応してメガンテ
の出オチを想像しちまった。(笑)

あるいは、召喚時の爆発に反応して(笑)
349 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 01:04:32.22 ID:HkINdI0Z
るいずはしょうかんのまほうをつかった▼

はぐれめたるがよびだされた▼

はぐれめたるはにげだした▼
350 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 02:28:46.85 ID:BnZfxosF
お散歩ルイズだな
351 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 04:42:43.28 ID:5vyTAdu3
>>350のように幸せの靴を入手するんでなく、復活の玉だったらどうか
ゼロと帽子と本の使い魔的な逆行系SSが書けそう
352 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 10:45:05.56 ID:lY8oTuMY
ワルド裏切りイベントで話の腰を折る様にウェールズにザオリクかける使い魔とか居たら嫌ねw
357 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 14:14:51.07 ID:FDtcaljf
>>352
ふと思ったが、ウィザードリィみたく蘇生に失敗して灰になったら
流石に例の指輪でも復活不可能なんだろうか?w
358 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 14:31:38.97 ID:85FUBP9I
>>352
レイズかけた使い魔なら居ますがな
353 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 11:05:26.94 ID:kJhtNaIc
DQ本編でもストーリーでは「なぜか」ザオリク使われないから大丈夫だろう
354 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 12:48:45.94 ID:DILWEKPK
ロト紋では世界樹の葉は使ってた
そういえばゼロ魔世界にも世界樹はあるんだっけ
361 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 17:48:58.94 ID:DILWEKPK
死亡を確認すれば死んでない
362 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 17:59:20.22 ID:017jC+Ul
>>361
王大人「ウェールズ、死亡確認」
で、その後何事もなかったかのように学院に入学してくるんですね、わかります
365 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 20:00:06.63 ID:t6TaY85v
>>362
男達の使い魔で似たような事やってたな
363 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 18:01:09.53 ID:oL7fN5M3
死んだらオカリナでいやしのうた演奏して未練浄化して
仮面に魂宿して必要な時に仮面かぶって力借りる
364 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 19:25:36.42 ID:HkINdI0Z
おキヌちゃんwith人魂「大丈夫です。死んでも生きられます」
366 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 20:07:00.51 ID:9b3OuuJP
>>364
タバサがチビるな
367 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 20:58:12.75 ID:iq+IZyl2
>>366
幽霊は・・・本当にいた!?ガクブルガクブル
368 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 21:16:19.52 ID:w8HpogiI
腐った死体のスミスとか召喚したら腐ってる死体とキスするハメになるのか(笑)

370 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 21:31:08.07 ID:h03fj+Cc
アキナ「どうにかして陛下やアル兄様のところに行けないかなぁ……」
マルセル「神ならぬ我々が異世界に行く事などあり得るはずがない」
371 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/08(水) 23:13:17.60 ID:0MuT30XM
一発ネタだとしても魔界塔士サガの冒険者達みたいな無骨な奴等が来ても面白そうだよな。
あのゲームの台詞は全体的にネタになる

デルフ「わたしを もっていけ!」→以降出番も台詞もなし

そして容量の都合でうらみのつるぎポジションになるデルフ
377 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/09(木) 01:37:29.18 ID:lR+9hcSe
>>371
シャイターンの門の向こうは「塔」になってるとかいう電波を受信した(笑)

372 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/09(木) 00:26:40.92 ID:e1MCj0DO
生物ではなくデルフみたいな意思のある道具を召喚するとか。
魂が込められた○○みたいな。
375 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/09(木) 01:28:16.77 ID:lR+9hcSe
カーラのサークレット…

いやあれは意志があるっつうか乗っ取られるだけだな(笑)
378 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/09(木) 02:15:41.26 ID:9QX6vhmz
プロアクションリプレイ召喚ものは良い小ネタだった
380 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/09(木) 10:40:21.11 ID:SpaZlbkn
>>378
アヌビス神がなんか可愛くなってたな
379 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/09(木) 09:58:37.50 ID:JeIn9THw
アヌビス神ッ!デルフリンガー!二刀流ッ!!

ジョジョスレのあれ面白かったな
381 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/09(木) 12:34:35.72 ID:SWNVDT/e
シャイターンの門の向こうは怪獣墓場、やって来る武器は宇宙人のもの
門を開いてしまうと数千匹の怪獣にハルケギニアは滅ぼされてしまうのが大災厄
383 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/09(木) 17:23:05.95 ID:b6kfUDfU
むしろ超人墓場でいいんじゃね?
で、大災厄は門の向こうから悪魔超人が出てくるとか
384 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/09(木) 17:29:20.11 ID:9WwdGdyf
唐突に「次鋒レオパルドン召喚されます!」と思いついてしまったじゃないか!
385 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/09(木) 17:37:47.00 ID:dMUBhHbt
というか、レオパルドンさんって
一応は数百万くらいの超人パワーあるから、あれでガンダールヴ能力までついたら
普通に凄く強いはずなんだが、何故か出オチしか想像できないw
386 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/09(木) 17:49:29.24 ID:mVbvY/Ih
ルイズの体にレイブラット星人がウニウニ入っていくのが見えた
387 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/09(木) 19:13:40.32 ID:1GkbLiet
すでにレオパルドンは召喚されてる
想像どうり殺られた
388 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/09(木) 20:12:31.88 ID:XPAWuRQ6
スパイダーマッのレオパルドンなら、あっちのレオパルドンなら何とかしてくれる
391 :ゼロのドリフターズ-132012/08/09(木) 23:30:35.22 ID:nbkmjB/I
 サウスゴータ地方はウエストウッドの森。
ウエストウッドの村の中、ティファニアの家には都合四人いた。
家主のティファニア、シャルロット、キッド、無力化されたメンヌヴィル傭兵小隊残党セレスタン。
セレスタンの杖は破壊され、縛られたままに轡まで噛まされて失神したまま床に転がされている。

 "風のルビー"だけでなく、テーブルにはさらに"始祖のオルゴール"までもがあった。
シャルロットはティファニアから聞いた身の上話を頭の中で整理する――。

 ――ティファニアの父は現アルビオン王陛下にして、ウェールズの父でもあるジェームズ一世の弟。
つまりはウェールズの従兄妹であり、アンリエッタの従姉妹にもなる。
エルフの血を半分引くハーフでありながら、王家の血をも継ぐのがティファニアなのであった。

 ティファニアの父は国王の弟という立場から、王家の財宝を管理する財務監督官という要職に就いていた。
そのような地位の人物であろうがなかろうが、エルフと交流があるというだけでも大問題になる。
それほどエルフとは恐れられる存在で、深く埋められることのない確執があるのだ。
人の目に触れさせることすら憚られるエルフを愛妾として、母娘共に日陰の中で暮らしていた。
そして父の仕事の関係上、ティファニアはルビーとオルゴールを幼少期から触れていたのだった。

 ティファニアは優しい父母と、不便の中でも幸せに暮らしていたが・・・・・・それは唐突に終わりを告げることになる。
どこからかエルフの女を囲っているという情報が漏れ、事が公に露見する前に処断されることになった。
ティファニアは始祖のルビーと始祖のオルゴールを大層気に入っていて、子供ながらに持ち出してしまっていた。
一時的に逃れた父の部下の貴族の家にいることも、最終的にバレてしまって母は殺された。
ティファニアは幼少時にただ一人生き残ってしまったのだった。
その後は、匿ってくれたその貴族の娘にお世話になりながら、この孤児院代わりの小さな村で生活している――。

(――そんな不祥事もまた・・・・・・)
今回貴族派が反乱を起こそうとした理由なのだろうかなどと、シャルロットは考える。
そういった積み重ねが王家の威光を失わせるに至り、取って代わろうという貴族派が動いたのだと。

「勝手に持ってきちゃったのは事実です。でも怖かった・・・・・・。父と離れ離れになったのも、母が死んだことも。
 でもどんなに辛くて、悲しくて、苦しい時でも、オルゴールから流れてくる曲を聞くと不思議と心が安らいだの」

 ティファニアを責めることは出来ない。人は・・・・・・生まれを選ぶことは出来ない。
(私がガリアの血を引くように・・・・・・)
さらにハーフエルフであれば、人間からもエルフからも疎まれる存在となってしまうだろう。
目の前で母親を失い、偏見と差別の中で拠り所をなくした少女の苦悩は・・・・・・いかほどのものであったのだろうか。
そして今も・・・・・・人目を忍ぶように暮らしている、恐らくはこの先もずっと――。
392 :ゼロのドリフターズ-132012/08/09(木) 23:31:12.11 ID:nbkmjB/I
(でも・・・・・・)
もしかしたらアンリエッタならばきっと歓迎してくれるのではと考えてみる。
アンリエッタにとって従姉妹でもあり、彼女は平民への偏見もない。
きちんと説明し、あくまで個人として――。そうすればハーフエルフの彼女を受け入れてくれるかも知れない。
ウェールズ皇太子にしてもそこまで無体なことをするような人物ではないと思う。

 ただしやはり混血でもエルフ。両王が認めても、周囲は認めないだろう。
万が一露見した場合のことを考えれば、両王家にとって非常に憂慮すべき問題になりかねない。


「あの・・・・・・シャルロットさん、あなたのことも聞きたいな」
「そうですね――」
ティファニアにとって辛い生い立ちの話でも、同年代の子と話すのは貴重で嬉しいことだった。
今まで生きてきて一度もない、夢見ていたこと。他愛無い話でも一向に構わなかった。
シャルロットもそんな気持ちを察して語る。短いながらも今だけはせめてと――。

「ガリア王国が滅びたことは知っていますか?」
「えぇ、姉さんからある程度。歴史や読み書き、計算は習ってます」
「なら話は早いです」
シャルロットはそれでも一応わかりやすく語る。ガリアの滅亡と自分達の軌跡――。


「――だから私はこの土のルビーを持っているんです。妹が香炉を持っています。
 貴方が持っているそれは、きっと貴方が思っている以上に貴重なものなのです」

 過去を語り、そこから通告しにくい本題へと繋げる。
6000年もの間、受け継がれてきた始祖のルビーと始祖の秘宝。
間違いなく本物であるのならば、始祖にまつわる最も尊い物品であり、決してお金には換算出来ないもの。
「それじゃあ・・・・・・」
悲しそうな顔のティファニアに同情しながらも、シャルロットは宣告する。
「はい、王家の所有物である以上は・・・・・・」
返還せねばなるまい。目零しするにはあまりに貴重なもの。

「そう・・・・・・ですよね・・・・・・仕方ないです。元々勝手に持ち出したものだし・・・・・・」
これ以上ないほどに落ち込むティファニア。シャルロットは思わず聞いてみる。
「それほどまでに必要ですか?」
「わたしは・・・・・・これのおかげで・・・・・・」
「・・・・・・?」
393 :ゼロのドリフターズ-132012/08/09(木) 23:31:47.23 ID:nbkmjB/I
 ティファニアは少し悩んだ様子を見せたが、意を決するとオルゴールを動かす。
「・・・・・・聞こえますか?」
「いいえ?」
シャルロットはキッドへと目配せする、キッドも同様にかぶりを振った。
「わたしには聞こえるんです、それもこの指輪を嵌めている時だけ」
「はぁ・・・・・・」

 呆けた声をシャルロットは漏らす。あまりにも要領を得ない。
動いてはいるようだったが、単に壊れているだけなのではないのかと。
なにせ大昔のシロモノだ。始祖の香炉もその役割は果たさないし、始祖の祈祷書もかなりくたびれていた。
しかも指輪を着けている時だけに聞こえる?ますますわけがわからない。

「貸してもらえますか?」
頷くティファニアから風のルビーを受け取ると、シャルロットは指に嵌める。
掛けられた魔法によって指輪がピタリとサイズ調整されて、風と土が隣り合わせに並んだ。
しばらく待ってはみたものの・・・・・・やはり曲はおろか音一つ聞こえない。
とりあえず指輪をはずして、ティファニアへと一旦返す。

「この曲を聞いていると安らぐだけじゃなく、歌とルーンが頭の中に浮かぶんです」
「頭の中に浮かぶ?ルーンが・・・・・・ですか」
「それで・・・・・・わたしはそれのおかげで生き延びれたの。その魔法のおかげで、今も平和なんです」
ティファニアはゆっくりと続ける。先程からとても嘘を言っているようには見えなかった。
「その魔法は・・・・・・"記憶を奪う"んです。母が殺され、わたしも殺されそうになった時。
 それまでは歌だけだったんだけど、ルーンも頭の中に浮かんできて・・・・・・それを唱えたの。
 そしたら怖い人達はみんな目的を忘れて去っていった。今も変な人が来たらたまに使ってるんです」

(記憶を奪う・・・・・・?)
シャルロットの頭の中には様々な魔法と効果、ルーンの詠唱呪文が入っている。
それらは当然、自力で魔法を使うことを夢見て昔から詰め込んできたもの。
しかしその中に明確に記憶を奪う魔法なんてものは存在しない。
先住魔法ならば可能なのかも知れないが、その場合はルーン詠唱ではなく口語の呪文になる。

(強いて言うなら・・・・・・)
系統魔法であれば水魔法だろうか。
直接触れて精神操作なりすれば、似たようなことが出来ないこともなさそうである。
『制約』――ギアスと呼ばれる魔法でも、思考を封じて誘導することで近い状態作り出せるだろう。
他にはその道のプロフェッショナルが高度な水の秘薬を作り、惜しまず使えば或いは・・・・・・?
地下水も肉体を乗っ取っている間の記憶を残すかは自由に出来ると言う。
394 :ゼロのドリフターズ-132012/08/09(木) 23:32:22.74 ID:nbkmjB/I
 シャルロットが色々と考えていると、ティファニアは彼女にしか聞こえない旋律に合わせるように唄い出す。

 神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守り切る。

 神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。

 神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。

 そして最後にもう一人……。記すことさえはばかれる……。

 四人の僕を従えて、我はこの地にやってきた……――。


「ミョズニトニルンだって?」
額にそれを刻むキッドが憶えのある歌詞に突っ込む。
「・・・・・・まぁ始祖の歌のようですからね。もし本物で本当に聞こえるというのなら内容に不思議はありません」
伝説を語る歌に出てくるルーンを宿すキッドとブッチ。
残りの二人はどこにいるのだろうと、シャルロットは思う。
「それで・・・・・・それが聞こえてくる歌、というわけと?」
「うん」

(あーーー・・・・・・思い出した)
ともすると頭の中でデルフリンガーの声が聞こえる。
(何が?)
(今の歌で思い出したよ、"ブリミル"のこと)

 デルフリンガーが口にした"名前"にシャルロットはポカンと口を開けてしまっていた。
「はぁ?」
無意識に声に出してしまって、キッドとティファニアが目を丸くする。
「・・・・・・失礼、ちょっと考え事をさせて下さい」

(またいつものか)
と、地下水。地下水自身もそうだが、インテリジェンス・アイテムに込められた意思は長生きである。
そしてその長きを生きる為か、その多くを忘れている。
地下水は適度に暗殺者として働いていたから、そこまででもなかった。
しかしデルフリンガーはかなりの間大人しくしていた期間があって、いくつかの『特性』も忘れていた。
そしてたまに、ふとした時に思い出すことがある。
395 :ゼロのドリフターズ-132012/08/09(木) 23:33:00.86 ID:nbkmjB/I
(おれぁ昔ブリミルに使われてた)
(・・・・・・?)
(・・・・・・何を言い出すんだコイツ)
シャルロットのみならず地下水まで呆れる。されどデルフリンガーは冷静に話し出す。
(正確にはブリミルの使い魔、"ガンダールヴの盾"だった)
嘘・・・・・・は言っていないようであった。この場でいきなり言い出す意味もない。
地下水はそこまで思うところはないようであったが、シャルロットは驚くしかない。

 つまりデルフリンガーは最低でも6000年の時を生きてきて、しかも伝説中の伝説。
始祖ブリミルの使い魔に使われていたなど、「はいそうですか」と信じられるわけはない。
(まだ明瞭としない部分もあるがね、証明出来るよ。あのおっぱいのでっかいお嬢ちゃんと話させてくれ)

 シャルロットは嘆息をついてナイフを引き抜くと机の上に置いた。とりあえず聞くだけ聞いてみようじゃないかと。
「・・・・・・?」
「意思が込められたインテリジェンスナイフです、名を"デルフリンガー"」
「デルフリンガー?そんな名前だったっけ?」
「いえ、地下水の他にもう一人いるんですよ。・・・・・・キッドさんは触った方が早いかも知れませんね」

 シャルロットに促されてキッドは地下水に触れる。額のルーンが輝くとその性質全てをすぐに理解した。
「ああ、よくわかった」
「まぁ一応秘密なので、そこのところお願いします」
二つの意思があることを知っているのは、家族達とアンリエッタ王女くらいである。
切り札である以上は、おいそれと晒したくない。知る人も最小限に留めておきたい信条。


「おう、娘っ子」
一段落した後に、デルフリンガーはティファニアへと声を掛けた。
「えっ!?あ、わたしですね。初めて見ました。その・・・・・・はじめまして」
「おうよろしく。そんでだなあ、お前さんの記憶を消す魔法っての・・・・・・『虚無』だな」

 ティファニアは首を傾げ、シャルロットは静かに聞いていた。
もういちいち驚いていたらキリがなく、突拍子のないことを言い出すのだろうこともわかっていた。
「この世の物ってのは生き物も含めて小さい粒で構成されていて、系統魔法はそこに干渉する。
 んでもって虚無ってのは、粒の中のさらに小さい粒に干渉する――みたいなことを言ってた」

 デルフリンガーは、"誰が"とは言わなかったが、前後から考えれば言うとすれば一人しかいない。
それに虚無を使ったとされるのは、歴史上一人しかいない。偉大なる始祖ブリミルのみだ。
396 :ゼロのドリフターズ-132012/08/09(木) 23:33:44.03 ID:nbkmjB/I
「わたしなんかがそんな・・・・・・何かの間違いですよ」
「そんなに凄いものなのかい?」
何も知らないキッド、さらにティファニアへも含めてシャルロットが解説する。
「虚無はおよそ6000年前の始祖ブリミル。ハルケギニアで最も広く崇拝されているその人が使ったとされる魔法です。
 火・水・風・土のどれにも該当しない。幻の"五番目の系統"――いえ、伝説の始祖たるメイジの虚無系統・・・・・・。
 だから言うなれば"零番目の系統"、ですか。いずれにせよその始祖ブリミル以降は誰も使えたことのない伝説です」

「いーや、ブリミルだけじゃねえよ」
シャルロットの言にデルフリンガーが訂正する。
「表沙汰になってないだけで、時代の中には何人かいた筈だ。潜在的なのも含めてな」
「そんな・・・・・・――」
――わけがないと続けるよりも、実際に見るのが一番早いとシャルロットは判断する。
それはデルフリンガーも考えていたことのようであった。

「娘っ子、魔法見せてやれ。相棒のちっちゃい頭の中にない魔法の筈だからな」
「・・・・・・そうですね、見せてもらえますか?ティファニアさん。丁度いい実験台もいますし」
記憶を"奪う"魔法。地下水の水魔法はあくまで操っている間、精神を眠らせて記憶させないというだけ。
もしくはさながら眠って夢でも見ていたように思わせたりする程度だ。
いずれも操っている間だけのことであり、既に刻まれている記憶をどうにかすることは出来ない。
他の方法にしても、奪うと表現するにはいささか違う。
明確に奪うというのがどういうものなのか。それを見てみないことには始まらない。


 シャルロットはキッドへと目配せする。
キッドもすぐに察したようで、転がっているセレスタンを何度か蹴飛ばした。
「――っ!?」
意識を取り戻したセレスタンを仰向けにし、銃を抜いて額へと突き付ける。
肩を足で踏みつけて、もがくのを多少大人しくさせたところで轡をはずしてやった。

「ッッ!!このクソ野郎が!!殺すなら殺しやがれ!!」
自棄になっているのか、興奮しているのか、気性の荒さか、罵倒が目立つ。
だが本来の傭兵としての冷静さが、周囲を観察しているようだった。
「ここはあの村か・・・・・・よくも木偶で騙しやがって。チッ・・・・・・何とか言えよ!!」
戦慄するほどの強さだったが、だからって人形如きにやられたのが情けなく感じる。
ようやく落ち着き払って、見下ろされている状況を窮屈に感じた時・・・・・・セレスタンは気付いた。
397 :ゼロのドリフターズ-132012/08/09(木) 23:34:22.10 ID:nbkmjB/I
「なっ・・・・・・てめえ!!?」
悠然と五体満足で立つシャルロットの姿。見覚えはある。
遠目ではあったが、確かウェールズ皇太子の影武者らしい者の横で、隊長と相対していた少女だ。
そいつがこの場にいるということは――。

「マジ・・・・・・かよ、隊長が・・・・・・負け・・・・・・た?」
あの隊長が獲物を逃がすわけがない。逃したところを見たことはない。
「そう、私が殺した」
それなりに長い付き合いだった、隊長の強さもよく知っている。
だが少女がここにいるということは、肯定の言葉がなかったとしても、つまりそういうことなのだ。

 シャルロットは一枚の紙を取り出すと、書かれた名前を読み上げる。
「・・・・・・ッ!!」
セレスタンは迂闊に喋るようなことはなかったが、表情を見ればわかった。
元々メンヌヴィルが嘘を吐いたとは思ってもいなかったが――。ここに書いてあることに間違いはない。
セレスタンは一転して大人しくなる。完全に観念したようであった。
隊長が死んだのならもう自分が助かる可能性もない。自殺することすらままならないと。

「ティファニアさん、お願いします」
乱暴なやり取りに怯えていた少女に声を掛ける。それでも頷いて杖を取り出した。
「えっと・・・・・・」
ティファニアの瞳は「どれを?」と聞いてくる。
「先ほどまでの一連の流れを・・・・・・――可能ですか?」
「うん、大丈夫だと思う」

 ティファニアは深呼吸をすると、その艶やかな唇からルーンが流れ出す。
「ナウシド・イサ・エイワーズ――」
なるほど、確かに聞いたことのないルーンだ。しかもどの系統にも当てはまらないパターン。
もしこれで四系統のどれにも該当しない記憶を奪う魔法とやらが発動したなら、納得するしかないだろう。

 先刻の歌声のように、美しい旋律を奏でるように紡がれ続ける詠唱。
キッドはどこか得も言われぬ気分に身を任せる。
いつまでも聞いていたいと思わせる心地良さを感じた時、詠唱は終わりを告げた。
398 :ゼロのドリフターズ-132012/08/09(木) 23:35:03.94 ID:nbkmjB/I
 『忘却 』。
セレスタンの眼前の空気が歪む。少ししてそれが戻ると、セレスタンは呆けていた。
「成功した、と思います」
しばしそのまま観察する。セレスタンはボーッとした後にみるみる内に生気が戻って来るようだった。
「こんにちは」
タイミングを見計らってシャルロットは挨拶する。まるで今初めて会ったかのように。
「てめえ・・・・・・は・・・・・・?」

 その表情と態度に既知感を覚える――確定だ。
「隊長は!?」
「言わないとわからない?」
「あ・・・・・・あぁ、でも・・・・・・あれ?隊長は死んだ、だけど本当にお前が殺したのか?」
「えぇ、そうだけど・・・・・・?」
シャルロットは疑問符を浮かべる。忘れてはいるようだったが、どこか齟齬がある感じ。

「あの・・・・・・奪うと言っても消えるわけじゃなくて、大抵別のことで埋まるんです」
「なるほど」
シャルロットはこれ以上の問答は無用と地下水を握り、セレスタンを『眠りの雲』で眠らせた。
具体的に聞かれると面倒だし、乱暴に気絶させてはまたティファニアを怖がらせてしまうだろうと。

「つまり・・・・・・書き換えられるわけですか?」
「はい、当たり障りない感じで・・・・・・すり替えられるみたいです」
「ふむ――」
認めざるを得ない。記憶そのものに干渉してこうもあっさりと任意に改変するとなれば、四系統魔法の域を超えている。
シャルロットが椅子に座ると、キッドとティファニアも同様に座り直した。

「――虚無の担い手・・・・・・、間違いないらしいですね」

 シャルロットは自分自身を言い聞かせるような声音で、そう言った。
401 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/10(金) 18:01:07.73 ID:O2KhBZks
「この秘孔を突けばお前のパワーとスピードは3倍になる」
と言ってウェールズ以下王党派をムキムキにしてまわる某天才どの
402 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/10(金) 19:21:17.61 ID:NFnilKmM
>>401
「ん〜? 間違えたかな?」でワルドが裏切る前にウェールズ死んじゃうw
406 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/10(金) 22:28:29.02 ID:EGpfZeJs
なんだかんだで北斗神拳と南斗聖拳を両方ある程度は使えるんだから
ワルドより強いはずだが、こいつもどうもかませ臭が…w
407 :るろうに使い魔2012/08/11(土) 00:54:25.23 ID:EXz1YYql
皆さんこんばんわです。さて、予定がなければ一時丁度に投稿しようと思います。
408 :るろうに使い魔2012/08/11(土) 01:00:22.09 ID:EXz1YYql
それでは始めさせていただきます。


「遅くなってすまない。話は此奴と、ルイズ殿の目と耳から直に聞いたでござる」
 呆気にとられるワルドたちを他所に、剣心は倒れた従者を見下ろし、そして今度は相手方を見る。
その双眸は、首謀者であるワルドを厳しく睨みつけていた。
「貴様…あれほどの数をどうやって…」
 若干驚いたように、ワルドが詰問した。その問いに、デルフが愉快そうに答える。
「あれほど、ねえ…今度は倍近く置いとくことを勧めるぜ。まあそれで相棒に勝てるかは別だけどな」
 皮肉を込めた返答に、ワルドは少し顔を顰めた。数による優勢は以前変わってはいない
とはいえ、これは少々予定外だった。
 剣心は、それに気にせず次にルイズの方を見ると、この雰囲気に合わないような、いつもの優しい笑顔を見せた。
「心配かけたでござるな。ルイズ殿」



     第二十一幕 『決戦』



「ケンシン……」
 その言葉に、ルイズはあの重苦しい重責から開放されるのを感じた。ああ、本当に彼の笑顔は、全ての不安を溶かしてくれる。
 いつの間にか、絶望に流していた涙が、安堵の涙へと変わっていった。
 それを横目で見ていたワルドは、眉間を深く寄せると、剣心の顔を見て勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「フン、感動の再会のところ悪いが、君は今のこの状況を分かっているのかい?」
 ザッ、とメイジの杖が一斉に剣心に向く。そのメイジの数、ゆうに先ほど襲ってきた数の倍はいる。
 軍の一個中隊にも匹敵するその数が相手だというのに、剣心は悠然と歩を進め、ワルド達を見据えた。
「…無闇に怪我人は増やしたくない。医者通いが嫌なものは、今の内に早々に立ち去るでござるよ」
 逆刃刀の鍔を鳴らしながら、剣心は憮然と告げる。ワルドは凶悪な笑みを浮かべると、手を振って命令を下した。
「怪我人なんぞ出やしない。出るのは死人貴様一人だけだ!!」
 それに応えるように、メイジは一斉に呪文を唱え始める。
あと少しで、剣心の周りに、魔法による暴力が展開されそうになる瞬間、彼らは見た。 


 ルイズに向けてた、慈愛に満ちた笑みから一転、鬼のような迫力と形相を持ってメイジの軍勢に突っ込んでくる剣心の姿を―――。


「―――――なっ!!!!」
 呆気にとられる彼らを他所に、剣心は逆刃刀を鞘から引き抜く。
 煌く刃の光が顔を出した瞬間、その光は目の前に立っていたメイジ数人をいともたやすく吹き飛ばしていった。
「ぎゃあ!!!」
「なっ何だぁぁ!!!」
「ひっ…うわああああ!!!」
 刹那閃く剣の軌跡。そして疾風の如く唸る赤い閃光。
 刀を振り上げれば、今度は四・五人のメイジが訳も分からず宙を舞う。
 台風の如く振り回せば、それに倣って何十人ものメイジが巻き上げられていった。
 その圧倒的な速さの前に、敵は対応できる筈もない。それはまさに彼らで言う『常識』の範疇を超えた現象だったからだ。
「な…何だこれは!!」
「せ…先住魔法!!?」
 あまりに追いきれない速さを目の当たりにして、思わずそう錯覚し、愕然とするメイジ達を尻目に、ワルドは心の中で否定する。
 違う、奴は平民だ…先住魔法なんて使えるわけない。それは事前情報で知っている。ただ、『速い』のだ…圧倒的に…。

(剣の速さ…身のこなしの速さ…そして相手の動きの先を読む速さ…)

 この三つの速さを最大限に活かすことで、最小の動きで複数の相手を、同時に仕留めていることを可能にしているのだ。
409 :るろうに使い魔2012/08/11(土) 01:03:54.86 ID:EXz1YYql
 これが、飛天御剣流―――――――。
「…人質だ!! 人質を使え―――」
 そう言いかけた時、ワルドの目の前に、メイジの唱えたものとは違う、氷の風が吹き荒れ敵のメイジ達を打ち倒した。
その中心にはタバサがいた。
 やられた…!! ワルドは心の中で、まだあの男を過小評価していたことに気付く。
 奴は、ただ暴れていた訳ではない。数十もの数を相手にしている裏で、タバサ達を押さえつけていたメイジたちも倒していたのだ。
 その考えにワルドが至ったときには、既に炎の爆発で何人かのメイジを吹き飛ばしていた。
 勿論その灼熱の炎の主は、他ならぬキュルケだった。
「ありがと! 助かったわダーリン!!」
 キュルケのお礼が終わった直後には、剣心は既に、ギーシュに取り巻く敵たちを全て薙ぎ倒していた。
 残りのメイジ達も、最早統率を失った烏合の衆。正常な判断が下せないまま、キュルケの火とタバサの雪風で吹き飛ばされていく。
 数でも勢いでも完全に形勢逆転した中、いよいよ剣心は、その鋭い眼をワルドの方に向けた。
「……くそっ!!!」
 せめてルイズだけでも人質に…そう思い、ワルドは荒々しくルイズの肩を掴んだ。
しかし、その間を何かが通りすぎるのを感じ、ワルドは本能的に手を引っ込める。
飛んできた『何か』…その正体であるデルフは、投げられた勢いに従って地面に突き刺さった。
「…くっ…いつの間に―――」
 ワルドが驚き、呆然としている最中、恐ろしい殺気を肌で感じた。
 振り向けば、鬼のような形相をして跳んだ剣心が、逆刃刀を手に横薙を打つ途中だった。
 危機感を感じてワルドは杖を抜く。ガキィン!! と逆刃と杖が光を持って交わる。
「…ぐおっ…」
 しかし、剣心はその痩躯の腕からは想像もつかぬ程の腕力で、鍔迫り合いをするワルドを押しやっていった。
 ギリギリと軋む音を鳴らしながら、二人はしばし競り合っていく。
「貴様…やはり力を隠していたな!!」
「…お前と違って暴れるのは、さほど好きじゃないんだ」
 冷や汗を流しながら受け続けるワルドに対し、剣心は淡々とそう返す。決闘の時とはまるで別人のような変わりように、改めてワルドは戦慄を覚えた。
「だが…こうなると分かっていたなら、あの時…」
 ゆっくりと言葉を続けると同時に、剣の押しも徐々に増していく。受けている杖の音が、高い音から段々と鈍い感じに変わっていくのを感じた。正直、何時杖をへし折られてもおかしくはなかった。
「叩いておけば良かったと、今は思うよ」
 底冷えするような声に、ワルドは戦きながらも、一旦逆刃刀を弾いて体勢を整える。
 直ぐ様、剣心を吹き飛ばそうと呪文を唱えようとするも――――。
「―――があっ!!!」
 バァン、という甲高い音と共に、杖を持つ手の甲に向かって、寸分の狂いもなく逆刃刀の切っ先が叩きつけられていた。
 痛みで一瞬、詠唱を中断するワルドだったが、何とか堪え改めてルーンを呟く。
 選択したのは、『エア・ニードル』。杖を中心に風の振動が加わり、鋭さを増した刃を、剣心の脳天に向かって繰り出した。
 明らかにその姿を捉えての刺突の一撃だったが、それが額に当たる瞬間、剣心の姿が残像のように消え去り、そして…。
「ぐおあっ!!!」
 いつの間にか半回転でよけながら、背後に廻った剣心の、すれ違いざまの横薙ぎが後ろの首筋目掛けて衝突。
ワルドは物言わずそのまま飛んで行き、礼拝堂の壁に思い切り叩きつけられた。

「飛天御剣流 ―龍巻閃―」
 
 剣心は、吹っ飛ばされて巻き起こった煙の先を視認した後、憮然として言い放った。
「拙者を突き殺そうとするなら、せめて『牙突』位のものを繰り出してこい」
そう言って、剣心は一旦刀を鞘に納めると、いつものニコニコ顔でルイズに駆け寄った。
「怪我は無いでござるか? ルイズ殿」
 ルイズは、しばらくポカンと剣心を見つめていたが、やがて思い出したかのごとく涙を流した。
「もう…帰ったなんて言うから、びっくりしたじゃないの…もっと早く来なさいよ…ばかぁ…」
「すまなかったでござるよ」
 弱々しい声でしゃくりながら泣き出すルイズを、剣心は優しく頭を撫でる。ルイズは、それを素直に受け入れていた。
 しばらくの間そうしていると、煙の向こうからワルドの声が聞こえてきた。
「成程…『ガンダールヴ』と謳われるだけのことはあるようだ…聞きしに勝る強さだな…」
 晴れてきた煙の中から、ゆっくりとワルドは立ち上がった。ダメージこそ負っているが、まだ戦闘不能までには至っていないらしく、余裕の笑みすら浮かべている。
410 :るろうに使い魔2012/08/11(土) 01:06:38.79 ID:EXz1YYql
「『ガンダールヴ』? そうか!! 思い出したぜ相棒!!!」
 と、ここでデルフが弾かれたように叫んだ。よほど嬉しいことなのか、何やら楽しそうに喚いている。
 剣心は、そんなデルフを軽く一瞥しながら、ルイズを下がらせて、ジリジリとワルドへと向かっていく。再び、お互いの間に一触即発の空気が流れ始めた。


 その頃には、あらかた敵を倒し終えたキュルケ達も、こちらを見る余裕ができていた。
「やっぱり…決闘の時は、ダーリンも、ワルドも手加減してたみたいね」
「でも、子爵のあの余裕は何だろう…僕、少し怖いよ」
「………」
 周りが見守る中、まずワルドが動き出した。杖を掲げ、天を仰ぐような仕草をする。
「何故風の系統が最強と呼ばれるか、その所以を披露いたそう」
 そして、朗々とルーンを唱え始めた。
「ユビキタス・デル・ウィンデ……」
 剣心は、今度はルーンを唱えるまで待つ。相手の出方を伺っていた。
 やがてルーンが完成したのか、急にワルドの身体が、二体、三体と増え始める。
 本体を合わせてゆうに五体。それが剣心の前にずらりと並んだ。
「『偏在』…か」
「御名答、よく知っていたな」
 全てを悟ったかのような剣心の言葉に、ワルドが答える。タバサも、ここで何か気づいたかのようにハッとした。
「仮面の男も、お前の仕業か」
「正解だ」
 ワルドは、懐に手をいれ、そして何かを取り出して剣心に見せた。それはボロボロに砕け散った、仮面の残骸。
 あの夜奇襲を掛けた謎の男は、ワルド自身だったのだ。
「成程、もっと早くに気付いていれば、このような事態を起こさずに済んだということか」
 ここで剣心は初めて、少し悔しそうな顔をした。それを見ているだけで優越感に浸ることのできるワルドは、悦びで顔を歪ませた。
「そういうことさ。まあ、今更気付いた所で、この数はどうにもなるまい!!!」
 偏在のワルド達が、一斉に杖を向ける。一人一人が意思を持つ物体ゆえ、それぞれが独立して動くのだ。
 しかし、剣心は悔しそうな顔をするだけで、この状況に関してはどこ吹く風の様子だった。油断なく偏在を見つめるその目に、些かの恐怖も写ってはいない。
「…この程度で勝ち誇れるとは、随分と早いものだな」
「その減らず口も、これで終わりだ!!」
 ワルドの叫びと共に、杖から呪文が投げ掛けられる。
「『エア・ハンマー』!!」「『ウィンド・ブレイク』!!」 「『エア・カッター』!!」「『エア・ニードル』!!」
四つの風の魔法が、剣心に殺到し、その場に暴風を叩きつけた。
剣心は、すんでのところでこれを回避したが、最後の本体のワルドは、これを見逃さなかった。
「フン、見えてる見えてる。左だ!! 『ガンダールヴ』!!!」
 剣心の動きを遂に捉えたワルドが、杖を突き出し呪文を唱える。刹那、雷のような一筋の閃光が、剣心に襲いかかった。
 ドゴン!! と落雷のような音を発して、辺り一面を光が覆った。
「『ライトニング・クラウド』だ。まともに喰らえば命はあるまい!!!」
 高笑いをしながら、ワルドは勝ち誇ったように叫んだ。
「ケ…ケンシン!!!」
 ルイズ達ですらも、この光景に唖然とする中…しかし冷ややかな声が、ワルドの背中から聞こえてきた。

「見えてる見えてるって、拙者の残像でも見えたでござるか」

 ゾクッと背筋が凍りつくのを感じながら、ワルドは撥ねるように振り返った。
 そこには、以前傷一つついてない剣心が、逆刃刀を構えながら悠然とした様子で立っていた。
「そんなに速く動いたつもりは、なかったんだがな」
「くそ…おのれ!!」
 ワルドは再び、偏在を繰り出し、やたらめったらに剣心に躍りかかった。
 杖の乱舞と風の魔法を前にしても、剣心は動じず的確に読みそして避けきっていく。そしてその様子を、本体のワルドがジッと見据えていた。
 (今度は見逃すものか…!!)
ワルドは必死の形相で、剣心の動きを正確に追っていた。
 タンッと、不意に剣心の姿が消える。しかし、ワルドの視線は今度こそ剣心を捉えた。
「上だ!!!」
 宙を見れば、剣を掲げてワルドの頭上を跳ぶ剣心がいた。残像などではない、正真正銘の本物だった。
 好機、ワルドはそう思った。空は風の独壇場だ。わざわざ墓穴を掘ったな! と。
411 :るろうに使い魔2012/08/11(土) 01:09:12.60 ID:EXz1YYql
「これで最後だ!!」
偏在総出で、一斉に頭上目掛けて、剣心を串刺しにしようとワルドは杖を構えようとして―――。
「――――なっ!!」

 ここで、周りに偏在が一つもないことに気付いた。

(何故だ!! 何故……)
 ワルドが目で追ったのは、あくまでも剣心の『身のこなしの動き』のみ。
『剣の振り』『先の読み』まで見きれなかったために、剣心がワルドの偏在全てを叩き斬っていたことに気づかなかったのだ。
 もし広く周りを見渡していれば、偏在が一つ一つ消えていくことにも反応出来ただろう。
しかし、躍起になって剣心の動きばかり追っていたために、今この瞬間になるまで、全然気付かなかったのだ。
 結局、墓穴を掘っていたのはワルド自身だった。それを悟ったときには、もう遅かった。


「飛天御剣流 ―龍槌閃―!!!」


 既に至近距離まで近付いた、剣心の渾身の唐竹割りが、ワルドの頭上目掛けて炸裂した。
「くっそおおおお!!!」
 刹那の反応の中、ワルドは何とか、掲げた杖を防御にまわすことが出来た。
 しかし、所詮は力のこもっていない形だけの防御に、逆刃刀の勢いを完全に殺すことはできず、そのまま滑って肩を強打した。
「がっ……!!」
 声にならない呻き声を上げながら、ワルドは膝を付く。剣心はフワリと優雅な姿勢で着地した。
 ワルドは、愕然とした様子で剣心を見た。
「もう終わりだ。諦めろ」
 やはり、強い……。実際に戦ってみて、想像以上だと思い知らされた。
 平民や傭兵どころか、並みのメイジにすら遅れを取らなかったはずなのに、この男は『あの方』と同じように自分の強さの、さらに先を行っていた。
(まともにやったら…まず勝てない)
 どうすれば…そう考えを巡らす内に、ふと倒れているウェールズの姿が写った。そこでワルドがニヤリと笑う。
(そうだ、先に奴を仕留めてこの男の動揺を誘えば…)
 そう逡巡し、ワルドは視線をウェールズへと向けた。



「…強い…ねぇ…」
「ダーリンって…あんなに凄かったんだ…」
「…相手は、『スクウェア』クラスの筈」
 一連の光景を見ていたキュルケ達が、揃って口をぽかんと開けたまま立っていた。
 助太刀でもしようかと身構えていたのだが、その必要もないほど剣心はワルドを相手に圧倒している。これでは寧ろ邪魔になりかねなかった。
タバサに至っては、少しでも剣筋を見極めようと剣心の動きを、目を大きく開けて見つめていた。
「あんた、ホントに凄いの召喚しちゃったわね―――」
 決闘の時とは段違いの強さに、改めてキュルケは、彼を召喚したルイズを見て…。
「…ルイズ…?」
 ルイズが、どこか不安そうな様子で剣心達を見ていた。

(何だろう…、この嫌な予感は…)
 剣心は強い。たしかにそうだ、ワルドに対して彼はもう絶対に負けないだろう。
なのに、それとは裏腹にモヤモヤする感情が今、ルイズの中で渦巻いているのだ。
(…ケンシン…)
 そして、今この瞬間、剣心の『龍槌閃』が決まり、膝をついたワルドの表情を見て…ルイズはゾクッとした。
 あの目は、あの凶悪な笑みは、何かよからぬことを考えている目だ。
 そして直ぐにハッと気付く。ワルドの狙いは、ウェールズに向けたのだと。
「…―――ウェールズ様!!」
こうしてはいられない。ルイズは倒れたまま蹲っているウェールズの元へと、一心不乱に駆け出した。

「ルイズ殿?」
 ここで、剣心もルイズの行動に気付いた。しかし、唯一タイミングの悪いことに、ワルドにもそれを読まれてしまっていた。
「無駄なあがきだ!! ルイズ!!!」
 弾かれたように、ワルドは杖を構えると、偏在を一つ召喚した。偏在は、風の如き速さでウェールズの元へ殺到していく。
412 :るろうに使い魔2012/08/11(土) 01:11:40.18 ID:EXz1YYql
 剣心も向かったが、その前に本体のワルドによる『エア・ハンマー』が飛んできた。
「貴様の相手はこの僕だ!!」
 何とか回避したところを、ワルドは狂喜の笑みを浮かべながら、剣心に杖を繰り出した。そして更に覆いかぶさるように、他の偏在も襲いかかった。

「殿下!!!」
 ルイズは叫んだ。敬愛する姫の恋人、優しく勇敢な皇子様。
 血を流して、倒れている彼の元に、この騒動の元凶である偏在が突っ込んでくる。
 ルイズは杖を抜いた。失敗ばかりの魔法に、どれだけの効果があるかなんて分からない。

 それでも、目の前の人だけは死なせてはいけない。

 そんな想いが、ルイズの口からルーンを紡がせる。フーケの時に言ってくれた、剣心の言葉を信じて。
「届いて!!!」
 『ファイヤー・ボール』を唱えたつもりの、その名ばかりの失敗魔法が、杖の先から放たれた。魔法の光は、そのままワルドの偏在へと飛んでいく。
 偏在は、完全に舐めきった様子だった。回避すれば出来た筈のそれを、杖で受け切ろうとして…刹那、爆発と共に吹っ飛んだ。
「――――なっ!!?」
 ワルドやキュルケ達だけでなく、ルイズもこれには呆気に取られたようだったが、今はそんな事をしている場合じゃない。
 ルイズは、ウェールズの元へと辿り着くと、体を抱き起こした。
「大丈夫ですか、ウェールズ殿下!!」
「な…何とか…ね」
 肩こそパックリ切られて血を流してはいるが、まだ命に関わる状態でもないようだ。
ルイズに助け起こされると、ウェールズは改めてワルドと偏在を相手に戦っている剣心を見た。

「彼は…一体…?」
 ウェールズは不思議だった。使い魔、というのもあるのだろうけれど、完全な部外者である彼が、何故ここまで戦ってくれるのか。
「ここは、ケンシンが何とかしてくれます。だから―――」
 ルイズは、肩の傷をハンカチで結びながら言った。そして、決心するかのようにウェールズの手を取った。
「これが終わったら、せめて姫さまに一目会ってください。姫さまも、それを望んでおられるはずです」
「しかし…部下を見捨てて、自分だけ生き残ろうなど…」
「それでも、殿下一人でも生きておられれば、悲しむ人も少なくなるはずです」
 その言葉に、ウェールズは暫く俯いていた。何が正しくて、何のために命を懸けるのか、もう一度よく考えているのだった。
 色々なことが頭を駆け巡る。一度は、誇りのためにこの命を捨てるつもりだった。
 だが、剣心とルイズに諭され、その中で浮かんできたのは、花のように美しい彼女の笑顔だった。
(―――アン…)
 もう一度、それを見るのを許されるのなら……。


「そうだな…彼女の顔も…暫くぶりに見たくなったな…」
「殿下!! それでは―――」
 ルイズの顔が、笑顔で満ち満ちた。涙を流しながら、喜びで震えている。
(彼女も、こんな風に泣いて喜ぶのかな…)
 ウェールズはそう思いながら、ルイズに肩を貸してもらいながら、ゆっくりとその場を離れようとして……。
「―――――っ!!」
 先程ルイズが吹き飛ばしたワルドの偏在。それがおもむろに立ち上がり、ルイズの背中目掛けて杖を突き出して来た。
余りの出来事に、タバサ達はおろか剣心も反応が遅れた。
「危ない!!」
 咄嗟にウェールズは、ルイズを突き飛ばし、杖を引き抜こうとする。
 しかしそれより先に、ワルドの杖がウェールズの胸を貫いていた。


「……ウェールズ…殿下…?」
 ルイズは、呆然としたままそれを見ていた。
 いきなり押され倒されたと思ったら、その先には庇うように立つウェールズの姿と…胸
から飛び出ている杖の切っ先と…そこからじわりと広がる…赤い血。
 杖を引き抜くと同時に、ウェールズは糸が切れたように崩れ落ちた。
「…いや…いやああああああああああああああああああああああああ!!!!」
 ルイズは、吹っ切れたように叫んだ。涙が溢れる。体が震える。
 ウェールズは、ルイズにもたれかかるように倒れた。ルイズは、とにかく必死にウェールズに呼び掛けた。
「殿下、殿下!! どうして…私を庇って…」
413 :るろうに使い魔2012/08/11(土) 01:15:02.48 ID:EXz1YYql
 しかし、ウェールズは何も答えない。ただ虚ろな視線を、空に写すだけだった。
 ルイズは、ただただ泣いてウェールズを抱きしめた。その背後で、偏在が杖を向けて…。

「飛天御剣流 ―龍巣閃―!!!」

 突如舞い降りた剣心による、無数の斬撃の嵐が偏在に襲いかかった。
 逆刃の方とはいえ、強力な打撃をしこたま打ち込まれた偏在は、今度こそ完全に消滅した。
「ウェールズ殿!!」
 剣心が看た時には、ウェールズは既に虫の息だった。キュルケ達も、慌ててウェールズの元へと駆け寄った。
「無駄だ! 心臓を貫いた以上、そいつは死ぬ!!」
 遠くで、ワルドの高らかな声が聞こえる。タバサやキュルケも、彼の傷はどうしようも
ないことを悟ってしまった。
「殿下…何で…」
 悲しみにくれるルイズに、その時ウェールズが、優しく彼女の頬に手を触れた。
「いいんだ…僕はここで死ぬ身だった…君まで…巻き込むわけにはいかない…」
「そんな!! だって…」
 ルイズはウェールズの手を取る。段々と温かみが薄れていく。
死の感触。命の消滅。それを痛いほどルイズに知らせてくる。
 だけど、ウェールズの顔は、それとは裏腹に、どことなく爽やかだった。
「君に…頼んでいいかい…?」
 ここで、ウェールズの目が、剣心の方を向く。剣心は苦しそうな表情で頷くと、途切れ途切れな声で言った。
「アンに…伝えてくれ…悲しまないで、と…君は僕を忘れて…幸せに…生きて欲しいって…」
 ここで、ウェールズは口から血を吐いた。
「死なないで!!」ルイズはそう叫んだが、それに反して彼の命の灯火はゆっくりと燃え尽きていく。
「最後に…会えたのが、君達で…本当に、良かった…頼む……友…よ…」
 虚ろな目を、剣心に移しながら、ウェールズは静かに目を閉じて、そして…事切れた。
 ルイズは、泣いた。ギーシュも、目から溢れんばかりの涙を流す。
 キュルケとタバサも、彼の死に追悼の念を抱いていた。

 剣心は、暫くの間顔を俯かせていた……。その目に宿るものは何か、ルイズ達には分からなかった。
(救えなかった……また…拙者は……)
 そして知らず、左手のルーンが輝き始める……。妖しい光を放ちながら…。その光は、剣心の…昔々に封じ込めた記憶を…強く呼び起こし、そしてこじ開けていた。
(………『俺』は……っ!!!)

「フン、やっと死んだか」
 ワルドの冷ややかな声に、ルイズ達は一斉に睨みを効かせる。しかし、そんな殺気など取るに足らず、と言わんばかりにワルドは受け流した。
「よくも…殿下を…」
「安心しろ、君も仲良くあの世に送って――――」
 その時、ドカァン!! と巨大な衝撃音が礼拝堂を響きわたった。
「ぐおっ!!」
「きゃあああ!!」
 次にルイズが視認したのは、なすすべなく吹っ飛んでいくワルドの身体と……。
 刀を振り切ってその前に立つ、剣心の姿だった。
「ケン…シン…?」
 ルイズは、すっかり呆気にとられた様子で、剣心の後ろ姿を見た。そして声を震わせた。怒っている…剣心が…。ここにいる誰よりも……。
 その目には、先程戦っていた表情とはどこか違う、根本的に別とも言える怒りを、彼は宿していた。
「…ウェールズ殿は、ただ普通に平和を望み、恋人を愛する青年だった。それを……」
 ルイズは身体を無意識に震わせた。恐い…。『烈風』の二つ名を持つ母親が本気で怒った時と同じくらい…いや、これは正直その比ではない。
「俺はまた…救うことができなかった…」
(…え、……俺?)
 やっぱり違う…言葉遣いが…一人称が変わっている…。
 刃のように煌く瞳。淡々と告げる言葉に匂わせる冷酷な殺気。まるで別人かのような恐ろしい雰囲気……。
 周りを見れば、ギーシュもルイズと同じように身体全体を震わせている。キュルケも思わず背筋が凍りついている様で、タバサですらその顔から冷や汗が流れ出ていた。
414 :るろうに使い魔2012/08/11(土) 01:18:07.58 ID:EXz1YYql
「ワルド…貴様つくづく救えぬ男だな」
 燃えるような怒りではない、段々と冷えていくような声に、ワルドは戦慄く。
(こ、これが…そうか…)
 しかし、闘志までは消えてはいない。目的は達成したのだ。直ぐに帰還してもいい。
だがその前に、どうしても確かめておきたいことがあった。
(これが人斬り…抜刀斎!!)
 すなわち、この男の強さ。
 人づてでしか聞いたことはないが、かつて最強と謳われた程の実力を、ワルドは身をもって体験したいと思っているのだった。
 それが、『あの方』に追いつく強さにも繋がるだろうから―――。
「いいだろう、来るがいい。最強と呼ばれたその腕、しかと見せてもらうぞ、『ガンダールヴ』!!」
 熱を持って叫ぶワルドに、剣心の答えは淡々としたものだった。
 だがワルドは気付いてない。今このハルケギニアで、最も怒らせてはいけない男の逆鱗に、とうとう触れてしまったことに……。
「貴様には、生き地獄を味わわせてやる」


これにて終了です。いよいよアルビオン編も佳境になりました。
明日にはこの戦いにも決着がつくと思います。
それでは、ここまで見て頂きどうもありがとうございました。
418 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/11(土) 02:44:44.49 ID:Piuat+cM
るろうにの人お疲れ様です!
やっぱ剣心強いな
やべえ目茶苦茶胸熱


さよならワルド
420 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/11(土) 03:43:36.97 ID:Tpw7c1xk
石動雷十太みたいに心をへし折られるんだろうな〜

さよならワルド
421 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/11(土) 04:37:35.94 ID:XVuKi97v
乙 
逆刃じゃなければウェールズが助かってただけに辛いだろうね
424 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/11(土) 21:28:19.76 ID:9QZ/QZr6
剣心には殺されずにすんでも数年後にアンアンに「人誅」されるワルド
425 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/11(土) 22:21:34.69 ID:2xIo1tat
さよならワルド。って、なんだこの准尉を送る最後の大隊的なw

るろうに乙!
430 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/12(日) 20:25:42.26 ID:AfNVK/gQ
>>425
むしろワルドは熱狂的再征服側だし神父に処刑されるやれば出来る子みたくするべきだったかも
426 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/11(土) 23:00:17.42 ID:VRg6k02o
流竜馬を召喚したらデルフの素材が実はゲッタートマホークの破片とかになるのかしら?(新ゲッターロボの童子切丸的な感じに)
428 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/11(土) 23:16:02.06 ID:9QZ/QZr6
才人「デルフ、お前ゲッター線のおかげで復活したのか!」
デルフ「へっ、ゲッター線がおれっちに詫びを入れただけのことよ」
429 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/11(土) 23:23:46.39 ID:84I8q9rp
でもゲッター線で進化すると使い手が竜馬ならトマホークになっちまいそうだよなw
つーかエルフ達の立ち位置が新ゲッターロボに出た四天王みたいな感じになるんじゃね?
433 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/12(日) 22:47:51.14 ID:nWEoQoPz
ワルドは原作でもタルブ侵攻の時にでも死んどけばよかったのにな
最新話じゃますます小物臭だしてるし
434 :るろうに使い魔2012/08/12(日) 22:52:21.03 ID:Wvg3Mmir
こんばんわです。それでは予約もないようなので、11時から投稿を始めたいと思います。
436 :るろうに使い魔2012/08/12(日) 23:02:41.60 ID:Wvg3Mmir
(帰るなら、みんな一緒で…)
そんな事を考えてる内に、声が聞こえた。

「成程、そこから逃げようとする算段だったのか」
 ルイズ達はその声の方向を見た。何と後ろにはワルドの偏在がいた。
「なっ…!!」
「い、いつの間に……」
 その向こう側では、何とか間に合わせようと必死にルーンを唱えるキュルケ達がいた。
 一瞬の隙をついて、戦線を離脱した偏在が、まずはルイズから仕留めに来たのだ。
「残念だが、そうはさせない。君には皇子の後を追ってもらおう―――がぁっ!!」
「えっ……」
 杖を振り上げた偏在の後頭部に、突如ゴンと大きな音を立てた。
 ルイズ達が見れば、そこには逆刃刀の柄尻が偏在の頭から生えていた。
 フーケから救ってくれた時に使った、飛天御剣流『飛龍閃』だった。

「ケンシン!!」
 ルイズは思った。ということは、今剣心は武器を持っていない。
見れば、剣心は鞘だけで、ワルドと他の偏在の攻撃をかわしていた。
 ルイズは急いで、逆刃刀を持って剣心に駆け寄ろうとした……その後ろを偏在が再び起き上がり襲いかかった。しかし…。
「『フレイム・ボール』!!」
「『ウィンディ・アイシクル』」
 全てを焼くような真っ赤な炎の玉と、吹き荒れるような氷の矢が同時に殺到し、ワルドの偏在を跡形もなく消し飛ばした。
 その後に、キュルケ達もルイズの元へと駆け付けた。
「怪我ない? 大丈夫?」
「な…何とかね…」
 キュルケの問いに、ギーシュは力なく返す。
「私は平気。ただ…」
 ルイズは、手に持っている逆刃刀を見た。自分を助ける為に、剣心は自ら自分の武器を投げ捨てたのだ。
 何とかして返さなくちゃ…そう思っているルイズを他所に、ギーシュは藪から棒に逆刃刀を取り上げた。
 突然のことにびっくりしながらも、ルイズは抗議の声を上げた。
「な…何すんのよ!!」
「要は、これを彼に届ければいいんだろ? それなら僕の方が適任さ」
437 :るろうに使い魔2012/08/12(日) 23:05:18.11 ID:Wvg3Mmir
 ギーシュは、素早く杖を振ると、そこに七体のワルキューレを呼び出す。ギーシュは、その内の一体に逆刃刀を持たせた。
 確かに、生身の人間が送り届けたり、『レビテーション』を使うよりかは余程良いかもしれない。
「僕も、これぐらい役に立たないと、ここへ来た意味がないからね」
(……えっ…?)
 その言葉に、ルイズは胸を抉られるような感触を覚えた。そう言えば自分は、何か役に立つことをしたのだろうか…と。
 そんなルイズの心境の変化に構わず、ギーシュはワルキューレ達に命令を下す。
「行け、ワルキューレ達よ。彼に武器を渡してくるんだ!!」



「まさか自分から刀を放るとは、色々と策も弄してみるものだな!!」
 ワルドが、口元を歪ませながら剣心目掛けて魔法を撃った。
 『エア・カッター』は、空を裂くような唸りを上げて剣心のところへと飛んでいく。
 しかし、鎌鼬の刃や、銃弾の動きすら見切る剣心にとっては、特に気にすることなく回避する。
 同時に、偏在による攻撃が始まる。これ以上は戦力が落ちるため、
また偏在を再度作る時間も与えてはくれないだろうから、ルイズ達を狙う余裕は無かったが、今の逆刃刀のない剣心相手なら、これでも充分だろう。
そうワルドは思っていた。
だが、剣心は変わらず無表情のまま、そして鞘一つでワルドの剣閃を受け流していた。
「お前の杖や攻撃など、この鞘一本だけで充分だ」
「減らず口を……!」
 そこへ、ギーシュのワルキューレ達がなだれ込んできた。何事かとワルドは訝しむが、特に問題なさそうと見るやうざったそうに杖を振った。
「邪魔だ!!」
 全体を巻き込んでの『ウィンド・ブレイク』であったが、しかし、キュルケとタバサの援護もあって、崩れたのは一体二体。まだ何体かは倒れずに向かっていった。
 それにより、ワルドは疑問を覚える。今更ワルキューレなど、何の役にも立たないというのに、何故今頃…?
(そうか、読めたぞ!!)
 しかし、その意図に気づくのに、ワルドは時間を取らなかった。奴等は上手く攪乱しながら、剣心に刀を返す気なのだ。
 そうはいくか!! と言わんばかりにワルドは手早く偏在を差し向け、直にワルキューレ達を葬っていく。
 その中の一体、隠し持っていた逆刃刀に向かって、ワルドはこれでもかと言わんばかりに風を使って、剣心やギーシュ達の手の届かない方向へと吹き飛ばした。
「フン、これでもうあの刀は使えまい―――」
 そう言いかけた時、剣心は既に駆け出していた。しかし、方角は逆刃刀の方では無く、別のところ。
 しまった…。ワルドが気付いて偏在を呼び寄せた頃には、剣心はデルフの柄を握っていた。
「ちぃ…!!」
 ワルドは、間髪入れずに『ウィンド・ブレイク』を放つ。剣心は、避けようとして足に力を込めようとしたとき…。
「待て相棒!! そのまま翳してくれ! おもしれぇモン見せてやるよ!!」
 デルフのこの言葉に、剣心は何事かと思ったが、目の前にはもう暴風が迫ってきていたので、剣心はデルフの言うとおりに構えた。
 ドォンと、風の唸りがぶつかったような音がした。
 ルイズ達は心配そうに、ワルドは期待を込めた表情でその場を見やっていた。今の衝撃音は、間違いなく直撃した音だ。
 しかし、次の瞬間目にしたものは、以前無傷の剣心と、いつの間にか新品同様に光るデルフの姿だった。
「いやあ、すっかり思い出した。これが俺の真の姿さ! おまけにあんくらいの魔法なら、吸収することだって出来ちまうんだぜ!! どうだ、逆刃刀よりよっぽど上等だろ!!」
「デルフ…お主…」
「相棒、もっと心を震わせろ!! 何でもいい、怒り、悲しみ、それらが『ガンダールヴ』としての強さを決めるんだ!!」

 デルフの変わりように、一瞬みんなが驚いたが、それより先にワルドは動いた。
「ふっ、魔法を吸収できるか。だが…」
 気付けば、剣心の周りをグルリと取り囲むように偏在がいた。あの程度で死ぬわけがないと、ワルドは一早く策を作っていたのだった。
「四方八方から攻められれば、どうにもなるまい!!」
「…まあ、どうにもならねえな。どうするよ、相棒」
 デルフの困ったような口調に対しても、剣心は以前態度を変えない。見る限りでは劣勢でも、剣心にとってはこのくらいの修羅場は、当たり前のことだったからだ。

 幕末という、戦乱の時代を生き抜いた、あの頃に比べれば、この程度は日常茶飯事だったのだから―――…。

438 :るろうに使い魔2012/08/12(日) 23:07:56.87 ID:Wvg3Mmir
「うん…?」
 剣心は、まず肩に背負うデルフの鞘を外した。油断なく構えていたワルドだったが、そこに殺気はないようなので、その動向を見やる。
 そして、一旦手でデルフを鞘に納めると、腰を落とし、手に柄を掛けた。
 間違いない、この構えは…。
「抜刀術…か」
 大剣であるデルフリンガーを使っての、剣心の抜刀術。
 ワルドも、人づて程度には知っている。刀剣の刃を鞘の中で走らせることにより、剣速を何倍にも上げて一瞬の内に斬る。一撃必殺の名を冠する大技だ。
 だが、剣心の場合の抜刀術は、その比ではない。通常ですら追いきれない剣閃なのだから、彼が使えば、それはまさに『最速』と呼ぶべきだろう。

 ワルドは、ゴクリと唾を飲む。捌ききる自信は無い。だが、全く勝機がないわけではない。
 こちらには偏在がある。この状況で抜刀術を使うということは、他の偏在は無視して自分を叩く腹づもりの筈だ。
 ならば、まず偏在による魔法を使って、奴の行動を制限する。一箇所に放てば、剣心はこちらに来ざるを得なくなる。
その向かってくる直前、そこを閃光の『ライトニング・クラウド』で叩き潰す。
 もし避けられたとしても、大剣のデルフはどう見たって抜刀術には向かない代物だ。
それ即ち、剣心の抜刀を遅らせて、こちらが見切ることも可能だということを、示唆しているに他ならない。
 躱すことが出来れば、抜刀術は一撃必殺の可能性を秘めているだけに、その隙は大きい。そこを狙えば、間違いなく仕留められる。
 まず十中八九、勝てる勝負。ワルドの覚悟は決まった。

「いざ勝負!! 『ガンダールヴ』!!!」
 ワルドの叫びと共に、偏在が一斉に風の呪文を唱える。次の瞬間には、爆音と立ち込める煙以外何も残らなかった。
「うおっ!!」
「きゃあああああ!!」
 しかし、揺らいでいる煙の中、ワルドは確かに見た。自身の『閃光』の二つ名が霞む程に、光放つ左手のルーンを残光にする神速の動きで、向かってくる剣心の姿を。
 ワルドは、作戦通り『ライトニング・クラウド』を放つ。しかし、今の剣心の動きは、唸る雷の線ですら、捉えることは叶わない。
 遂に、間合いの距離まで詰めた剣心による、『最速』の抜刀が放たれた。
439 :るろうに使い魔2012/08/12(日) 23:09:26.83 ID:Wvg3Mmir
 (ここだ…ここを避ければ…!!!)
ワルドは、必死に自分に言い聞かせるように剣閃を目で追った。速い、だが…見切れない程ではない…!!!
「だぁぁあああああああああああああああああああ!!!」
 そんな叫び声を、無意識に上げているのも気付かず、ワルドはただ回避することに全てを専念していた。
 ワルドは、剣閃に合わせて思い切り仰け反った。その目の前を、銀色の光が覆う。
それに遅れて、デルフの切っ先が、被っている羽帽子を切り飛ばした。
 上空に投げたボールが重力に従い落ちる前の、一瞬の硬直。まさにそれと似たようなこの瞬間。ワルドは確信した。躱した、躱すことができたのだと。
「俺の勝ちだ!!! 『ガンダールヴ』!!!」
 ワルドは勝ち誇った笑みを隠さないまま、即座に『エア・ニードル』を唱え、剣心の頭蓋目指して、打ち抜こうと腕を上げて……。


               バギャッッ!!!―――。


 刺突では絶対出せないような、響くような重低音が礼拝堂に木霊した。
(……何…だ…?)
 ワルドは、何が起こったのか分からなかった。
 目の前の男を刺し殺せ、と確かに自分の身体に、腕に命令した筈なのに、何時まで経っても剣心に杖が飛んでこない。
 その横、振り上げている剣心の腕から、渡るように、自分の杖を持つ手を見上げると。
「……あ…」

 そこには鞘を打ち込まれ、無残にも、バッキリとあらぬ方向へと折り曲がっている自分の腕があった。

「…ああ…」
 確認できたと同時に、抉るような激痛がワルドを襲った。
「ぎゃああああああああああああ!!! 腕が、俺の腕がぁあああああああ!!!」
 狂ったように叫びながら、ワルドは床に転がって悶絶した。よほど痛いであろう事が、その光景からルイズ達にも見て取れた。

「飛天御剣流抜刀術 ―双龍閃―」

 それを冷ややかに見下ろしながら、剣心は再び鞘を肩に掛けた。
440 :るろうに使い魔2012/08/12(日) 23:12:21.14 ID:Wvg3Mmir
「齧った程度の知識が仇になったな。デルフが抜刀術に向かないことなど、百も承知さ」
「…初めからこれを狙ってた訳か。少し期待したってのに…」
 抜刀術は、本来が相手にも自分にも一撃必殺になりえる諸刃の剣。おまけに大剣であるために普通に居合を扱うことは出来ないということも、抜刀術を極めた剣心は知っていた。
 その為最初の攻撃はいわばブラフ。本命は鞘を使った二段目の攻撃だった…と言うより、逆刃でもないのにそのままの一撃目を当てる気などさらさら無かったのである。


            ―飛天御剣流の抜刀術は、全てが隙の生じぬ二段構え―


 大剣だろうと何だろうと、抜刀術の性質の全てを知り極めた男。それが剣心の『もう一つの志士名』の由来でもあった。
「くそっ…くそっ…くっそおおおお!!」
 ワルドは、激痛と屈辱に顔を歪ませながら、もう片方の手で杖を取り、自身に『フライ』の魔法を唱えた。
「ぐっ……まさか引き返す羽目になるとは…」
 ワルドが逃げる、その光景を見ても、剣心は問題なさそうにデルフを納める。ギーシュが不思議そうな顔で剣心に聞いた。

「いいのかい? トドメ、刺さなくて…?」
「別に構わんさ」
 未だに剣心は、その鋭い目付きが抜けてないだけに、ギーシュは少し怖い思いをした。
「奴の腕は、思い切り関節を砕いて筋を断ってやった。少なくとも今後一生まともに杖は振れやしない。奴の軍人生命は、これで終わりだ」
 どんな相手だろうと、不容易な殺生はしない。それが剣心の決着の付け方だった。
しかし、武人に生きる彼にとっては、軍人生命を断たれるだけで生きるというのは、これ以上ない屈辱でもあるだろう。
 それだけのことはした…とは言っても、ギーシュ達は身震いした。宣言通り、剣心は『生き地獄』を、ワルドに味わわせたのだから。
「…これで…済むと思うな…」
 遠くから、ワルドの声が聞こえてくる。剣心は気にせず、逆刃刀を取りに背中を向けた。脱出用の穴がある以上、後はここから逃げるだけだ。
 そう思っていた剣心の後ろから、ワルドの最後の叫びが飛んだ。

「いずれ、俺は必ず這い上がる。その時が貴様の最後だ、『ガンダールヴ』!!! いや…『人斬り抜刀斎』!!!」

「……なっ!!」
 剣心は、ハッとして振り向く。それはかつて昔呼ばれていたもう一つの『志士名』。何故奴がその名を知っている…!? 
しかし、その時はもう、ワルドの姿はどこにもいなかった。
 ギーシュ達が、ポカンとした表情で首をかしげる。
「『人斬り抜刀斎』? 何だいそれ?」
「ダーリン、人なんか斬ってないじゃん。何言ってんのかしら?」
「…そもそもあの刀で人は斬れない」
 それを見て、剣心は不思議な気持ちになった。『人斬り抜刀斎』と言えば、自分のいた世界で知らないものはいない程の悪名だったが、ここではそんなことはない。
(そうか…知らない…んだな…)
 少し、ほんの少しだけ心が軽くなったような感じを覚えながら、申し訳なさそうにウェールズを見た後、ルイズの所へと剣心は歩いた。
いつの間にか左手のルーンから光が消え、いつもの優しい笑顔になって。


「…行くでござるよ、ルイズ殿」
「……うん」
 ルイズは、ただ頷くしか出来なかった。何もできなかった自分、ウェールズを死なせてしまった自分、最後まで彼に頼りきってしまった自分。
 そんな悔しい思いを、剣心に見せたくなかった筈なのに、彼が来て笑顔を見せてくれた瞬間、そんな考えは吹っ飛んでいた。
「…うああぁぁぁぁぁぁん!!!」
 ただ、彼の胸で泣いていた。張り詰めた緊張の糸が、ぷっつりと切れたように。
怖かった。そんな想いが、涙をとめどなく溢れさせる。剣心は、それを優しく包み込んでくれた。


「ウェールズ殿…」
 ルイズを抱えたまま最後に、剣心はゆっくりとウェールズの遺体に近寄った。
 結局…彼を助けることはできなかった。その悲しみを内に抱えたまま、剣心は静かに頭を下げた。
「……済まぬ」
441 :るろうに使い魔2012/08/12(日) 23:18:11.10 ID:Wvg3Mmir
「ほら、皆早く逃げるよ!!」
 キュルケの、その声を聞いた剣心は、そのままルイズをおぶって、穴へと飛び込んだ。
「抜刀斎いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」
 その次の瞬間、王族を打ち破った反乱軍…その陣頭にいた刃衛が攻め込んできた。
「タバサ、シルフィードを!!」
「分かった」
 落下途中、アルビオンの下に佇む霧を抜け、眼下にある海を見据えながら、タバサは口笛を吹いた。
 待ってましたとばかりに、シルフィードはきゅいきゅい鳴きながら、器用にルイズ達を背中に乗せる。ウェルダンデも、口の中にすっぽりと収まった。
 そして、駆け抜けるが如く、シルフィードは全速力でその場を後にした。

「…終わった…のね…」
「そうでござるな…」
 ルイズは、遠くで小さくなるアルビオンを見る。
 わずか数日ばかりの出来事だったのに、色々なことを体験してきた。
 滅びゆく王国、裏切り者だった婚約者、最後に「会いたい」と言った王子様。
「…ケンシン」
「おろ?」
 ルイズは、そんな風に思いを巡らせながらも、静かに目を閉じる。疲れて眠りたくなったのだ。
(良かった…元に戻ってる)
 どうしてか分からなかったが、自然と、ルイズは剣心にもたれ掛かるように安らかに眠った。
(……ありがとう)
 優しい使い魔、強い使い魔。だけど時々、悲しそうに笑う使い魔。そして…最後の恐ろしい形相と、何かを思う様に王子を見ていた使い魔。
 そんな使い魔に夢の中で、ルイズは小さく、そうお礼を言った。
 


これにて、長かったアルビオン編が終了となります。ここまで見て頂き、本当にありがとうございました。
といっても、書いている身としては、まだまだ始まりの部分が一段落ついただけなのですが(笑)
次回は、レコン・キスタの裏側にせまります。それではまた来週にて。

446 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 01:22:18.83 ID:c5u6z9dw


ただちょっと原作ネタに頼り過ぎじゃない?
戦闘シーンに原作ネタを載せたっていうか、原作シーンを継ぎ接ぎにして戦闘シーンを作ったように見えちゃう
入れたいネタが多いのかもしれないけど、もう少し厳選してみても良いと思う
447 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 01:30:18.79 ID:8Wi6o9G+
投下乙です

切れた腕が魔法で接着できる世界だし、
原作のワルドのように切断された腕をその場に放置してしまったとかでなければ、
関節を砕いて筋を絶っても腕のいい水メイジにかかれば再生不可能とは言い切れないだろうな
まあ剣心は魔法に詳しくないのだし仕方がないが
448 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 10:49:05.16 ID:jbi2eo6r
以前魔界都市新宿に、メフィスト先生でもつなげないような首切りをやってのけた人斬りが。
449 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 17:25:01.94 ID:r5p/0VnJ
義手とかつけてまだ出てくるって、改造パンドンみたいだな
やっぱり首を叩き落としてスパッと決着をつけてやらないと後が面倒
452 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 19:53:49.68 ID:eShszUnf
>>449
クロムウェル「さあ蘇れッ! この! 電…指輪でーーーーーっ!!!! 」
450 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 19:05:20.87 ID:jrPA3/X2
義手っつーと『天上天下』の虎瀉殷(フー・チェイン)が思い浮かぶ
最終的にゾンビ自転車になったが
451 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 19:52:08.37 ID:/uAGg+ni
るろ剣で片手不能といえば、あーむすとろんぐ砲フラグ!!
でもワルドじゃ無理だな、肩が吹っ飛びそうw
453 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 20:59:53.91 ID:OD86clPf
>>451
グレネードランチャー
もしくは紅蓮腕
454 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 22:27:56.21 ID:WYUPbZV7
るろうに乙!

>>446
あー、剣心が圧倒してる割にやけに仕留めるのに時間掛かるなと思ったが
ネタ盛りすぎなのかな。ワルドが偏在呼びまくりでとんでもない精神力になってるしw
ブチ切れる前から圧倒してたのに、ガンダパワーで盛り盛りな剣心だったら
詠唱のえの字も与えずに叩き伏せそうなもんだ。

>>451
ワルドじゃしくじりしかねぇだろうなw
455 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 22:47:27.61 ID:r5p/0VnJ
ワルドなら改造人間より一歩進んだ改良人間になって蘇れるな
456 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 22:48:40.49 ID:tQWn3FF4
ゼロSS最大の見せ場であろうワルドとの決闘でようやく双龍閃か…
まだ人斬り化をはじめ縮地、九頭、天翔と残してるがどう消化すのか
458 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 23:13:50.44 ID:r5p/0VnJ
確かかめはめ波って修業すれば誰でも使えるんだっけ
462 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 23:30:18.72 ID:eBLiD4Mf
>>458
気自体だれでももってるから、修行次第だとおもう。
生半可な修行じゃ習得できないだろうが
460 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 23:26:27.74 ID:FHpxDVMz
亀仙人のじっちゃんクラスが50年修行してようやく使える程度の技
463 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 23:32:13.35 ID:eBLiD4Mf
>>460
そりゃ、技の開発者だからな。
教わるのなら、また違うでしょ。
464 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/13(月) 23:34:46.03 ID:yF+xyamL
戦闘力からすると銃弾受けても痛いくらいですむレベルの人なら使えるかもな
465 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/14(火) 00:57:03.80 ID:sIiIu2lp
一般人のビーデルが空飛べる程度には気を扱えてたから
ちゃんと教わればかめはめ波も威力に差はあれど使えそうだ
469 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/14(火) 01:20:33.92 ID:kMf28fOl
>>465
あの・・・・・・ビーデルは一応格闘技世界チャンピオンの父親より強いんですが。
476 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/14(火) 07:56:19.32 ID:g0hWra3v
>>469
フィジカルや格闘技術ならまだしも、気にかんしてはコントロールどころか概念すらしらん状態だったけど
466 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/14(火) 00:59:02.73 ID:cNosARKQ
亀仙人はマッチョ化してのかめはめ波が使えるからな
あれを使えた奴はいない
468 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/14(火) 01:06:07.95 ID:3UTImXqD
ビーデルはブロリーのラリアットの直撃を受けても生きてる程度の戦闘力
470 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/14(火) 01:22:42.41 ID:37yxu5Pd
サタンももうちょっと若くて気が使えればかなり強くなるんだろうな
471 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/14(火) 01:37:00.74 ID:cNosARKQ
セルゲーム時のサタンならビーデルよりまだ強いかも
473 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/14(火) 02:30:18.56 ID:kMf28fOl
>>471
10歳前後の娘より弱い世界チャンピオンはねーだろ。
477 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/14(火) 18:24:57.17 ID:zYUa3gGQ
とあるオカマ「少年漫画は強さのインフレ激しいから嫌いよっ」
478 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/14(火) 18:31:56.80 ID:osqRiSzb
逆に強さのインフレに真っ向から挑んだのはハドラー様だな。
479 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/14(火) 18:46:22.93 ID:cNosARKQ
あのオカマはインフレ以前に再生怪人だったのがいかんかった
480 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/14(火) 21:10:57.70 ID:vQDyFJmK
「俺をなめるな!大魔王おおおおお!」の所から死亡するまでほぼ高止まりだよねハドラー株
483 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/15(水) 00:55:10.68 ID:exMl2eqm
ジョゼフがザボエラを召喚したら火石やキメラドラゴンどころじゃない惨劇がハルケギニアを襲いそうだ
486 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/15(水) 09:21:25.02 ID:V9K5VfXd
もうシャハルの鏡装備のシグマでも召喚しようよ
491 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/15(水) 12:56:37.11 ID:6uTUgpYd
>>486
ナイトだから基本的に紳士だし、理想的な使い魔かもしれんな…馬顔だか
488 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/15(水) 10:23:52.44 ID:exMl2eqm
サイトの戦闘スタイルはどちらかと言えばラーハルトに近いな
489 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/15(水) 10:48:02.00 ID:ohGVsd3H
サイトはそのままにあの作品のキャラがジョゼフに召喚されましたスレの誕生である
490 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/15(水) 11:54:21.28 ID:eRmyfL4z
サイト「せめてセーブデータ引継ぎで強くてNEWGAMEにしてください」
492 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/15(水) 13:04:18.66 ID:w5ESzNvi
ヘタレギーシュが成長してオリハルコンのワルキューレを連金し始めたりするんだろダイの大冒険的に進めると
494 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/15(水) 13:14:06.95 ID:p1SJsGKw
金ですら大変なのにオリハルコンとか、ドットのギーシュには厳しいんじゃ
ポップ的な成長するならありうるのかな
495 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/15(水) 13:14:39.79 ID:r4DhPKCi
オリハルコンなぞ後半のメンツにはバコバコ破壊されるので結局意味が無い
つまりマキシマムのポジションという事になるな・・・
496 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/15(水) 13:28:36.01 ID:exMl2eqm
>>495
女の子のスリーサイズをスーパースキャンするギーシュとなるか
498 :名無しさん@お腹いっぱい。2012/08/15(水) 14:57:11.99 ID:lzzBrC79
ギーシュ「わざわざ強い金属を錬金する必要はない、僕が本気で硬化と固定化をかけた青銅のワルキューレは砕けない」